A Rider's Viewpoint

とあるライダーのものの見方

単行本とシウマイの話

2013-12-21 21:14:19 | つれづれ
昨日、通院の帰りに駅ビルの大きな書店に寄った。
Twitterで紹介されていた新刊本を探すためだ。
その本とは加門七海の『怪談を書く怪談』。

書き下ろし三篇を含む五年ぶりの怪談実話集とのことだ。

この人の本は偶然『怪のはなし』という本を立ち読みした時から縁が始まった。その本の冒頭数話を読み始めた僕はそのリアリティに目が離せなくなった。書籍なんだからフィクションに違いない。そう思っているのだが心の奥底で「ヤバい、これは本物だ」という声がする。そう思ったらもう手が離せない。そのままその本はレジに持って行くことになったのである。

その後に関しても数冊の怪談関連の刊行書籍を読んでいる。そういう意味では僕はこの人のファンと言っても過言ではない。

そんな人の新刊。きちんとした書籍評ではない。今月発売の新刊についてのリストのようなものだ。それでもしっかり心に届いた。そこで病院帰りに浜松町駅に近い書店で散策を始めたというわけだ。

新刊のコーナー、女性著者のコーナー、いずれにも見つからない。
諦めて帰ろうとしたら、その書店の在庫探索用のコンピューターがあった。そこで調べてみると「エリア16 SF・ホラー」に置いてある模様。
ざっと平積みの本を眺める。ない。次に著者名順に並んでいる棚を探す。ない。これは入荷部数が少なくて売り切れたか、発売日の前だったかもしれない。
アプリ「図書館日和」で発売日を調べたが空白。
「これはもう無理かもしれないな」と諦めて帰ろうとしたら、ふと女性が近づいてきて平積みの本を手に取る。
何気なく目をやるとその本が探していた『怪談を書く怪談』であった。

件の本を手にした女性はそのまま本を一番上に重ね、すっと棚の裏側に姿を消した。まるで僕にその本を教えるために姿を表したかのように。

……まさかね。
そう思いながら僕は本を手に取りレジに向かった。



東京駅に着いたときに思った。崎陽軒のシウマイを買って帰ってビールを飲もう、と。

今日の予定は片付いた。明日は法事のため帰省だ。今日はビールでも飲んで早めに寝てしまおう。
ホームからの階段を降りて向かった東京駅南口地下の崎陽軒の売場には、なんと10名ほどの行列ができていた。
速攻で諦めた。(^_^;)

通院で疲れていて雨も降っている。もう今日は買い物に出掛ける気力もない。そんな訳でもあり今度は夕飯の代わりに駅弁でも買って帰ろうかと八重洲南口近くの売り場に行った。

するとここでも崎陽軒のシウマイが売っているのだった。そうかこの店はシウマイ弁当も置いているからシウマイ単品も買えるんだ。「しめしめ」と思い、目標をシウマイ30個入り1080円に定めレジの前に並ぶ。

しかし前の人が弁当を買い終え僕に順番が回ってきたと同時にガラスケースのシウマイの前に「売り切れました」の札が置かれた。

「あれ?売り切れなの?」と訪ねると、店員さんが「すみません。たった今売り切れました。こちらの『特製シウマイ』はいかがですか?」と言う。特製シウマイは大きめサイズだが割高なことは否めない。それに僕は標準サイズのシウマイで十分満足なのだ。

反射的に「(特製シウマイは)高いからいらない。ごめんね」と告げ、店を後にした。
よく考えれば別な駅弁を買って帰れば良かったのだが、それも後の祭りだ。

僕は(つまみを)どうしようかな、と考えながら京葉線方面に向かって歩き始めた。書店の前を通りかかったとき、僕は台車を押す係員とすれ違った。
その台車に積まれていたのは、まさしく崎陽軒のシウマイのオレンジ色のパッケージ。「もしかして……」と思い後を追うと案の定その台車はさっきの弁当屋に商品をおろし始めた。
「これ、もう買って大丈夫?」と確認した後、僕は無事にシウマイを買うことができたのだった。

……だから何が言いたいのかって?

人がものを買う、欲しいものを手に入れる。こんなささやかなことにだって「不思議な縁」を感じることができるんじゃないかってことなのさ。

何気なく通り過ぎようとする日常。しかしその中で現実が「揺らぐ」瞬間がある。カメラのピントを合わせようとする時に、ふと思わぬものが見えてくるように。
日常の現実が揺らぐ時、ときに怪異が姿を現す。
そう、怪異とは特別なものではない。
そいつはいつも僕らの周りに潜んでいるのである。