ビールを飲むぞ

酒の感想ばかり

「パルプ」 チャールズ・ブコウスキー

2017-02-28 00:35:52 | 読書
 
軽快で面白い。セリフが多いので読みやすい。そしてテンポが良く、爽快だ。主人公は探偵で、品は良くない。口も悪いし、気に食わない奴らには攻撃的だ。しかし、そこがいい。これも柴田元幸の翻訳だが、こう言ったジャンルも翻訳しているのか。そのせいか、意外と文学的な雰囲気だ。
この小説にはパターンがある。主人公である探偵ニック・ビレーンは、まずバーに向かう。入ってまず、客やバーテンに対して何らかの悪い印象を感じる。そして、魅力のないウェイトレスに変な注文をし不思議がるウェイトレスやバーテンや客にいちゃもんをつける。そして喧嘩をし、意外と腕っぷしが強く大概は勝つ。で、気分を害し、結局事務所に帰って酒を飲む。そして電話がなり仕事の依頼やら、経過確認を受ける。そして、調査に出て、、、というパターン。
バーで喧嘩するところなど、馬鹿馬鹿しいのだが、毎回いちゃもんの付け方や、馬鹿な連中とのやり取りが面白い。笑ってしまうほどだ。文章で笑わせられるのはなかなかない。
ハードボイルドの体裁を取っているが、事件を解決する話ではなく、また、主人公と依頼者や悪人との毒舌合戦であったり、喧嘩してボコボコにするシーンでさえこの小説の本質ではないのだと思う。そんなハチャメチャな日常の中、ふとしたところで主人公が感じる孤独感や人生に意味を見つけることができない、自虐的になって落ち込む(時にはこのまま自殺してやろうか?なんて発作的に思うこともある)。そんな時に漏らすセリフが作者の言わんとしているところなのだ。
とても共感できない、したくないキャラクターだが、毒舌に思わず笑ってしまったり、スカッとしたり、落ち込んで自己否定しているさまは、自分が疲れているときには意外と癒される。
誰かの評で、ブコウスキーを読むならパルプは一番最後に読め。などと言っていたが、どういう理由からだったのだろうか?
あまりに面白いので、これをはじめに読んだら、あと読む物がなくなってしまうから?
作者の中で異色の作品なので、これがブコウスキーの本筋ではないから?
 
20170216読み始め
20170227読了