神戸赤十字病院(神戸市中央区)の医師の男が入院中の女性患者の体を触るなどしたとして、兵庫県警は5日、不同意性交の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。医師は、診察行為を装って女性の体を触った疑いがあるといい、県警は詳しい状況を調べている。
捜査関係者によると、逮捕されたのは同病院の内科医師、若榮智之容疑者(34)=同市東灘区。
逮捕容疑は昨年9月10日、同病院で、入院していた20代の女性の体を触ったなどとしている。「わいせつ目的ではない」などと容疑を否認しているという。
女性が県警に被害届を出し、事件が発覚。病院側も聞き取り調査をし、医師は「診療行為の一環だった」と説明したという。病院は医師を自宅待機としていた。
捜査関係者や病院関係者らによると、若榮容疑者は事件当時、女性が入院する病棟を担当しており、女性の診察にあたることもあったという。
■「医療行為」装い立場悪用 心理的上下関係で泣き寝入り
患者に対してのわいせつ行為や盗撮など、医師という立場を悪用した事件は後を絶たない。医療行為を装う手口に加え、診察室などで2人きりの状況で犯行に及ぶことも多く、患者が被害を訴えにくかったり、客観証拠がなかったりして泣き寝入りするケースも少なくない。専門家は「少しでも不審に感じたら、信頼できる人などにすぐに相談してほしい」と呼びかけている。
神戸市では昨年8月以降、自身が経営するクリニックで複数の患者に対し、わいせつ行為や盗撮を繰り返したとして、準強制わいせつ(現・不同意わいせつ)や性的姿態撮影処罰法違反などの疑いで男(62)が6回にわたって逮捕された。
男は、診察室で女性が服を脱ぐ姿や診察の様子などを盗撮していたとされる。押収された記録媒体の映像で被害が判明するまで、盗撮に気づいていない女性もいたという。
令和3年10月に婦人科の検査と偽り、約1時間にわたって女性の下半身を触り、その様子をメガネ型のカメラを使って撮影したとして、東京都の医師の男が準強制わいせつ容疑で逮捕された。
また昨年、10代の少女の服を脱がせ胸を触るなどしたとして、準強制わいせつ容疑などで逮捕された静岡県の小児科医の男は、少女らと2人きりの状況を作り出し、医療行為を装って犯行に及んでいたとされる。
服を脱いだり体に触れられたりすることは、医療行為ではことさら不自然なことではなく、治療や診察を受ける側が、専門知識を持った医師の行為を拒むことは難しい。
性暴力による被害者を支援する一般社団法人「日本フォレンジックヒューマンケアセンター」の長江美代子副会長は「体に触れることが認められているのが医療職。本来平等であるべき医師と患者の関係だが、心理的に上下関係が生じている状況では、被害の自覚が薄いことや思い違いなのではないかと考えてしまうことがあり、被害を相談しづらい傾向にある」と指摘。「少しでも違和感を持ったら、信頼できる人や外部機関に助けを求めることが重要だ」と話している。
2024年2月5日 産経新聞