★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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街のカラス(25)

2009年09月27日 | 短編小説「街のカラス」
 しばらくの間、お気に入りの場所を堪能してから、オイラは飛び立った。次にこの場所にくるのは、春がきてからだ。冬の一人暮らしは都会のカラスといえど危険なのである。
実は今回は様子を見に来ただけで、ここで冬を越すつもりはない。厳しい冬は仲間と一緒に神社の森で助け合いながら過ごしていくのが恒例である。
 オイラは、鉄塔の周りを数回廻って風が安定している高めの高度を確保してから、神社に向かって進路を取った。帰りは追い風なので楽だ。
 いつもより速いスピードで例のマンションの上空を通過した時、オイラの目に赤色灯の輝きが飛び込んできた。パトカーが数台と赤色灯を屋根に載せた黒塗りのセダンが数台マンションの入り口に集まっている。
 なんだろう。好奇心を刺激されたオイラは、見に行こうと思ったが、高度が高いうえ風が強い。
 方向転換がきかず、そのまま風に流されてしまった。
まあ、この都会では、パトカーのサイレンや赤色灯は珍しくはない。この逆風に逆らってまで見に行くまでもないだろう。そう思ったオイラは、体制を立て直し仲間のいる神社の森目指して速度を上げた。これから厳しい冬が始まる。


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