★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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街のカラス(29)

2009年09月30日 | 短編小説「街のカラス」
「この壷は、あなたの手助けはいたしますが、あくまであなたの気持ちの持ち方しだいですから、がんばってみてください」
 ラメの紫服男は、壷を風呂敷で包んで会員に渡し、出口へ促した。
 「ふう、色んな悩みがあるものだなぁ、あと何人くらい待ってるのかな」
 部屋に残った道師さまは、会員が去ったあとの椅子や机の位置を直しながら、ラメの紫服男に話しかけた。
 「今待っているのは10人位じゃないかな、会員も徐々に戻ってきてるな」
 「ああ、そんな感じだなぁ、しかし、あの時はびっくりしたよな。あのクリスタルのビンに麻薬を塗って配ってるなんてな」
 「ひどい話だよ、だからあんなに繁盛したんだよ。麻薬の力は恐ろしいよな。おかげでウチもとばっちりを食って、家宅捜査されたしな。まあ、ウチの壷もちょっとは細工してたから、どきどきだったよなぁ」
 「だからそれに懲りて、妙な小細工はやめてまともな陰陽説の人生相談に戻したんだよな。やっぱりまじめにやるのが一番なんだよ」
 「そういうことだ、じゃあ次の会員さんに入ってもらうよ」
そう言うと、ラメの紫服男は壁のボタンを押し、外にいる女性スタッフに合図を送った。


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