★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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街のカラス(21)

2009年09月23日 | 短編小説「街のカラス」
 そんな会話をしているうちに、壷はきれいに片付けられ、次の会員達を案内する準備ができ、ラメの紫服男は近くの壁にある小さなスイッチを押した。
 数秒後、さっき会員達が出て行った扉が音もなく開き、女性スタッフが新しい会員達を引き連れて入ってきた。
 どうもこの電柱は、あの扉の位置からちょうど対角線上にあるらしく、今回も入ってきた女性スタッフとばっちり視線が合ってしまった。
 「か・からすがこっちを見てるぅ~!」
 本当にこの女性スタッフは、カラスに何か特別な恨みでもあるのだろう。前回と同じようにすっとんきょうな声をあげてオイラを指差し、それに釣られて道師さまとラメの紫服男もオイラの方を振り返った。
 彼らの近況も判ったし、今日は引き上げるとしよう。
 オイラは電柱を強く蹴って大空に飛び上がった。この辺りはマンションからのビル風の巻き込みがあり上昇気流が強いので、上空に上るのは簡単である。
 めざすは、懐かしのねぐらのある鉄塔。
 うーん、残念。遠目に見てもまだネットははずされていない。よく見ると、格子状に組まれた鉄塔の真ん中を、太い鉄柱のようなものが貫いていて、その高さは、鉄塔とほぼ同じくらいになっている。
 なんか、まだ時間がかかりそうだなぁ、と思いながら、三度、神社の森へと進路を変えた。


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