2月8日、作曲家の伊福部 昭さんが亡くなられました。映画『ゴジラ』第1作(1954)の音楽を作曲した人、というのが最も判りやすい紹介の仕方でしょうが、伊福部氏はそのほかにも、オーケストラ向けの曲や怪獣映画以外の劇伴音楽を数多く手掛けられましたし、東京音楽大学の学長を務めた教育者でもありました。その作風や経歴があまりに個性的であるために、異端視され冷遇された時期もあったようですが、戦前から活動を始めた音楽家の作品が今でも人々に聴かれ続けているという事実が、その業績の巨きさを物語っています。
この機会に、と言うと不謹慎かも知れませんが、俺が聴いたことがある伊福部作品の推薦盤をまとめて紹介してみようと思います。氏の作品に触れる一助になることを願って。
ただし、多くの人がそうでしょうが、俺は『ゴジラ』を手掛かりにして伊福部作品を聴き始めた人間で、しかも、いわゆるクラシックを日常的にはほとんど聴くことがない。そのため、オーケストラ曲について詳細に論ずることはできません。おまけに、全作品を聴き込んだマニアでもない、と信頼性を損なうことを承知で白状してしまいます。
こうした自分の知識と素養に見合うよう、『ゴジラ』メインタイトル曲の「ドシラ ドシラ」というフレーズは思い浮かぶけれど、というようなかつての自分と同じような人向けの紹介をするつもりです。オーケストラ曲のみの盤も挙げますが、伊福部氏ご本人がいうところの「純音楽」は、「クラシック」や「前衛音楽」の難解さとは縁遠く、映画音楽と地続きの判りやすさ・大衆性を持ち合わせています。時には、オーケストラ曲と映画音楽とのあいだで同じ曲想が用いられていることもあり、聴き進めていくのにさほど障碍を感じることはないでしょう。
また、上記のようにこれから伊福部作品を聴いてみようという人向けの紹介であるため、、中古でしか手に入らない盤は避け、現時点で新品が入手可能なものを極力挙げることにします。『ゴジラ大全集』というサウンドトラック盤のシリーズなど、今では廃盤になっているものも多いので。
[『ゴジラ』第1作のサントラ盤から聴いてみる]
『GODZILLA 50th ANNIVERSARY EDITION』
(LA-LA LAND RECORDS・LLLCD 1022)
さて、伊福部氏を知るきっかけといえば、繰り返すようですが、何を措いても『ゴジラ』ということになります。そこでサントラ盤から手を着けてみようと思いきや、国内向けは廃盤という寂しい状況。東宝ミュージックから発売されているボックスセットの中に入ってはいますが、6枚組で10500円もする商品にいきなり手を出す気にはなれないでしょう。1枚で手に入れるにはこの輸入盤しかない。
しかしこの盤は、デジタルリマスターが施され、当然英語だけれど丁寧なライナーノートが付き、国内盤には無かったボーナストラックも入った充実した内容。磁気テープによる音源が無いために、国内盤では劇中のフィルム音声を台詞と一緒に収録していた『平和への祈り』というコーラス曲が、おそらくはデジタル編集により台詞抜きになっているのも希少価値アリ。
[伊福部作曲による特撮映画音楽をまとめて聴いてみる]
『ミレニアム ゴジラ ベスト』
(東芝EMI・TYCY-10043)
東宝特撮映画のために書かれた伊福部作品を集めたもの。タイトルがやや紛らわしいけれど、ゴジラ映画以外の楽曲も収められています。代表的な曲を集めたとあって、かなり聴き応えがある。個人的なお薦めは、『大怪獣バラン』・『キングコング対ゴジラ』各メインタイトル曲の、異言語による混声オスティナート歌謡。尺は短いけれど、マグマ(という異能のグループがフランスにいるのです)の楽曲に匹敵する高揚感を味わえる。
また、『怪獣大戦争マーチ』など、人気の高いマーチ曲(伊福部氏の呼び方では「アレグロ」)が聴けるのも嬉しい。以前は東芝EMIから『伊福部昭 特撮映画マーチ集』という勇壮感の塊のようなのCDも出ていましたが、ご多分に漏れず廃盤。
[ゴジラ映画音楽をまとめて聴いてみる]
『THE BEST OF GODZILLA 1954-1975』
(GNP/CRESCENED・GNPD 8055)
『THE BEST OF GODZILLA 1984-1995』
(GNP/CRESCENED・GNPD 8056)
ゴジラ映画用楽曲のベスト盤的なものは例の如く国内向け廃盤のため、またもや輸入盤になってしまう。冒頭に掲げた『1954-1975』のジャケ写真の強引な合成っぷりがとてつもなく胡散臭いが、ハリウッド版ゴジラ公開に合わせてつくられた正規盤とのこと。
昭和ゴジラと平成ゴジラ(1984版を含む)の楽曲が網羅されており、伊福部作品以外も収録されています。『1984-1995』は、平成版の伊福部作品を聴けるところに価値があり、特に『ゴジラ vs デストロイア』オープニングの不穏な重厚さや、エンディングのスピード感は聴きもの。
また、選曲はアメリカ人スタッフが行なったのか、国内盤では入らないような珍曲が混入しているのも楽しい。『モスラの歌』のオリジナルと平成版が聴けたり、とんでもなくダサいボーナストラックが付いていたり。殊に、(伊福部作品からは離れるけれど)特撮ヒーローもののエンディングのようなボーカル曲『ゴジラマーチ』や、沖縄の守護神キングシ-サーを目覚めさせるための祈りの歌なのに沖縄的要素ほぼ皆無のムード歌謡『ミヤラビの祈り』などが入った昭和編のカオス感が堪らん。『ゴジラ対ヘドラ』から『かえせ!太陽を』が収録されていないのが惜しい。ツメが甘いなあ、アメリカ人。
(続く)
この機会に、と言うと不謹慎かも知れませんが、俺が聴いたことがある伊福部作品の推薦盤をまとめて紹介してみようと思います。氏の作品に触れる一助になることを願って。
ただし、多くの人がそうでしょうが、俺は『ゴジラ』を手掛かりにして伊福部作品を聴き始めた人間で、しかも、いわゆるクラシックを日常的にはほとんど聴くことがない。そのため、オーケストラ曲について詳細に論ずることはできません。おまけに、全作品を聴き込んだマニアでもない、と信頼性を損なうことを承知で白状してしまいます。
こうした自分の知識と素養に見合うよう、『ゴジラ』メインタイトル曲の「ドシラ ドシラ」というフレーズは思い浮かぶけれど、というようなかつての自分と同じような人向けの紹介をするつもりです。オーケストラ曲のみの盤も挙げますが、伊福部氏ご本人がいうところの「純音楽」は、「クラシック」や「前衛音楽」の難解さとは縁遠く、映画音楽と地続きの判りやすさ・大衆性を持ち合わせています。時には、オーケストラ曲と映画音楽とのあいだで同じ曲想が用いられていることもあり、聴き進めていくのにさほど障碍を感じることはないでしょう。
また、上記のようにこれから伊福部作品を聴いてみようという人向けの紹介であるため、、中古でしか手に入らない盤は避け、現時点で新品が入手可能なものを極力挙げることにします。『ゴジラ大全集』というサウンドトラック盤のシリーズなど、今では廃盤になっているものも多いので。
[『ゴジラ』第1作のサントラ盤から聴いてみる]
『GODZILLA 50th ANNIVERSARY EDITION』
(LA-LA LAND RECORDS・LLLCD 1022)
さて、伊福部氏を知るきっかけといえば、繰り返すようですが、何を措いても『ゴジラ』ということになります。そこでサントラ盤から手を着けてみようと思いきや、国内向けは廃盤という寂しい状況。東宝ミュージックから発売されているボックスセットの中に入ってはいますが、6枚組で10500円もする商品にいきなり手を出す気にはなれないでしょう。1枚で手に入れるにはこの輸入盤しかない。
しかしこの盤は、デジタルリマスターが施され、当然英語だけれど丁寧なライナーノートが付き、国内盤には無かったボーナストラックも入った充実した内容。磁気テープによる音源が無いために、国内盤では劇中のフィルム音声を台詞と一緒に収録していた『平和への祈り』というコーラス曲が、おそらくはデジタル編集により台詞抜きになっているのも希少価値アリ。
[伊福部作曲による特撮映画音楽をまとめて聴いてみる]
『ミレニアム ゴジラ ベスト』
(東芝EMI・TYCY-10043)
東宝特撮映画のために書かれた伊福部作品を集めたもの。タイトルがやや紛らわしいけれど、ゴジラ映画以外の楽曲も収められています。代表的な曲を集めたとあって、かなり聴き応えがある。個人的なお薦めは、『大怪獣バラン』・『キングコング対ゴジラ』各メインタイトル曲の、異言語による混声オスティナート歌謡。尺は短いけれど、マグマ(という異能のグループがフランスにいるのです)の楽曲に匹敵する高揚感を味わえる。
また、『怪獣大戦争マーチ』など、人気の高いマーチ曲(伊福部氏の呼び方では「アレグロ」)が聴けるのも嬉しい。以前は東芝EMIから『伊福部昭 特撮映画マーチ集』という勇壮感の塊のようなのCDも出ていましたが、ご多分に漏れず廃盤。
[ゴジラ映画音楽をまとめて聴いてみる]
『THE BEST OF GODZILLA 1954-1975』
(GNP/CRESCENED・GNPD 8055)
『THE BEST OF GODZILLA 1984-1995』
(GNP/CRESCENED・GNPD 8056)
ゴジラ映画用楽曲のベスト盤的なものは例の如く国内向け廃盤のため、またもや輸入盤になってしまう。冒頭に掲げた『1954-1975』のジャケ写真の強引な合成っぷりがとてつもなく胡散臭いが、ハリウッド版ゴジラ公開に合わせてつくられた正規盤とのこと。
昭和ゴジラと平成ゴジラ(1984版を含む)の楽曲が網羅されており、伊福部作品以外も収録されています。『1984-1995』は、平成版の伊福部作品を聴けるところに価値があり、特に『ゴジラ vs デストロイア』オープニングの不穏な重厚さや、エンディングのスピード感は聴きもの。
また、選曲はアメリカ人スタッフが行なったのか、国内盤では入らないような珍曲が混入しているのも楽しい。『モスラの歌』のオリジナルと平成版が聴けたり、とんでもなくダサいボーナストラックが付いていたり。殊に、(伊福部作品からは離れるけれど)特撮ヒーローもののエンディングのようなボーカル曲『ゴジラマーチ』や、沖縄の守護神キングシ-サーを目覚めさせるための祈りの歌なのに沖縄的要素ほぼ皆無のムード歌謡『ミヤラビの祈り』などが入った昭和編のカオス感が堪らん。『ゴジラ対ヘドラ』から『かえせ!太陽を』が収録されていないのが惜しい。ツメが甘いなあ、アメリカ人。
(続く)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます