仮名日記

ネタと雑感

危険な扉

2006年01月25日 | 社会
 ついに、と言うべきか、早くも、と言うべきか迷うところですが、ライブドアの、これを書いている時点では既に「前社長」堀江貴文氏が逮捕されましたね。今後の成り行きはまだ判りませんが、道化としての役割を彼は充分に果たしたと思います。おかげで、彼の吹く笛に踊らされた人々の愚かしさが明らかになった。この顛末もいずれは、消費されただけで終わるかも知れないけれど。
 逮捕のニュースを見ていたら、ライブドアの昨年の忘年会の様子が流されていた。「大きな古時計」を替え歌にしたライブドア讃歌を歌手に歌わせ、それに合わせて堀江氏らが踊っている能天気な姿と、破滅的というべき惨たる現状との甚だしい落差に無常感を覚えずにはいられませんでした。
 その「大きなのっぽのライブドア」のおめでたい歌詞を作ったのはライブドアの社員らしいが、一月も経たずに今のような事態になろうとは思ってもいなかったでしょう。いまその人はどうしているのでしょうか。逮捕された幹部のうちの誰かってことはないだろうな。誰かは判らないその社員に代わり、頼まれもしないのに替え歌の続編を作ってみました。
 今のところ堀江氏らは被疑者の段階で、あるいは潔白ということだって有り得るし、ライブドアも新体制のもとで持ち直すかも知れないが、何しろ足の速そうなネタなので、かまわず開陳してしまいます。

「続・大きなのっぽのライブドア」
(「大きな古時計」の節で)
大きな資産のライブドア ホリエモンの会社
買収休まず続けてきた ご自慢の会社さ
ホリエモンが学生のとき 立ち上げた会社さ(*)
いまはもう動けない ライブドア
株式何度も 分割 分割
株価上げるため 分割 分割
いまはもう動けない ライブドア

何でも欲しがるホリエモン ライブドアの社長
球団買いたいと現れた それが始まりだった
フジテレビも議員バッジも 欲しがった男さ
いまはもう何もない ホリエモン
30代社長で 勝ち組 勝ち組
ヒルズでIT 勝ち組 勝ち組
いまはもう何もない ホリエモン

3時過ぎにベルが鳴った 検察からの電話
お終いのときがきたのを みなが悟ったのさ
拘置所に入るホリエモン ヒルズともお別れ
いまはもう容疑者の ホリエモン
事実が無いのに 偽計で取引
黒字じゃないのに 粉飾決算
いまはもう夢の跡 ライブドア

*…設立時の社名は「オン・ザ・エッヂ」

ばかだなあ02

2006年01月18日 | 社会
 にゅーすをみていたら、まえにお父さんと行ったやすくにじんじゃのことをやっていました。やすくにじんじゃにそうり大じんがおまいりに行くので、ちゅうごくやかんこくのえらい人がおこっているのだそうです。ちゅうごくやかんこくのえらい人はとてもおこっているので、そうり大じんが会いたいといっても会ってくれません。
 そうり大じんはどうしてこんなことになったのかりかいできないといっていました。「りかいできない」というのはどういういみかとお父さんにきいたら、「わからないといういみだ」とおしえてくれました。
 そうり大じんはほんとうにわからないのかなあ。そんなのはすごくかんたんなことなので、ぼくはすぐにわかってしまいました。ちゅうごくやかんこくのえらい人がおこっているのは、やすくにじんじゃがきらいだからです。だから、やすくにじんじゃにおまいりに行くそうり大じんのこともきらいになったのです。
 きらいな人に会いたくないのはあたりまえだとおもいます。ぼくもきらいな子といっしょにいるといやなきもちになるだけなので、できるだけ会いたくありません。むこうからよってこようとするとめいわくなかんじがします。そうり大じんはちゅうごくやかんこくの人と会いたいといっているみたいなので、すごくいやがられているとおもいます。
 でもほんとうは、そうり大じんもちゅうごくやかんこくのえらい人には会いたくないんだとおもいます。そうり大じんはちゅうごくやかんこくがきらいなはずだからです。
 どういうことかというと、まず、むかしのにほんの兵たいさんはせんそうにまけてちゅうごくやかんこくからおいだされたので、ちゅうごくやかんこくのことがきらいです。やすくにじんじゃの人はにほんの兵たいさんをかみさまにしているので、かみさまのいうとおりちゅうごくやかんこくのことがきらいです。
 そうり大じんはやすくにじんじゃがすきなので、やすくにじんじゃの人のなかまです。だから、やすくにじんじゃの人がきらいなちゅうごくやかんこくのことは、そうりだんじんもきらいなのです。それに、ちゅうごくやかんこくがきらいな人をそうり大じんにきめたのはにほんの人なので、にほんの人もちゅうごくやかんこくのことがきらいなのがわかります。
 そうり大じんをおうえんしている人は、ちゅうごくやかんこくのえらい人が会ってくれないのはおかしいといい、ちゅうごくやかんこくをおうえんしている人は、そうり大じんがやすくにじんじゃにおまいりにいくのはやめたほうがいいといっているそうです。でも、どちらもへんだとおもいます。
 にほんの人とちゅうごくやかんこくの人はおたがいにあいてのことがきらいなのだから、会ってはなさないのはとうぜんです。あっちから会いたくないといわれたら、こっちも会いたくないんだといってよろこんだほうがいいです。それでもあいたいというのはうそをついているのだとおもいます。
 それから、ほんとうはきらいなのに、やすくにじんじゃにおまいりに行くのをやめてちゅうごくやかんこくのことをすきなふりをするのは、やはりうそをついてしまうことになるのでよくありません。ほんとうにちゅうごくやかんこくのことがすきになったら、やすくにじんじゃにもしぜんと行きたくなくなるとおもいます。むりをしてやめるのは、きぶんがわるくなるのでよくないです。
 こんなにかんたんなことをそうり大じんはどうしてりかいできないなんていうのだろう。もしかしたら、ちゅうごくやかんこくの人にきらいだとおもわれていることも、じぶんがちゅうごくやかんこくをきらいだとおもっていることも、りかいできていないのかもしれません。そうり大じんのくせになんにもわかっていないなんて、ばかだなあとおもいました。

ダーティー・ワーク

2006年01月13日 | 生活
 まことに遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
 新春早々に申し訳ありませんが、今回は下ネタです。猥雑な言葉に溢れていますので、心の清らかな人は読まないでください。
 
 皆さん、消費者金融のアイクのテレビCMが変わったことにお気づきでしょうか。CM全体の雰囲気はほとんど同じですが、ブランド名がディックに変更されています。これにともない、CMのシメに若い女性が朗らかに「ア・イ・ク」と言っていたのが、「ディーック」になりました。気になるのは、この言葉(dick)が男性器を意味する英語のスラングだということ。ディック側が定めている綴りは「dic」らしいが、CMでバンバン声に出して言っちゃってたら、あまりフォローにはならないでしょう。
 ここは日本だし、顧客の大部分は日本人だろうし、そんな4文字言葉を知っているような数少ない下賤の輩などは相手にする必要はないと言えばそれまでですが、より知名度がある(と思われる)「アイク」からわざわざ変更する理由が判らない。単に知らなかっただけなのか。この国際化の時代に、ちょっとうかつなんじゃなかろうか。何よりも、年がら年中この言葉を連呼しなければいけない、この会社の女性社員たちが心配になってしまいます。よけいなお世話か。

 ディックの公式サイトを見てみたら、アイクとディックはともに以前から使われているブランド名で、会社名は別にあることが判りました。で、サービスの充実のためにアイクの主な支店名をディックに統一したと。どうしてそっちに?という疑問は解けないまま、会社概要のページを開いてみたら、さらに驚きの事実が。
 あれ?代表取締役の名前がどう見ても欧米人ですよ?そのほか役員の大半が外国人名じゃないの。どういうことかと思ったらこの会社、本社の所在地は東京になっているものの、アメリカの金融グループの一員なのですね。
 えーっと。これはどう考えたらよいのでしょうか。会社の上層部の人々が、自社の使っているブランド名を知らないとは思えない。大半はアメリカ出身だろうから、「ディック」というスラングの意味するところも判っているでしょう。だとしたら、なぜそれを変えることもなく、むしろあらためて前面に押し出そうとしているのか。
 日本国内で使われるだけならば別にかまわないという判断なのか、やっぱり「dic」だから気にならないのか、破天荒なまでに広い心の持ち主たちなのか、本気で訳が判らなくなってしまいました。もしかしたら、会社を挙げて大人のジョークを世の中に対してぶちかましているのかも知れません。傾奇者の巣窟なのでしょうか、この会社は。
 もっとも、アメリカ人にこの「ディック」という言葉がどう聞こえているのか、どのぐらいのヤバさなのかは、ネイティブではない俺にはちょっとイメージしづらいものがあります。スラング=隠語であるからには、誰にでも通じるというほどではないのかも。つまり、CMの最後に
「チーンコ」
と女性がはっきり言っているとは受け取られていないのかも知れません。
 だとしたら、どう訳せば最もニュアンスが近いのでしょうか。「ディック」というのは一般には男性の名前ですが、日本語でこれに類する言葉がどうにも思いつきません。「得手吉」なんてのは人名っぽいけれど、いまどきこの言葉に男性器の意味があると知っている日本人がどれだけいるか。もしかしたら「ディック」より判りにくいかも。まさにlost in translation。まさにってどこが。
 この「ディック」に限らず、日本人にとっては何でもなくても、外国ではとんでもない意味になってしまう言葉というのはけっこうありまして、有名なところでは東京 高田馬場にある「BIG BOX」は「大きな女性器」の意味になるらしい。「カルピス」は「cow piss=牝牛の小便」に通じるので、アメリカでは名前を変えて発売されているそうです。ブッシュ大統領の「bush」には「陰毛」の意味があり、ブッシュ大統領をネタにした「That's My Bush!」というアメリカのテレビ番組のタイトルはそれを狙ったもの。
 これまた知っている人は多いようですが、サザエさんの「カツオ」はイタリア語の「男性器」とほぼ同じ発音になるらしい。ブラジル(ということは公用語のポルトガル語?)では、「サカナ」が「オナニー」、「メシを食う」が「尻の穴をいじる」、「マンマを食う」が「尻の穴を吸う」に聞こえると小説家の開高 健が書いています。「フデといったら命とり」とも書いてありますが、相当に下品な言葉ということでしょうか。
 外国語から離れるけれど、そういう開高 健の「開」という文字は女性器を意味する隠語です。本人はもちろんそれを知っていて、この珍しい姓を残していく文化的意義を訴えておりました。彼の場合は名字だからそうも言えるでしょうが、「宍戸 開」となるともはや目も当てられません。最初にこの名前をテレビで知った時には「正気か、宍戸 錠」と思ったぐらいです。
 知らないということは恐ろしいもので、宝塚の女優が自分の芸名を「たまな めい」とか「たま せいき」と付けようとして、先輩に止められたという話もあります。最近だと「ボボタウ」という名前の音楽グループにもびっくりしましたね。「ぼぼ」といえば九州地方の方言で女性器のこと。広辞苑(第三版)にさえ「女陰の異称」と載っているぐらいなのに、よりにもよって「ぼぼ」で「たう」んですよ、お客さん。いったいどこで歌うつもりなのかと。誰か注意する大人はいなかったのか。
 小説家の町田 康は、かつて「腐れおめこ」という名前のバンドで活動していたし、アメリカには「アナル・カント」というグラインドコアのバンドもありますが、これはパンクでロケンロールなスピリットの発露であって、知らずに名乗ったのとは訳が違います(ボボタウの人々が「ぼぼ」の意味を知っていた可能性も否定できないが)。それとも、いまや九州人でもあまり使わない言葉なのでしょうか。かつてプロレスラーのボボ・ブラジルは、九州巡業では名前を変えたというのに。昭和は遠くなりにけり。
 こうして思いつくままキッツイ例を挙げていくと、「ディック」なんて別に驚くほどのものではないんじゃないかという気がしてきます。もともとよくある人名だし、ディック・トレイシーなんて映画もあったし、ディック・チェイニーは堂々とアメリカ副大統領を務めているし、古くはディック・ミネという歌手もいた。こんなにありふれた名前を使うのに、遠慮しなければならないなんておかしな話です。
 きっとディックの関係者はみんな、童子の如く純粋な心の持ち主か、小事にとらわれない剛毅な人柄かのどちらかなのですよ。だからディックがどんな意味を持っていようと、気にすることなく泰然としていられるのです。そんなかれらの寛闊さに比べたら、つまらないことを追及する自分がどれほど卑小な存在かを思い知らされます。
 こうして生まれ変わったように平らかな心を胸に、あらためてディックのサイトを見てみました。サイトには「ディックが大きくなって生まれ変わります」なんて書いてあります。この天衣無縫ぶりがまた心洗われるような清々しさではありませんか。いかにも清潔感のある若い女性が広告に起用されているのも、この会社の廉直さを示しているかのようです。仮に内実は違ったとしても、そうありたいという高い志の表れなのでしょう。大がかりなセクハラなどではけっしてありません。