仮名日記

ネタと雑感

やすいはなし(私の軍隊・あなたの軍隊)

2007年04月08日 | 社会
埼玉県知事 上田清司

 拝啓、突然の非礼をご容赦ください。私は埼玉県内で自営業を営んでいる者ですが、事情があって名乗ることはできません。以前は自衛官として、朝霞駐屯地に勤務しておりましたが、現在は外患ではなく内憂を晴らすために微力を尽くしております。
 さて、4月2日に行なわれた新規採用職員の入庁式で、知事が「自衛官は平和を守るために人殺しの練習をしている」とご発言されたと、テレビのニュースで知りました。これに多数の抗議の電話・メールが寄せられ、知事は3日の記者会見で「自衛隊に不快な思いをさせ申し訳ない」と謝罪されたとのことです。
 愚かしく心ない人々からの非難の声に晒され、意に反して謝罪の言葉を述べなければならなかった知事の心中は察して余りあります。さぞ無念だったことでありましょう。このような理不尽な事態に心を痛められているであろう知事のため、わずかでもお力添えができればと思い筆を執った次第でございます。
 自衛官であった頃の私は、日夜過酷な訓練に励み心身を鍛練し、小銃から戦車に至る武器・兵器の扱いに習熟すべく努めておりました。それは知事がおっしゃったように、まさしく人殺しの練習そのものです。戦術・戦略を学びその蘊奥を極めんとすることも、人殺しの知恵と技術を高めるためのものであります。自衛官はなぜ人殺しの練習をするのか。言うまでもなく、我が国がまさに脅かされているその時に人を殺せなければ、我々を生み育んでくれた祖国と、そこに住む愛する人々を守ることができないからです。
 しかるに、知事を非難する人々はこの厳粛な真実を理解していないか、目を逸らそうとしているとしか思えません。自衛官が人殺しの練習をしていることは、誰が見ても明らかな事実であるというのに、平和ボケしたかれらは、国のための人殺しという大義を肯定できず、尊い義務を果たさんとしている自衛官に敬意を払うこともできない。むしろ、自衛官を忌まわしい賤業であるかのように見倣し、己の手は汚れていないと思い込もうとしているのです。この浅薄さや卑劣さを糊塗せんとする恥知らずどもこそが、知事のご発言をことさらに非難している者たちの正体でありましょう。かれらの衆を恃んだ身勝手なふるまいには辟易としますが、愚かで卑しい連中のやることと思えば、怒るよりも憐れむべきなのかも知れません。
 しかし、かつての私と同じく自衛官の職を奉じた者たちが、知事のご発言を「侮辱」であるとか「不快」などと口走っていると伝えられることには長嘆を禁じ得ません。いやしくも自衛官たる者の口から、かくも腑抜けた妄言を聞こうとは。噫、平和ボケもここに極まれり。
 私はかれらに問いたい。あなたたちに自衛官としての自覚はあるのかと。人を殺す覚悟も持たないまま自衛官であり続けることは、祖国に対する背信であり欺瞞であり、ただ無為であることよりも罪深い。そのようなていたらくで、危急存亡の秋に勤めを果たすことなどできるはずがありません。自衛官ならば誇りを持ってこう言うべきなのです。「私は人を殺せる、人を殺したいんだ」と。
 ご案内のとおり、今年の1月に防衛庁は省へと昇格いたしました。近い将来には憲法の改正も実現することでしょう。我が自衛隊が名実ともに軍隊として認められ、真価を発揮しようとしているこの時に、知事の正鵠を得たご発言が問題視されることこそが問題であろうと思います。一般国民のみならず自衛官までもが国防に対する意識が十分ではないことを如実に物語っているからです。
 だからこそ、人殺しの意義を深く理解しておられる知事には、今後も勇気を持って自衛隊と祖国の未来のためにご発言・ご活動いただきたいと願っております。小人どもの発する雑音に惑わされる事などはありません。正しい人殺しとは如何なるものか、埼玉県から全国に提唱し、その普及啓発に努めていただけたならば幸甚と存じます。
 長々と失礼いたしました。知事としてのお仕事は激務でもありましょうが、お体に気をつけられますよう。   敬具