朝、バス停でバスを待っていると、
道の向かい側で黄色い帽子もまだ新しい、
小学校1年生と思われる女の子がしゃくりあげて泣いていた。
「行きたく、ないもん、えっ、え…、ぐす」
どうも夏休みのなかの登校日らしいのだけど、
彼女は訳あっていきたくないらしい。
「ほら!早く行かないと遅刻しちゃうでしょ」
姿は見えないが家の奥からお母さんの声。
「だって、行きたくない、(ひっく)、から行きたくない」
そりゃそうだ。行きたくないから行きたくないよね。
「もう○○ちゃんも、学校行ったよ、早く行きなさいったら!!」
お母さんの声に気おされ、
じりじりと玄関から舗道まであとずさりする女の子。
彼女の心の攻めぎあいが手に取るように伝わってくる。
諦めて学校へ行くのかしらと見ていたら、
残念、乗るバスが来てしまい、その先を確認することはできなかった。
登校日といえば、確か、あれは小学校3年の夏休みのこと。
夏休み中、何度かある学年の登校日だったある日、学校へ行った。
ところが教室はしんと静まり朝の気配をたたえたまま、誰もいない。
「あれ?どうしたのかな」
教室の時計の針が8時15分の始業をさしチャイムが鳴っても、
クラスメイトはおろか、先生さえ来やしない。
「……間違えたんだ」
家にすぐ帰るのが格好悪くて、
誰もいない教室で時計の文字盤をにらみつけ、
針が11時をまわったところで学校を出た。
それでも家に着いたのが早かったようで、
祖母に「早く終わったんやね~」と声をかけられ、
うんとうなづくのが精いっぱいだった。
その夏休みの間じゅう、
本当の登校日がいつだったのか居心地悪く過ごし、
明けて新学期になって、誰からも何も言われなかったところをみると、
ちゃんと正しく他の登校日は行っていたようだと安堵した。
今以上に、ぽわ~んと抜けていた、9歳の夏。
おバカさんだねぇ、我ながら。
さて、今年の朝顔、咲きました。