鏡花水月紀。

日々の言の葉、よしなしごと。

湯涌へ。

2010-09-28 | 日々のこと。
25日、金沢湯涌江戸村へ行ってきました。時おり雨雲がかかると雨がぽつぽつ落ちてきましたが、概ね秋らしい蒼穹の広がる良い日よりでした。
既に4年前から公開されている茅葺き農家群の前をすぎると、加賀藩上級武士の旧多賀家表門。そこが正門になる出入り口。矩の字にまがった土塀の先に、新たに公開になった町家・武家群がありました。


入ってすぐ右手には、国の重要文化財で金沢近郊の鶴来街道沿いの商家だった「旧松下家住宅」。往時も今も種苗店として市民に親しまれており、開村式には5代目当主の松下良さん姿もありました。
その隣は竪町入り口にあったという「旧山川家」。こちらは県の文化財でベン柄格子も艶やかです。吹き抜けの梁がとても細くて、一緒に見てまわった建築士のくろひょうさんも、こんなに細いのは初めてと驚くほど。
さらに先に進むと大正から昭和にかけて政界で活躍した永井柳太郎の生家「旧永井家住宅」。元は足軽屋敷だった家は6畳や4畳半のといった小さな間取りがこまごま。武士の家は階級ごとに家の建て方も決められていました。
旧永井家を過ぎて右へ折れると国の重要文化財「旧鯖波本陣石倉家住宅」。かつては福井県南条町(現・南越前町)鯖波の宿場本陣として使われていたもの。一見するとお寺かと思うほどの大きな切妻の屋根をもち、その吹き抜けのスケールは圧巻。に圧倒されました。

松下家、山川家、永井家は木葉(コバ)の上に石をおいた石置き屋根です。今も金沢市野町の森紙店はこの石置き屋根です。基調講演をされた千葉大学名誉教授・大河直躬さんの話によると、戦後まだしばらくは金沢の繁華街裏通りの家は半数以上この石置き屋根だったそう。
春になると屋根屋さんが各家をまわってきて、木葉を表裏かえし、雪によってずれた石を直したていたそうです。なんだかいい時代。


ここで「金沢湯涌江戸村」が出来上がるにいたるまでの運びを少しおさらい。
かつて湯涌温泉街の高台には『白雲楼ホテル』というホテルがありました。
1932年に建てられ、その本館玄関は近代建築三大巨匠の一人フランク・ロイド・ライトによる設計で、南欧と北欧の建築様式が調和した建物でした。その豪奢な作りは東洋一というキャッチフレーズまでついていました。戦後はGHQの保養施設に摂取されたり、昭和天皇などもお泊りに。
往時の様子は、こちらのサイトへ。
しかし残念ながら経営していた会社が1999年に倒産。競売にかけられたもののなかなか落札者が決まらず、落札後も諸般の事情で長らく放置され、その後金沢市に譲渡されました。しかし時既に遅し――。建具は壊れ、吹きさらしになった室内には苔や草が繁茂。壁は崩れ床は抜け落ちといった荒れようで、やむなく市は撤去の決断を下しました。
その経営していた会社が江戸村、檀風苑という野外施設群も持っていました。それらも市が引き取り、「金沢湯涌江戸村」に移築されたというわけです。まだ旧江戸村には何棟か残っており、いずれはそれらもこの新たな地に移設されていきます。
大河さんが「これまでは移築され出来上がった建物を見るだけの時代だったが、今は違う。ぜひ、工事の途中、どんな作り方、どんな手仕事で建てられるのか、そんなところも見せていってもらえれば」とおっしゃっていたように、金沢湯涌江戸村が、湯涌の新しい観光名所であると共に、技術や文化の伝承の場としても活用されていけば良いなと感じました。


さて気がつくと時計は12時をまわり、お腹が空いてきました。
湯涌温泉街の食事どころたかおで、くろひょうさん、石川県茅葺き文化研究会(以下、茅文研)のS理事とで昼食を食べながら、あれこれ歓談。
そのなかで今から三年ほど前、茅文研の依頼で県内の茅葺き民家をヒアリングに回った七尾市のMさんのお宅が、七尾市に相談があったことを聞きました。
記憶を辿っていくと、確かヒアリングに伺った年の前年くらいに息子さんを亡くされていたはずで、Mさんご自身も今年85歳くらいにもなられたはず。曽祖父の代からの屋根を守っていかなくてはと仰っていたことが鮮明に思い出されてきました。
お話はきっと屋根だけではなく、築160年の家自体をどうしたらよいものかというところにもありそうです。善はいそげ、2日、S理事と七尾へ行ってきます。

満月の夜に。

2010-09-23 | 日々のこと。
今からちょうど3年前の今日、母が倒れ、そして命を繋いだ日。
倒れたと聞いたとき、私の命が無くなってもいいから、
どうか母の命を助けてくださいとあてどなく祈りましたっけ。
母は左半身に後遺症が残ってしまいましたが、
この世に生きていてくれ、それが何よりしみじみ嬉しい。

今日の日中は町家巡遊2010で使う大和家、間明家の掃除がありました。
掃除には町家巡遊スタッフのほか、金沢大学講師のKさん、
そしてその教え子たち8名も参加してくれました。
集合場所の大和家に着くと早々Kさんと男子学生の姿が二人。

「参加者名簿にいちおう名前を書いてください」とバインダーを手渡され、
はさんであるレポート用紙をみると、
先に書き込まれている名前に、何だか見憶えがあるのです。
「あの、Mさんて、もしかしてN市出身でお母さんはS恵さん?」
いきなり見ず知らずのオバサンに聞かれた学生はびっくり顔で
「なんで知ってるんですか?」

ああ、やっぱり。
彼は学生時代同じ美術学科に在籍したMさんの息子さんでした。
彼女は油絵、私はグラフィックデザインと専攻は違っていましたが、
朝夕の通学バスが同じでよく一緒に肩を並べて帰っていたのです。
「あなたが生まれたときの年賀状、写真付きの、たぶんまだ家にあるわよ」
「ええ~~~!!」
なんておもしろい出会い。

もし町家巡遊に参加しなかったら、
もし私が大野町に引っ越さなかったら、
もし骨董をやってなかったら、
もし、もし、もし・・・・。

思えばいろんな仮定「もし」が肯定と否定を重ねて
これまでさまざまな縁を結んでいる。

親子、兄弟、夫婦、恋人、友人、職場の人。
現世での出会いというのは、
どこかなにか、決められている縁があるのだろう。
今宵の満月にように丸くまぁるく、縁は円で、輪を結ぶ。
冴え冴えと美しい満月の夜に、確信をもってそう思う。

金沢湯涌江戸村 開園。

2010-09-22 | 日々のこと。
中秋の名月はあいにく雨雲の向こうです。
来月の栗名月を愛でられるように祈りましょうか。

さてさて、金沢の奥座敷として知られる湯涌温泉。
その手前の芝原地区では、平成18年から野本家など茅葺き農家3棟が移築公開されており、
私も茅葺き関連のイベントで何度か訪れたことがありました。

そこに5棟の武家や町家なども移築され、今週末「金沢湯涌江戸村」としてオープンします。
これはもともと湯涌の山間で民間企業が経営していた旧江戸村、旧檀風苑にあった建物を市が譲り受け、
移築・整備をすすめていたものです。
開園にあたっては「金沢職人大学校」で日本の伝統的な建築の手法を学んだ方々も腕をふるったそう。
(ハードとソフトがうまくかみあってこれはなかなか良いなと思いました)
これから先まだ5棟、2016年までに移築するそうですから、
まだまだ腕のふるいがいがありそうです。

先日来沢されていた茅葺屋のshiozawaさんと話していたなかで印象深かったのが
「家というのはその土地の風土と切り離せない」「特に茅葺きの家は土地から生えている」。
古い民家を移築して公開している施設が数多くありますが、
「置き物」になり、生きていないものがあるのは確か。
金沢湯涌江戸村がそうならないよう、活かして息をさせてあげたいものです。

オープン初日の9月25日には開園式も行われ、大河直躬千葉大学名誉教授が
「江戸村の歴史的建物の特色と加賀能登の風土」と題して記念講演を行うほか、
加賀鳶や加賀万歳、金沢百萬石太鼓、湯涌音頭などの伝統芸能が披露されます。
建築士のくろひょうさんと湯涌のせいこさんらと現地で待ち合わせをし、
当日どんな様子かをみてきます。

追記)
湯涌温泉といえば、竹久夢二ゆかりの地でもあります。
岡山には夢二の生家がまだ残っているんですね~。それも茅葺きで♪
(寒川猫持さんに教えて頂きました)

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「金沢湯涌江戸村」
 開園時間 9時~17時30分
入園料 一般=300円、65歳以上=200円、高校生以下無料。
火曜休園(祝日の場合は翌日休園)。


明日は十五夜。

2010-09-21 | イベント、お知らせ。
「ひこにゃん」が想像以上に可愛かった~と職場で連発していると
「そうですかぁ、ただの着ぐるみですよぉ」と水をさされたが、
ほらほら、どうよ!!
こういう記事がグッドタイミングでアップされているじゃない。

「ファン倶楽部も発足だって~♪」と嬉しそうにいうと
「年齢制限あるんじゃないですか」。
悔しくも冷静な突っ込みをされてしまいました。

さ、気を取り直して。

明日は旧暦8月15日。十五夜です。
尾花を縁側に飾りましょうか。
それぞれの空のもと、お月さんを見上げましょうね。

ちなみにひこにゃんの刀には、
お団子が刺さっていましたが3色だったからこれは花見団子のもよう。
お月さんへのお供えに、月見団子もお忘れなくね。

お気に入り。

2010-09-21 | 日々のこと。
お店のお客さまkennyさんに教えて頂いた奥琵琶湖のとあるお店。
訪ねて以来すっかりお気に入りになり、
1年に1~2回ほどお邪魔しています。

船着き場に出てひたひた小石を洗う汀を散策したり、
ぼんやり座って対岸を眺めたりしてゆっくり時間を過ごします。
素敵なところでしょ?

あまり人に教えたくないので、ここでは教えません。
だって、わんさか煩く押し寄せてもらいたくないもの。

胸キュン。

2010-09-20 | 日々のこと。
3連休いかがお過ごしでしたか?

こちらは18日の午後から19日かけ、
彦根界隈とお気に入りの奥琵琶湖のお店に出かけてきました。

彦根はここ数年通過するばかりで、
かれこれ十年ぶりくらいに立ち寄りました。

久しぶりに彦根城へも行きましたら、
今さらですが、ひこにゃんに胸キュン。
着ぐるみと分かっていても、想像以上に可愛い。
天守閣の造作よりも感動してしまいました(苦笑)。

この夏、その猛暑で動きが鈍いとニュースにもなっていたひこにゃん。
涼しくなって、完全復活。
ポージングも決まっていました。



町家巡遊2010 金石・大野エリア会議。 

2010-09-18 | イベント、お知らせ。
昨夜7時半から町家巡遊2010の金石・大野エリア会議が、
金石エリアの拠点町家になる宮野家でありました。

玄関先に行灯が灯され、すごくいい感じ。
くぐり戸を抜ける進んでいくとそこはオエの間。
照明、空調も整備され、元の面影を壊すことなく素敵に改装されていました。

昨夜のエリア会議は4回目。
これまでは大野町在住の金沢大学講師・小林さんの町家で開かれていましたので、
金石での会議は初めてです。
大野町から一緒にいったTOKOさんやたみちゃんもこの宮野家は初めてで、
3人して「うわ~、いいね~。素敵!!」を連発。
巡遊期間中、このお家は午後からカフェにもなりますので、
ぜひ寄ってみてください。



エリア会議は現在の進捗状況の報告、当日の行動確認などの詰め。
そして23日の大野町拠点町家の掃除、
来月18日の5度目の会議を行うことを決めて散会。

去年に続き頭に町家の瓦屋根をのせた
猫がモチーフの巡遊パンフレットもいただきました。
町家ショップを紹介するものとあわせて2種類あります。
可愛いでしょ!
見かけられたら是非手にとってくださいね。

ここまできたら、あとは各自の催しの管理。
そろそろ、諸準備に気を引き締めてとりかかっていきます。

町家巡遊2010公式ブログ

期限付きの命。

2010-09-14 | 猫のこと。
今週は職場主催の「電話応対コンクール」の加賀、能登のブロック大会。
月曜に能登ブロック大会を終え、今日は加賀ブロック大会の会場準備、
明日はその本番です。

会場は常磐町にある県青少年総合研修センター。
昨年、一昨年は市の文化ホールで行っていましたが、
今年は2月の段階で既に予約が取れず研修センターになりました。
が、これがけがの功名。
第3セクターが運営しているので、すこぶる応対もサービスもよく、
ホールの椅子のセッティングなど設営も行ってくれるので大助かり。
設営では毎回椅子を150席ほど出さなくてはならず、
これでいつもぎっくり腰を再発したり、
ひどい筋肉痛になっていたので、本当にありがたい。
早々スピーカーなど電気系統のセッティングも順調に終わり、
さあ帰ろうかと1階に下りると、犬の里親探しの案内が目に止まりました。

う~ん。こういうのに弱いのぉ。
そして帰宅してtwitter のつぶやきをみていると
猫の里親探しのつぶやきがあるではありませんか。

それもこの金沢で、一人の人が17匹も、市の小動物管理センターに持ち込んだ!!
今現在は9匹貰い手が決まり、あと成猫7匹、子猫1匹が残されているとか。
気になって、写真まで見てしまったのがいけません。

おどおどと姿勢を低くし、不安な目をした猫たち。
今週17日までに貰い手がつかなければ殺処分。
どうしよう、見てしまった、期限付きの命。

http://www4.city.kanazawa.lg.jp/23036/pet/pet_satooya/pet_satooya_cat/pet_satooya_cat.html


★9月17日、無事みんな貰い手が決まりました。よかった!!
(氷山の一角ではありますが)

茶箱の和敬手前。

2010-09-11 | ぐるぐる町家巡遊
お茶は飲む専門のわたくし。
店でもお茶道具は殆ど扱いません。
そんなド素人がカジュアルなお茶会を町家巡遊2010で開きたいと妄想し、
白羽の矢を立てたのが紫陽花さんと文緒さん。

今日は午前中、その打合せを紫陽花さんと行いました。
紫陽花さんはきっと、余りにお茶を知らないことに、
驚かれていたことでしょう・・・。
まあ、でも、だからできるお茶会もありますよね。

そんなわたしに合わせて紫陽花さんは、
「茶箱の和敬手前」というお手前をご提案。
お客さまにお茶をふるまってくださることになりました。
拝見させて頂いた茶箱の可愛いこと。
小さな塗りの箱にお道具達が収まっていました。

10月にもう一度文緒さんも交えて打合せをおこない当日の予行演習。
楽しみ、楽しみ。
あ、だけど亭主を仰せつかったのですけれども、
お話しているだけでいいですよと、優しく紫陽花さんに言われましたが、
それで本当によいのでしょうか。
紫陽花さん、文緒さん、ご迷惑をおかけしますが、
どうぞ宜しくお願いいたします。

こんなわたしが亭主です。
どうぞ、安心してお気楽にご参加くださいませ。

詳しくは町家巡遊2010公式ブログへどうぞ。



風と共に茅談議。

2010-09-09 | サワサワ茅葺き
台風が北陸地方に上陸するという7日、
神戸から茅葺屋のshiozawaさんが石川県珠洲市黒丸にある
黒丸家(江戸初期建造)の茅葺屋根の葺き替えの視察がてら、
金沢で途中下車してかたかご庵に寄ってくださりました。
前にお会いしたのは南砺市であった茅葺フォーラムのときですから、
2ヶ月ぶりの再会です。

3時ごろ、石川県茅葺き文化協会のお手伝いをされている湯涌のせいこさん、
そして3時半ごろにshiozawaさんが大野町のかたかご庵に到着。
駐車場に車を誘導し、かたかご庵へ案内。
久しぶりに町家をご覧になったそうでその造作に妙に感心され、
しばし家の前であれこれ町家談議。
それから庵に上がっていただきました。

知り合って3年ほどたって今さらでしたが、なぜ茅葺職人になったのかとか、
shiozawaさんが常々話されている環境としての茅、茅葺きの関わり方、
夢物語ではない茅葺き屋根の話、これからの茅葺きなどを様々またうかがいました。
これらは私が付け刃で書いても、恥ずかしい限りですから、
茅葺屋のホームページshiozawaさんのブログ
またそのお弟子さんのsagaraさんのブログで知っていただければと思います。

夕食は片町まで出て笑宿で引き続き歓談。
茅葺き調査を一緒にした建築士のくろひょうさん、
せいこさんの友人の由田さんも加わってわいわいとまた楽しく熱い茅談議。
近ごろ停滞気味の石川の茅葺き文化も盛りあげて行きたいと、
改めて思いました。

茅は人に刈られ、屋根に葺かれ、また土に還って、新しい生命を育む。
そんな循環のなかで植物や動物、人間の営みを支えてありました。
建築、自然、農業と茅文化への入り口は色々とあると思うのですが
「茅って面白い!!」
そんなことを私は伝えていけたらと思います。

shiozawaさんには、また色々とご相談やお知恵をお借りすることにもなろうと思います。
この場を借りて、どうぞ宜しくお願いいたします。