鏡花水月紀。

日々の言の葉、よしなしごと。

厚意謝するに余りあれども。

2007-03-30 | 本のこと。
タイトルは歌よみ・寒川猫持さんの

 尻なめた舌でわが口舐める猫 
     厚意謝するに余りあれども

の、下の句からである。
犬猫を飼ったことのある方なら、
そうそう、と思わずにんまりすることだろう。


ブログをこちらに移したのは、
世の中の「厚意謝するに余りあれども」といった方々より、
距離をおくためである。

どのようなことがあったかは詳しくは記さない。
世のストーカー被害とはちがって、
あくまで先方は善人なうえ、ただ厚意をもってのことなのだ。
だが、余りあるから、困った、面倒だ、言葉にしたら角がたつ。
そんな理由でこちらへと移ったしだいだ。


さて、猫持さんである。
歌壇デビュー当時は目医者でバツイチだったが、
目医者は儲からないと今は辞めたらしい。
大阪生まれ、学生時代を石川県に暮らし、
羽咋市育ちの猫も飼っていた。

 押入れの手提げ金庫の番号は
   別れた妻が知っております

 もみじ饅頭一個くわえて走ってる
   あの縞猫がうちの猫です

ペーソスとユーモアあふれる歌を歌うかと思えば、
かつて俳句を詠んでいたころの句には、

 風車並べて風を売る男

 菊を着てみんなあの世の人ばかり

ドキリとさせる観察眼で句を詠んだ。
猫持さんの名誉のためについで真面目な歌も書いておこう。

 あじさいの咲く道をゆく少年よ
      花青ければ青きかなしみ


おそらく自分が男だったら、
こういう哀しみをもっただろうというところや、
幼いころのあまやかな時間へのオマージュに、
心響くものがあった。
そうして彼の笑いのサービス精神にも。

 飼い主も面目ないがお前かて
   タマとミケ子にフラれたやんけ

随筆と併せ読むと、深い教養も見え隠れ。
ここ暫くは、猫持さんが読書ブームとなりそうだ。