●イギリス俳句の旅第5日/2011年9月23日●
◇カッスルクーム・バース◇
[カッスルクームの街] [バースの街]
カッスルクーム
教会の秋ばら色も白がちに
朝霧に日が散り馬の立ちつくす
栃の実のかがやき拾いポケットへ
バース
ローマの温泉(ゆ)深くのぞきて秋の旅
バースの街の道を伝いて秋日燦
○カッスルクーム
カッスルクームは、コッツウォルズ地方なのだが、観光は翌日にまわりバースへ行く前に寄ることになった。駐車場でバスを降りて、谷へと森の坂道を15分ばかり下ったところにある街で、50メートルも歩かないうちに尽きてしまうような小さな町である。30件ほどの家があろう。バイブリーよりもずっとしっとりとした町で、町の中心にはマーケットクロスという十字架のあるお堂風の建物がある。ここで市を開いてよいという許可の印ということであった。ボードン・オン・ザ・ウォーターにも、マーケットクロスがあり、こちらが7,8メートルの塔でてっぺんに十字架があった。われわれは集合場所の目印にした。
カッスルクームもウールで栄えた町で教会がある。かわいい教会で、入口や祭壇はもちろんのこと、教会に集まる人たちの席のわきにも、ブーケの薔薇がそれも生花がそれぞれに活けられてあった。四角な箱様の足置が置かれていたが、一つ一つクロスステッチの刺繍がされている。信者たちが作ったのであろうが、やさしく、かわいらしいものばかりである。ステンドグラスも小花がちりばめられて、かわいくやさしい印象である。この教会も町には不似合いなほど立派で、ウールの財によって造られたので「ウール教会」と揶揄されて呼ばれている。イングランドには、あちこちに「ウール教会」がある。
カッスルクームも人々が普通に暮らしているが、秋の草花がきれいに咲いている。家の壁とよく似あって、絵本のような町である。ピンク色の貴舟菊が咲き乱れ、しゅうめい菊もあった。窓にもそれぞれに花を飾ったり、ハンギングバスケットを下げたりしている。真黒に熟れた葡萄が窓を飾っている家もある。庭としは決して広くない。日本の普通の家にある庭ほどであるが、見事なセンスで花をまとめ上げている。近所との調和も忘れていないのだろう。イングランドに花が多いのは、気候のせいも大いにあるだろうと思った。5月ごろから咲く花が9月の終わりになってもまだ咲いている。盛りのときとは色も変わり、姿も衰えているが、それはそれで、いい風情なのである。盛りを過ぎた花と、今を盛りの花がうまく混ざり合って、絵画的な色彩となっている。貴婦人の衣装を思わせるようなところもある。
一緒に来た日本人で教会に入ったのは私と句美子のほかは、二人ぐらいであったと思う。時計の仕掛けを硝子張りで見せていた。教会の小さな墓地をよぎると出口があるのでそこから出て、十歩ほど歩き車の通る道に出た。出たものの、そこは、マナーハウス(領主の館)の敷地のようであった。緑の芝生がきれいに手入れされて広がっている。パラソルがひとつ立ててある。その敷地を囲んで農機具のようなものを置いている家が何軒があったが、どうも芝刈り機のようである。マナーハウスには、宿泊客以外は入れないが、しかし、どこから出ればよいものか。うろうろしているうちに、マナーハウスの敷地からは出たようだ。喫茶店も家具屋もあるがしずかで、歩いている住民らしい人はだれも見かけなかった。車は通って行ったが。家は思ったより小さく、日本の家がウサギ子屋と笑われるほどでもないと思えた。しかし、丁寧にしずかに、おろらくこころ豊かに暮らしている。カッスルクームはバイブリーよりもしっとりと落ち着く谷の底にある町であった。
○バース
世界遺産に登録されたバースは、ローマ浴場跡が楽しみ。ヨーロッパのあちこち、イギリスにも、ローマ人がやってきた遺跡がある。バースは、予想以上の大きい都会であった。バースの町は、中世の作家チョーサーによる「カンタベリー物語」に出てくるバースの女房で初めて知ったのであったが、陽気で善良な(good)な女房である。その印象そのままに陽気な街でミュンヘンの町の雰囲気もあった。教会の広場では楽器を演奏したり、歌ったりして人を楽しませていた。人が入れ替わり演奏するのである。どら焼きのよう大きな金属で出来た楽器を二人で演奏していた。それを小学生が教師と親に引率されて見に来ていた。バースではローマ時代の浴場があるが、見学すると1時間以上かかる。一部分見えるところがあるのでそこから浴場を見物した。黄土色の石、まさに「ローマの色」の浴場の白緑色の水がたまってあった。現在は使用されていなく、温泉水だけを売って飲ませている。あまり美味しいものではないらしい。1時間以上かかるところを15分ぐらいで済ませたので、句美子と教会とバースの街を見物して回った。教会の内部の建築は垂直様式。真直ぐ白柱が天井まで立って、天井で花が開くようにパッと開いて優美である。柱ごとにそうなっている。見物していると高いところから赤い洋服の老人が降りてきたので、そこから上へあがれると思ったが違っていた。彼女の右手には水差しがあった。花に水を差しに上っていたようだ。教会も人々の奉仕で賄われている。入場料は無料だが、寄付を2,5ポンドほど求められる。女性の司教?がパンフレットを渡してくれた。
バースの街の繁華街は本屋やファッションの店が並んで、花屋が道にテントをはっている。リューマチの病院があったり、さすが温泉街である。商店街を上り詰めると50メートルくらいは続いている一つの建物があったりする。どれも古く、横道にそれれば、落葉がからから転がり、ろくに掃除のしていないところもある。偶然にも「ジェーン・オースチンセンター」の小さな建物に出くわした。センターといってもショップなのである。入ってみると「自負と偏見」の小説をはじめ、彼女の本を売っている。レースばかりのパラソル。レースの扇も売っている。そこでは買うほどのものはなく、また街をやたらと歩き、教会の塔を目指して、もとの場所に帰った。
▼カッスルクーム
http://homepage3.nifty.com/E-RoseCottage-Garden/page020.html
▼バース:
①http://www.linkclub.or.jp/~kiki/omake/bath.html
②http://www.romanbaths.co.uk/
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★虫籠に風入らせて子ら駈ける 正子
草原で秋の虫を追いかけて、虫籠を持って走り回る元気な子どもたち。そんな様子が軽やかに感じられます。(高橋秀之)
○今日の俳句
涼新た一直線に船が出る/高橋秀之
新涼の季節。港を出てゆく船も、かろやかに一直線に航跡を残して出てゆく。新涼の気分に満ちた句。(高橋正子)
◇生活する花たち「水引の花・吾亦紅・チカラシバ」(横浜下田町・松の川緑道)
◇カッスルクーム・バース◇
[カッスルクームの街] [バースの街]
カッスルクーム
教会の秋ばら色も白がちに
朝霧に日が散り馬の立ちつくす
栃の実のかがやき拾いポケットへ
バース
ローマの温泉(ゆ)深くのぞきて秋の旅
バースの街の道を伝いて秋日燦
○カッスルクーム
カッスルクームは、コッツウォルズ地方なのだが、観光は翌日にまわりバースへ行く前に寄ることになった。駐車場でバスを降りて、谷へと森の坂道を15分ばかり下ったところにある街で、50メートルも歩かないうちに尽きてしまうような小さな町である。30件ほどの家があろう。バイブリーよりもずっとしっとりとした町で、町の中心にはマーケットクロスという十字架のあるお堂風の建物がある。ここで市を開いてよいという許可の印ということであった。ボードン・オン・ザ・ウォーターにも、マーケットクロスがあり、こちらが7,8メートルの塔でてっぺんに十字架があった。われわれは集合場所の目印にした。
カッスルクームもウールで栄えた町で教会がある。かわいい教会で、入口や祭壇はもちろんのこと、教会に集まる人たちの席のわきにも、ブーケの薔薇がそれも生花がそれぞれに活けられてあった。四角な箱様の足置が置かれていたが、一つ一つクロスステッチの刺繍がされている。信者たちが作ったのであろうが、やさしく、かわいらしいものばかりである。ステンドグラスも小花がちりばめられて、かわいくやさしい印象である。この教会も町には不似合いなほど立派で、ウールの財によって造られたので「ウール教会」と揶揄されて呼ばれている。イングランドには、あちこちに「ウール教会」がある。
カッスルクームも人々が普通に暮らしているが、秋の草花がきれいに咲いている。家の壁とよく似あって、絵本のような町である。ピンク色の貴舟菊が咲き乱れ、しゅうめい菊もあった。窓にもそれぞれに花を飾ったり、ハンギングバスケットを下げたりしている。真黒に熟れた葡萄が窓を飾っている家もある。庭としは決して広くない。日本の普通の家にある庭ほどであるが、見事なセンスで花をまとめ上げている。近所との調和も忘れていないのだろう。イングランドに花が多いのは、気候のせいも大いにあるだろうと思った。5月ごろから咲く花が9月の終わりになってもまだ咲いている。盛りのときとは色も変わり、姿も衰えているが、それはそれで、いい風情なのである。盛りを過ぎた花と、今を盛りの花がうまく混ざり合って、絵画的な色彩となっている。貴婦人の衣装を思わせるようなところもある。
一緒に来た日本人で教会に入ったのは私と句美子のほかは、二人ぐらいであったと思う。時計の仕掛けを硝子張りで見せていた。教会の小さな墓地をよぎると出口があるのでそこから出て、十歩ほど歩き車の通る道に出た。出たものの、そこは、マナーハウス(領主の館)の敷地のようであった。緑の芝生がきれいに手入れされて広がっている。パラソルがひとつ立ててある。その敷地を囲んで農機具のようなものを置いている家が何軒があったが、どうも芝刈り機のようである。マナーハウスには、宿泊客以外は入れないが、しかし、どこから出ればよいものか。うろうろしているうちに、マナーハウスの敷地からは出たようだ。喫茶店も家具屋もあるがしずかで、歩いている住民らしい人はだれも見かけなかった。車は通って行ったが。家は思ったより小さく、日本の家がウサギ子屋と笑われるほどでもないと思えた。しかし、丁寧にしずかに、おろらくこころ豊かに暮らしている。カッスルクームはバイブリーよりもしっとりと落ち着く谷の底にある町であった。
○バース
世界遺産に登録されたバースは、ローマ浴場跡が楽しみ。ヨーロッパのあちこち、イギリスにも、ローマ人がやってきた遺跡がある。バースは、予想以上の大きい都会であった。バースの町は、中世の作家チョーサーによる「カンタベリー物語」に出てくるバースの女房で初めて知ったのであったが、陽気で善良な(good)な女房である。その印象そのままに陽気な街でミュンヘンの町の雰囲気もあった。教会の広場では楽器を演奏したり、歌ったりして人を楽しませていた。人が入れ替わり演奏するのである。どら焼きのよう大きな金属で出来た楽器を二人で演奏していた。それを小学生が教師と親に引率されて見に来ていた。バースではローマ時代の浴場があるが、見学すると1時間以上かかる。一部分見えるところがあるのでそこから浴場を見物した。黄土色の石、まさに「ローマの色」の浴場の白緑色の水がたまってあった。現在は使用されていなく、温泉水だけを売って飲ませている。あまり美味しいものではないらしい。1時間以上かかるところを15分ぐらいで済ませたので、句美子と教会とバースの街を見物して回った。教会の内部の建築は垂直様式。真直ぐ白柱が天井まで立って、天井で花が開くようにパッと開いて優美である。柱ごとにそうなっている。見物していると高いところから赤い洋服の老人が降りてきたので、そこから上へあがれると思ったが違っていた。彼女の右手には水差しがあった。花に水を差しに上っていたようだ。教会も人々の奉仕で賄われている。入場料は無料だが、寄付を2,5ポンドほど求められる。女性の司教?がパンフレットを渡してくれた。
バースの街の繁華街は本屋やファッションの店が並んで、花屋が道にテントをはっている。リューマチの病院があったり、さすが温泉街である。商店街を上り詰めると50メートルくらいは続いている一つの建物があったりする。どれも古く、横道にそれれば、落葉がからから転がり、ろくに掃除のしていないところもある。偶然にも「ジェーン・オースチンセンター」の小さな建物に出くわした。センターといってもショップなのである。入ってみると「自負と偏見」の小説をはじめ、彼女の本を売っている。レースばかりのパラソル。レースの扇も売っている。そこでは買うほどのものはなく、また街をやたらと歩き、教会の塔を目指して、もとの場所に帰った。
▼カッスルクーム
http://homepage3.nifty.com/E-RoseCottage-Garden/page020.html
▼バース:
①http://www.linkclub.or.jp/~kiki/omake/bath.html
②http://www.romanbaths.co.uk/
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★虫籠に風入らせて子ら駈ける 正子
草原で秋の虫を追いかけて、虫籠を持って走り回る元気な子どもたち。そんな様子が軽やかに感じられます。(高橋秀之)
○今日の俳句
涼新た一直線に船が出る/高橋秀之
新涼の季節。港を出てゆく船も、かろやかに一直線に航跡を残して出てゆく。新涼の気分に満ちた句。(高橋正子)
◇生活する花たち「水引の花・吾亦紅・チカラシバ」(横浜下田町・松の川緑道)