俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

3月21日(月)/春分の日

2011-03-21 07:28:07 | Weblog
★春分の日といい空に飛行機音 正子
空に飛行機の音が聞こえ、常とかわりはないけれど今日は春分の日。ようやく寒さもゆるみ始め、桜の開花も待たれることです。(小川和子)

○今日の俳句
湧水の流れに椿一花あり/小川和子
きれいな湧水に一花の椿が落ちてまだ色鮮やかである。水と花のクリアなイメージが美しい。(高橋正子)

○今日は春分の日。彼岸の中日である。俳句の季語では、「彼岸」と言えば、春の彼岸で、秋の彼岸の季語は「秋彼岸」という。季語「彼岸」は、春分の日をはさんだ3月18日から24日までの七日間。寺では彼岸会を修し、先祖の墓参りをする。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、このころから春暖の気が定まる。
 信之先生の彼岸六句を紹介。

   松山持田、臥風先生句碑2句
 わが坐り師の句碑坐り彼岸の土
 彼岸の風吹きゆき句碑の石乾く
 涅槃西風寺苑にいっとき騒ぎて止む
 彼岸の雨去りたり寺苑少し湿らせ
 線香の燃え速し彼岸の風に吹かれ
 遍路杖たてるそれぞれバスの席に

 信之先生は、松山にいたころ、彼岸となると恩師の川本臥風先生の句碑を訪ねることが多かった。

 城山が見えている風の猫柳 臥風

 松山の旧制松山高校のグランドの隅に建っている句碑である。旧制松山高校は、松山市持田にあったが、今は愛媛大学付属小中学校となっている。私が大学に入学した時は、旧制松山高校時代の木造校舎が残され、そこでも講義があった。信之先生はそこの教授であった。

 春分の日といい空に飛行機音 正子

 春分の日といえば、親戚の法事などがよく執り行われ、両親は法事の手伝いに出て、子どもたちは、食事を賄ってもらった。法事の客の礼服に築山の紅梅が色を添えていたことを思い出す。
 今年の彼岸は、東北関東大震災で亡くなられた方は、行方不明者を含め2万人を越し、阪神大震災をはるかにこえる災害である。彼岸にあたって、亡き先祖にお参りするように震災の犠牲となられた方々のご冥福をお祈りする。
 春分の日を挟んだ今年の彼岸は、土、日、それに続く春分の日があり、三連休となった。家には、息子と娘もいて、ゆっくりとした休日である。新聞、テレビ、ラジオ、ネットなどでは、お彼岸の連休といっても毎日東北関東大震災のことで緊迫している。新聞の小記事だが、東京の水道水に微量の放射性物質が検出された。健康に影響ないレベルということである。横浜の水道水は、相模湖から引いていて安全らしい。この放射性物質による汚染は、充分想定したことであってもショックな事件である。信之先生は、3月11日の巨大地震発生、そして、大津波を知っていち早く福島原発からの放射能汚染を危惧していたが、やはりこのような事態になった。そして、日本のリーダーたちの混乱がある。
 私が主宰しているブログ句会では、毎日の投句があるが、日常心を忘れずに、いい俳句を投句いただいている。

 初音して余震の窓を開け放つ/後藤あゆみ
  (高橋正子選評:「窓を開け放つ」になにかしらの安堵がある。「初音」も余震の後だけにうれしい。)

 頂の三角点に蝶降りぬ/多田有花
  (高橋正子選評:世の中あるいは自然界には、説明のしがたいものの良さが多くある。この句もそのひとつ。山頂の三角点に蝶が留まった。敢えて意味づけると、山頂、三角点、三角形の翅。危ういがしかし確かなピンポイント。山頂の春の日の輝きである。)

 揚ひばり榛名の入日まるまると/小口泰與
 (高橋正子選評:「揚ひばり」にまるまるとした入日が榛名を想い起こさせる。いい故郷の風景である。)

 揚ひばり畑ねんごろに打ちにけり/小口泰與
  (高橋正子選評:ひばりが空高く揚がり、のどかな日和。畑の土を丁寧に打ち返す。行いを丁寧にすれば、心の内も平たんになる。また逆も。)

○千葉在住の花冠同人の方からお米が届いた。心配していただき、大変有難く思う。信之先生は、いつものことだが、買占めを嫌うので、買い置きはない。松山に住んでいた以前のことだが、日本の米が店頭から消え、外米を食べた。料理には、苦労もしたが、子どもたちにも美味しく食べてもらった。お米に同封された手紙もうれしかった。この俳句日記の17日を読んでいただいて、「この騒ぎに動じることなく、四季の森公園に行かれたとのこと、大変心強くおもいました。いつもと変わりない生活を送ること、学ぶところ大です。」そして、私たちを見習っていただき、幼稚園児のお孫さんと土手に散歩に行かれたとのこと。小さいこどもに、震災の残酷な光景を見せたり、むやみに怖がらせたりするのは、よくない。

◇生活する花たち「苺の花、黄水仙、パンジー」(横浜日吉本町自宅)

コメント (1)
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