キマグレ競馬・備忘録

競馬、MLB、スポーツ観戦、趣味など気になる事を書いています。

本「厩舎物語」

2011年09月14日 | Book
1980年代末頃の大井競馬場の舞台裏。
華やかな中央競馬と違って、少ない競争馬資源で興業を行わなくてはいけない地方競馬には、いろいろな制約が多く、厩舎で働く厩務員の仕事や生活も大変だったようです。このルポは今から20年以上前のものであり、現在がどうなのかは判りません。しかし厩舎で働くということは、馬という生き物が大好きで世話をすることを苦にしないことや、その馬がレースで好走することに喜びを感じる人でないと続かない世界であることは、今も変わらないと思います。
この本では、そういう地方競馬に関わる人たちを描いています。
地方競馬は現在衰退しつつあります。中央競馬とは違って、なかなか判りにくい地方競馬の裏事情や厩舎運営、厩務員の生活などとても興味深い内容でした。
名馬物語として登場するのは、80戦以上走って1勝しかできなかった普通の馬、ダイキヨヤングの物語です。最初はどこが名馬なのかと思いましたが、厩舎のために黙々とレースで走り続け、勝てなくても多少なりとも賞金を稼いで厩舎を助ける手の掛からない大人しい馬は、厩舎運営には有り難い存在であったようです。時間が経って彼と関わる厩務員との間には、信頼感とか愛情みたいなものが芽生え、彼を特別な存在として見るようになる。レース中の事故で逝ってしまったこの馬と厩務員たちの様子が、著者には印象深かったのかもしれません。
競争馬が経済動物と言われるようになったのは、昭和40年代頃からなのだそうですが、馬の世話をする人にとっては、そういう言葉で片づけてしまうのには抵抗があると思います。
競馬を楽しんでいる自分も、この本を読んでみて、競馬に対する見方が変ったように思います。レースで負ける馬にも「一頭の馬」としての命があり、大切な存在として価値を認めてあげなくてはいけない。馬と厩務員たちの努力があって、競馬というレースが成立しているということを忘れてはいけないと思いました。

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