日々の覚書

MFCオーナーのブログ

本当に変身したいですか?

2008年02月20日 22時29分28秒 | テレビ番組

先日、偶然見てしまった、とあるテレビ番組。恐ろしいというか、悲しいというか、やりきれないというか、とにかく、あまり見ていて気持ちのいい番組ではなかった。

知ってる人も多いと思う。整形希望の女性をスタジオに連れてきて、形成外科医、歯科医、美容師、メイクアップアーティスト、スタイリスト、といった、いわば美のエキスパートたちが、彼女たちを美しく変身させる番組だ。で、僕が見たのは、そのスペシャルという事で2時間枠だった。見たのは途中からだったけど^^;

番組では、その女性たちの変身前、数ヶ月後の変身後を見せる。その、変身前がなんというか、壮絶だ。失礼ながら、決して美しくはない女性が、この容姿の為にどれだけ周囲から冷たい仕打ちを受け、今までどれだけ悲惨な人生を歩んできたか、涙ながらに告白する。そして彼女たちは訴える。

「せめて普通の顔になって、普通の人生を送りたいんです」

そこで、司会者が「覚悟は出来てますね。変身しようという気持ちに迷いはありませんね。」と問いかけると、彼女たちは「決して後悔しません」と答え、先程の美のエキスパートたちの前に連れて行かれて面談を受ける。エキスパートたちはどういう方法で彼女たちを変身させるかを協議する。

見ている僕は、唖然とするばかりである。確かに、世の中には美人ばかりではない。容姿に恵まれない人もいるだろう。しかし、その容姿のせいで、いじめられ、友達も出来ず、働くことさえ出来ず、いつも下を向いて歩き、孤独な日々を過ごしている人がいるとは...現代でも、こういう事があるなんて思わなかった(ヤラセでなければの話だが...と、つい考えてしまうのも悲しいが)。「せめて普通の顔になりたい」なんてやるせない言葉だろう。

そんな女性たち、とにかく自分を外側から変えたい、人生やり直したい、という思いで、番組に応募してきたのだろうけど、ものすごく勇気のいる事だと思う。スタジオでは、はっきり言って晒し者だ。わざと醜い部分を強調してデフォルメしたのでは、と思わせるVTRをイヤというほど流し、耳を覆いたくなるような体験談をこれでもか、というくらい喋らされる。そして、それをブラウン管を通じて、日本中の人が見ているのだ。消えてしまいたい心境ではないだろうか。実際、見ていた僕の方が、テレビを消したくなってしまった。そんな思いをしてでも、彼女たちは自分を変えたいのだ。

一部の人を除いて、誰しも「もっと美しく生まれたかった」と、内心思っているはずだ。僕だってそうである。けれど、実際に整形してみましょうか、と言われると、多分尻込みすると思う。自分の顔にメスなんて入れたくない。それに、たとえ美しくなったとしても、鏡を見る度に違和感を覚えるだろう。ほんとにオレなのか?なんて。なんだか、精神は変わらないのに、顔だけ変わってしまうと、心のどこかが変調をきたしそうな気がする。変身したい、とは思っていても、いざその時になると、決心がつかない。ほとんどの人がそうではないのか。

かように、整形手術を受ける、というのは勇気のいる事なのだと思う。強靱な意志が必要、とでもいうか。それに、手術を受ける決意をしたとしても、大抵の人はこっそりと病院の門をくぐる、のがせいぜいではないか。テレビに登場して、変身したいんです、なんて晒し者になってまで訴えるなんて出来ないと思う。僕には耐えられない。スタジオから逃げ出してしまうだろう。

こうした試練を耐え抜き、女性たちは手術を受け、さらには髪型・メイクも変えて、変身する。実際、見事と言うほかない。最先端の技術は実に素晴らしい。大げさでなく、顔を作り替えてしまうのだ。全くの別人になってしまう訳ではないが、でも手術前の面影がほとんど残ってない人もいた。現代の技術をもってすれば、顔を変えて別人になる事は、決して不可能ではない。

しかし、こんな事すると、金かかるんだろうな。出演した女性たちは、費用はテレビ局持ちで、手術を受けられるのだろう。当たり前だ。あんな屈辱的な仕打ちに耐えているのである。逆に言えば、それだけの見返りがあるから、晒し者になるのも耐えられた、という事なのだろうか。

変身した女性たちは、見違えるような姿をスタジオで披露する。ゲストの芸能人たちも感嘆している。もちろん、全ての女性が美しくなる訳ではない。が、初めに吐露した、「せめて普通の顔になりたい」というのは、完全にクリアしている。その女性たちのほとんどが、なんとなく表情に乏しく、ただ笑ってるだけに見えたけど、おそらく変わってしまった自分の顔にまだ慣れてなくて、上手く表情をコントロール出来ないのではなかろうか。でも、すぐ慣れるのだろうね。

それにしても、この番組の意図はどこにあるのだろう? 最新の形成外科技術をアピールしたいのか。容姿で悩む女性たちに勇気を与えようとしてるのか。それとも、少々容姿が劣るだけで、悲惨な人生を送らねばならない理不尽を世間に訴えようとしてるのか。まぁ、どれもアリだろう。けど、この番組を見ていて感じるのは、真剣に自分を変えようとするなら、どんなに恥ずかしい事でも耐えなければならない、ということ、そして、高度な技術を享受するには、相当な金がかかる、ということ。どちらも、普通の人には無理な相談だ。本当に、容姿に悩む女性たちに勇気を与える事が出来るのかどうか、はっきり言って疑問。

そんな訳で、ある意味見れば見るほど、やりきれなくなる番組だった。見事に変身した女性を見ても、不思議と感動はなかったな。もし、この女性たちが、変身した事によって、幸せを掴んだりすると、余計にやるせない気持ちになるのだろう。

二度と見たくないです。自分のイヤな部分を暴かれたように気分になるし(笑)

コメント (12)
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