イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

義理と人情

2008年02月22日 23時04分32秒 | Weblog
終電の阿鼻叫喚の地獄絵に開高健をむさぼる若者

(解説)終電間際の電車に乗った。金曜の夜、そこは阿鼻叫喚の世界だ。一週間の辛い戦いを終えた人たちの、人いきれでむっとする。酔っ払いが二人(僕ではありません)、床にへたり込んでいる。もう完全に、あっちの世界にイってしまっている。かなりの泥酔だ。今にも吐きそうなので、皆一歩でも彼らから離れようとしている。だけど、電車は込んでいるし、動きたくても動けない。僕はへたり込む二人に挟まれるような位置にいる。同じ位置に、眼光の鋭い若者がいた。文庫本を熱心に読んでいる。酔っ払いが無意識に彼の体に触れる。でも彼は動じない。怖い顔をしているけど、嫌がるという風ではない。透徹したまなざしで、酔っ払いをみつめている。なかなか肝のある男だ。彼は、ちょっとしたオーラを放っている。きっと何かを大きく心に秘めている、そんな若者に違いない。そんな彼が読んでいたのは、開高健の『パニック・裸の王様』だった。いいね。ぴったりだ。東京で、どこまでも夢を追いかけろ、もっといろいろ読め、そしてもっとエグイものを見ろ。いい彼女を見つけろよ。おじさんは応援してるぞお前を。と、そんな風に年上風吹かせている僕がそのとき読んでいたのは、みのもんたの『義理と人情』だった(本の「格」ではちょっと負けているかもしれないけど、これも結構面白いぜ)。それから、酔った二人にもエールを送ろう。あんたたちは、一週間前の自分だ。生きろ、死ぬな。がんばって立ち直れ。俺も、立ち直る。人生は、義理と人情なのだ。

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『ポッカリ月が出ましたら』キョンナム
『へらへらぼっちゃん』町田康
『恋愛中毒』山本文緒
『義理と人情』みのもんた

を購入。

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