学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

崩れない教室

2012年11月09日 | チャレンジ英語教室(読み書き困難)

「どうやって教えたら良いのですか」

「クラスが集中できない。まとまらない。」

 

という相談が多いです。

 

私は、学習障害、発達障害の子どもたちへの「指導法」について

関心があってこの分野に入りましたが、

実は、クラスが成立するためには、

指導法以前に、クラスコントロール、クラスマネージメントが

しっかりしているというのが条件です。

 

クラスコントロールというと、

先生が指導権を握って引っ張っていく!というイメージがありますが

私は少し違うと思っています。

 

クラスを、

「子ども全員が心地よく勉強できるような環境にする」

ことに心を砕いています。

 

例えば同じADHDタイプの生徒が入るグループでも、

先生によって、問題行動が大きくなったり、小さくなったりということはお気づきでしょうか。

その子はいつも問題を起こしているのではありません。

与えられた環境によって、すごく変わるのが、

学習障害、発達障害の子どもたちなのです。

 

集中できる環境を整えれば、落ち着いてしずかに勉強できます。

これは、「うそーあの子が?」って思うかもしれませんが、

本当です。

ぜひ、その大切さを知って下さい。

教え方以前に、教室の雰囲気と先生の声かけ、

生徒への配慮で、グンと教室全体が変わります。

 

でも、どうやって変えたら良いのでしょう。

いくつか、チャレンジで気をつけているポイントをご紹介します。

 

1.音 

崩壊寸前のクラスは、全体的にいつも、ざわざわとした感じです。

子どもがピシっと集中してしーんとなる瞬間が少ない。

いつも誰か(先生も含めて)声を上げている、音がなっている、物が動く音がする。

 

まず、極力、無駄な音を消しましょう。

これは、先生の怒鳴り声も含めます。

「○○くーん、△でしょう?早くこれやりなさい!」「●くん、何やってるの!?」

といった、叱責の声は、クラス全体に影響しています。

先生のいらだちや落ち着きのなさは、

そのまま、クラスの雰囲気になります。

先生の声が大きいほど、子どもの声も大きくなります。

 

もちろん先生が怖い声で脅すと、声は小さくなりますが、

脅かしてばかりの教室に、したくないですよね。

 

発達障害の子どもたちは、そうでなくても環境にとても敏感です。

先生の感情にも柳の葉のように、ふらふら左右されてしまいます。

先生が落ち着いて、ゆったりと、子どもが安心できる居心地の良い気持ちでいればこそ、

子どもが「ここは安心していいんだなあ」と、

緊張度が下がります。

この、落ち着いた、テンションの下がった状態をキープします。

(テンションを上げるときは上げるときで、ちゃんと区別します)

 だからといって、くら~い、雰囲気じゃなくて、

”楽しくて、緊張度の低いクラス”という感じでしょうか。

先生はニコニコしててくださいね。

 

 

 2.待たせない 

不注意や多動のある子は、待つのが苦手です。

よくあるのが、

みんなに問題を配ってさせる活動。

これは、早い子と遅い子で、終わる時間が違います。

早い子は終わると、手持ちぶさたになります。

 

次にあるのが、先生が一人ずつ指導していくやり方。

順番待ってる間にすることがなくなります。

 

これを、させてはいけません。

 

それまでせっかく集中していたのに、待つ時間が長いほど、

子どもの心がどこかに飛んで行ってしまい、

引き戻すのが大変~!!になります。

 

早い子遅い子がいるのは当たり前です。

 

ならば、できるだけ遅い子を待ってあげましょう。
(わたしは、せかすのが嫌い・・・。
でも、一応「●分まで」という区切りは必要ですね) 

 

その間、早く終わった子が、取り組める課題を与えましょう。

 

それを、「見直ししなさい」だけではなくて、

 

「おっ、早く終わったね!
すごいやん。じゃあご褒美にこのパズルやってみる?

 どっちか選んで良いよ」

 

など、ちょっと楽しげな学習パズルや、その子の好きそうなプリントを

「ごほうび」として取り組ませる方法もありますよ。

 

そのときに、子どもは「自分で選ぶ」ほうがしっかりやります。

 

先生が、「終わった人は、次にこれをしなさい」

という場合と比べてみて下さい。(実際やったらわかります)

絶対に、自分で選んだプリントの方が、集中します。

だから、選択させるのです。

(この、選択の大切さは自律学習にも欠かせません)

 

子どもが一度ざわつき始めたら、

静かにするまで、またとても時間がかかります。

わたしはこれは、無駄な労力だと思っています。

 

だから、ざわつかせない。待たせない。

先生が静かに落ち着いて話す。

そのための準備がすごく大切だなあ、とチャレンジ教室で実感しています。

 

3.タイムマネージメントと”終わりの状態”

先生がしっかりと、スケジュールを子どもに伝え、同意を得ていくことが

集中につながります。

子どもは

「今、何するのか」

「次、何するのか」

「次のために、今、何をがんばればよいのか」

 

の3点を知らせておけば、

自分で自分をコントロールしようとしてくれます。

 

まずは、

「これから、これをします」

です。

ホントは小学校中学年以上なら、もっと言葉を足してやります。

「これはね、こういう風に大切なんだよ。だから、これをやるんだよ」という主旨のことです。

 

子どもは、

「なるほど、この目的でこれをやるんだな。ならやろうか」と思って取り組みます。

 

次の活動に移る前に、

「これが終わったら、これをやるよ」

 の一声をかけます。

 

もしできるなら、

「あと◎分で、次の活動にうつるよ」

と、心の準備をさせます。

すると「ああ、じゃあそれまでに終わらせよう」など、今やっていることに、
いっそう集中します。

 

次に、

「はい、終わりだよ」

 

と終わりをしっかり伝えます。

 

そして、

「終わりとはどういう状態か」を先生がきちんとルールとして決めているのであれば、

その状態になるのを待ちます。 

これはとても大切です。

 

終わりとは、何ですか。

 

活動をやめて、手を止めれば終わりですか?

それとも、鉛筆を筆箱に入れる?

プリントを前の人に渡して、机の上には何がある状態にすること?

おしゃべりしていてもいいの?

それとも、口は閉じて、どういう状態になることが、終わりの状態ってこと?

 

これが甘いと、ガサガサしたまま次に進み、
次の活動が集中力が欠けたままになります。

だから、

絶対に、”終わりの状態”に、なるまで、待つ。


そして、


終わってないうちに、次を始めない

 

これは、ほんとう~~~~~に大切です。

 

クラスの集中を、崩したくないです。

崩すとホントに戻るのは難しい、何度も言いますが、崩さないのが鉄則です。

 

そして、終わった状態に全員がなったら、

「うん、みんな、ちゃんと終わったね(←終わる状態の事を具体的に言う:机のものを片付けたね、など)よし♪♪」

とほめましょうね。

 

「◎◎くん、まだなの~!」など、叱ってはいけません。

叱る声で、子どもがまた、集中力を失うから。

 

基本的に、しずかーに先生が「待つ」のです。

 

待つのができないなら、先生が手伝うのもありでしょう。

ですが、子どもに自立してほしければ、

がまんして、待つのです。

責めたりしてはいけません。待ってやってください。

その子も一生懸命なのです。

 

もしみかねるようなら、「◎◎くん、手伝おうか?」と声をかけてください。

「うん」といったら手伝いましょう。

「いらない」といったら、みんなで待ちましょう。

お友達が手を貸すこともありますよ。

先生が、ニコニコ静かにして「終わり」の状態をキープしていたら、
他の子も静かに待ちますよ。

「みんなえらいな。終わったらまとうね」

ほめながら、待ちます。

 

最初は、「片付ける」ということすら、ものすごく大変な子がいます。

ノートを落とし、拾おうとしたら、鉛筆を落とし、

鉛筆を拾おうとしたら、筆箱も全部落としてしまい、

バラバラ床に物が散り・・・なんてありますね。

 

でも、「焦らなくて良いよ」と、待ちます。

 

 

片付けるだけで3分かかってたら、

「こんなに時間をかけてしまってはいけないのでは」と思うでしょう?

 

でも、それは先生だけが思ってることです。

先生だけが「早く早く」と焦っているのです。

 

だけれども子どもは、
「ああ、先生は、待ってくれているんだ」って安心します。

その安心感が、クラスの雰囲気を作っていくのです。

 

もし先生が焦ると、クラスの子はそれを感じます。

そして、遅い子をクラスの他の子が責めるようになるのです。

助け合いではありません。子どももイライラし始めるのです。

わかりますでしょうか。

 

 

子どもを焦らせて、次の活動に行くことに、

どんなメリットがあるのでしょうか・・・。

授業の活動が先生の予定通りに終わることですか。

それは、一人の子の自立や、自尊心や、クラスの雰囲気を崩してまで

進めないといけないことでしょうか。

 

 

 

これは、先ほどの「待たせない」と矛盾しているように見えますが、

それとは違って、待つ目的がはっきりしています

 

先生はみんなが終わるまで次には進まないよ、というメッセージです。

きみが終わるのを先生はこうやって待ってるよ、

大丈夫、大丈夫!

というメッセージです。

 

たった3分でしたら、わたしは待ちます。

「大丈夫だよ、焦らなくていいんだよ、落ち着いて。えらいぞ。」

と心の中で応援します。

 

こういう子どもたちは、常に親や他の教師からせかされ、焦らされ、

叱られることになれているので、「失敗する!」と思うと緊張しますが、

「失敗していいよ、ここは叱らないよ」、

とわかるとリラックスして集中します。

片付けにも、集中してくれるようになります。

 

これも不思議なことに、3分かかっていたのが、だんだん短くなります。

最初に時間がかかるのは、当たり前です。

でも先生が子どもの成長を信じることで、

子どもが変わっていくのだと思います。

 

実は、もう一歩、先生が工夫できることがあります。

もたもたなってしまう子の、もたもたの原因を取り除いてやればいいのですよ。

これこそ大人の出番です。

筆箱を、鉛筆がいれやすいものに変えるとか、

カバンにしまうのであれば、カバンを一回り大きい物にするだけで

片付けが楽に、早くなります。

片付けの手順を紙に絵で描いて、机にはってもいいです。

あるいは、「この箱に全部入れたらよし」。

↑あっという間に片付け完了。

 

そのうち、「終わり」というと、子どもは静かになります。

終わりの状態を学んだら、そうなります。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回は、3つだけ書きました。

 

この3つ、どれが欠けてもチャレンジ教室は崩壊してしまいます・・・。

それは指導法が素晴らしくて、教師がどんなにがんばっても、です。

 

クラスの状態を保つことこそが、

学習に向かう最低条件です。

 

これを甘くみてはいけませんよ~~~。

まだまだクラスの環境づくりにとても力を入れています。

 

知らない人がぱっと見たら、

チャレンジ教室は「普通のあたりまえの教室風景」に見えるでしょう。

でも、いろいろな配慮をして、その状態にしています。

声かけや、課題の工夫も大きいです。

また書きます。

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2012-11-22 08:29:55
すごくなるほどと思いました。少しずつ取り入れてみたいと思います。次の記事も楽しみです。
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unknownさん (まとりょん)
2012-11-22 10:20:37
そう言って頂けると嬉しいです。ありがとうございます。
返信する
参考になります。 (あいぽん)
2012-12-03 22:34:48
初めまして。現在、学習障害の生徒(小5女)の家庭教師をしている者です。(学校での検査をうけておらずどういった障害かの詳細を知らない状態です)
書かれている内容に目からウロコでコメントさせていただきました。
教えて半年になりますが、ざわつきはじめると、毎回怒鳴って怒らないと集中しない状態で、さすがに堪忍袋の緒が切れて先日は授業を中断して説教をした次第です。
本人もいけないとわかっているのに、どうすればいいのかわからないと泣き、私に非があるのは分かっていてもどうすればいいか途方にくれていました。
しかし、これが彼女の普段の姿だとわかれば、対策がとれます。
書かれている内容を参考に、これから取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。
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あいぽんさんへ (まとりょん)
2012-12-08 21:25:22
参考になれば嬉しいです。

わたしも失敗の連続で、いまも試行錯誤しています。

いろんな先生方の本を読んだりしながら、自分にあった指導スタイルと、子どもに合わせた環境作りをつくって行ければ良いと思いませんか。

ですが先生が怒ったらこれはもう崩壊しちゃいますので、怒ってはいけません・・・。「大変な子」を助けるよ、というのが先生の風格といいますか、安心してね、のメッセージです。
先生は子どもにとって、偉くなくてもいいし、頼りなくても良いので、一番安心できる人でありたいと思います。
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