学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

「小学校の英語授業、中1の8割読み書き希望 文科省調査 」について

2015年07月05日 | 日記

昨日のニュースで、

小学校の英語授業、中1の8割読み書き希望 文科省調査」

というタイトルで、

中学1年生の8割が小学5~6年生の時に受けた外国語活動の授業で

「もっと英語の読み書きをしたかった」と考えていることが3日、文部科学省の調査で分かった。」

という報告がありました。

この結果に対して今後、

「小学生のうちにもっと読み書きをしたかったんだ。じゃあ、やりましょう」とばかりに、

中学校の指導そのままに「単語の丸暗記」「本文の丸写し」などを

子どもたちにさせる指導につながるのではないかと心配しています。

 

記事では、千葉大の某准教授が

「楽しむだけの英語では小学5~6年生の知的好奇心に対応できない」

と指摘しているとありますが、

この調査の全体を見たわけではないのですが、

いくつかの質問のうち、「楽しいかどうか」に関する質問では、

小学5~6年生の70.9%は英語が「好き」または「どちらかといえば好き」と答えていますが、

中学1年で計61.6%に下がり、中学2年では計50.3%にまで落ち込んでます。

 この数値からでは、子どもたちが「英語の読み書きをしたい」と選択したその理由が、

「知的好奇心を満たしていない」だからであるとの関係性は見えません。

(逆に、中学校での数値の低下が「知的好奇心」と

どういう関係があるのかを聞きたいくらいです)

この記事で発表されていない別のデータがあるのでしょうか。

そうでなくては、単に今の小学校外国語活動の表面的な批判にしか見えません。

 

さらに、

「読み書きでつまずく中学生を減らすには、小学校と中学校の連携が必要だ」とありますが、

この調査はそもそも読み書きのつまずきを焦点にあてた調査には見えません。
 

それなのに、「読み書きでつまずく中学生」と小学校で「読み書き」を学習することの関連性が
 
当然あるかのようにここで述べてられていることには、違和感を感じます。
 
 
 
 

記事では、

『中学1年生に「小学校の外国語活動でもっと学習したかったこと」を複数回答で聞いたところ、「英単語を書く」が83.7%で最多だった。「英語の文を書く」「英単語を読む」「英語の文を読む」の3項目も8割前後となり、読み書きを希望する生徒が多かった。』

とあります。

この設問はあくまでも、「何を学習しておけば良かったか」であって、

中学生が感じている学習上の問題との関連性は、問うていません。

もし100歩譲って、この調査で「中学生の読み書きの大変さ」について調査する目的があるのだとすれば、

当事者である中学生に、つまずきの解消方法を尋ねるような設定はおかしいのではないですか。
 
 

中学1年生の多くが「中学校での英語の読み書きの指導が十分でないと捉えている」。

 

そこまではわかります。

 

ですが、その問題解決のために「小学校でやりたいと言ってるのだから、読み書きをやればよい」

という結論に達するのは、指導側の責任を子どもに被せるに近い印象があります。

 

 

より見逃せないことは、

つまずきの原因が、「単に時間をかければ解消するようなことなのか」

(つまり前倒しすればできるようになるのか)という、非常に基本的な問題です。

 

 

BenesseのH24年の参考データですが、

中学生に「英語が得意か・苦手か」と問うた設問では、

43.9%の生徒が「やや苦手」「とても苦手」と答えています。

中学1年生だけを見てみても、

「英単語を覚えるのが難しい」(62.9%)、

「英語の文を書くのが難しい」(63.6%)

「文法が難しい」(70.1%)と軒並み高い数値を示しています。

(これらの数値は高校でさらに高くなります)

一般的に読みの発達から見ても、

文法というのは、単語の知識があることが前提です。

そのため、「文法」だけを個別に切り離して考えるのではなく、

それ以前の単語の読み書きのつまずきと関連していると考えればよいと思います。

そして、もし「読み書きの練習時間が増えれば、読み書きでつまずかない」のであれば、

高校に進めばこうした問題が減少しているはずですが、

そうではありません。

 

こうしたデータからは、中学生での英語でのつまずきは、

決して経年的に楽観的に変化するというものではなく、

指導が小学校に前倒しになったところで容易に解消されるものでもないのではない、

という仮説も成り立ちます。 

 

 

「小学校でやっておけばよかった」は、あくまでも、

今現在のしんどさについての把握にすぎないと謙虚に受け止めるべきで、

「小学生の時にやっておけばよかった」ことを例え小学校で実施しても

その困難が消えるかどうかすら何も一切わかっていないのだ、という

目の前の事実を無視してはいけません。

 

 

「単語が読めるようになりたい」

「文章がすらすら音読できるようになりたい」

が実現できていない現状と、その原因から検証しなおす必要があるのではないでしょうか。

 

 

小学校で読み書きを導入するのならば、

せめて、どのような内容の指導が、どういったつまずきの軽減につながるのかといった関係性を明らかにし、

実証的な検証のもとカリキュラムや指導につなげていく視点が必要です。

 

アルファベットが読めないからアルファベットの指導、

単語が読めないから単語を読む練習、

スペルが覚えられないからスペルを書く練習を増やしたところで、

読み書きの発達について理解し、そのニーズを満たしていなければ、

それらのスキルは身につかないのです。

 

なんだかとっても残念な記事で、

これからの日本の英語はまだまだ大変だなあと感じました・・・

 

 


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2 コメント

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悩んでいます (ともかあさん)
2015-07-05 15:32:33
はじめてコメントします。
最近こちらのブログを知り読ませていただいています。
相談にのっていただけますか?
私の子どもは中学2年男子です。少々学習障害気味です。気味と言うのも、おかしい?と感じているのは殆ど私くらい…。病院で検査をしてもはっきりと障害が発見されることはありませんでした。
ですが、文字がなかなか覚えられず、英語となると尚更でした。アルファベットの名称と形、読み、更にスペルを覚えなければならないので最初は辛かっただろうと感じています。
今は、0点でもいい、学校へなんとか通っていてくれればと考えています。
難読障害の子どもの学習向上に何か良い方法、教材、場所等、ありましたら教えてください。
PS
おかしい?と感じているのは私くらいと書きましたが、一年に一回会う言語指導の先生には難読障害ではないか?と言われます。
それに関しても、なにか何処か良い相談所等ないか知っていれば教えていただきたいです。
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ともかあさんへ (村上)
2015-07-06 19:08:06
そうですか・・・お母さんの勘は大事になさったほうがよいかなと思います。一生懸命がんばっているのに、なにかおかしい、と感じるのでしたらやはり調べてもらうほうがすっきりするかもしれませんね・・。

もしよろしければ直接メールを下さいますか。
こちら私のHPになります。そこからどうぞ。
http://kayokobe.jimdo.com

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