学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

特別支援の視点を取り入れた英語指導のために知っておきたいこと。

2012年04月19日 | 特別支援教育について

前回のシンポジウムでもリクエストが多かったのが、

「指導法について知りたい」というものでした。

そのほか、「何から勉強したら・・・」という声もありましたので、

今回、思いつくことを私の視点から、

簡単にまとめてみたいと思います。

 

その1

 

わたしが数年かけて、わかった中で一番重大なことを、お教えします。

 

 

なんと、

 

 

日本には、

 

 

「特別支援の英語指導」を実践している先生は、


ほとんどおりません。

 

これを読んでいる


あなた自身が、パイオニアだという事実。


私たちの前に道はない。私たちの後ろに道ができる。

という現実です。

 

一人の先生がひとりぼっちで教室でがんばるだけでは、

後ろに道はできませんね・・・。

 

私たち教員が、同じ「英語を指導する教員仲間」という意識で、

知恵と情報と経験を共有し、積み重ねるという過程を経なくては、

泡のように消えてしまいます。

 

そして、誰かに知恵をもらうのを、待たないでください。

 

ただ待っていても、万能薬や、どの子にも効くアドバイスは、持っていません。

マニュアルは、ありません。

 

その代わり、わたしたちには、

目の前に子どもがいるじゃありませんか。

 

子どもたちこそが、私たちに一番大切な情報を教えてくれる、”先生”なのです。

 

先生が「これ、いいやん!」と思ったこと、

先生が、「こういうタイプの子には、これは無理」とわかったこと、

そういうことを、積み重ねていくことこそが、

後に続く先生のために

子どもたちのために、有益な情報となっていくのです。

 

子どもは、

先生がどんなに下手でも、

どんなに間違った指導をしていても、

決して、先生のやり方を責めません。



ありがたいことです。



ほめられると喜ぶし、

馬鹿と言われると悲しみます。



年齢は幼くても、人格も、プライドも持った人間です。



本当は、個々の個性に合わせた適切な指導が存在しているのに、

それを知らない教員を、

責めることは決してありません。

 

 

それを「当たり前」だと思っている教員は、
傲慢だなあと思います。

 




子どもが勉強ができないのは、

適切な指導がなされていないから に他なりません。

 

こっちは「教えてるつもり」なだけで、

相手が全然、「学んでいない」事実に気づかなくてはいけません。

 

 

 

 

「教えたのに、覚えてない」のは、

決して子どものせいではない

 

それを忘れず、

子どもたちの信頼に応えるためにも、

未熟さを許してもらえることに感謝しながら、

教師が勉強をしていくしかないのだなあと思っています。

そうした教員側の意識の差が、教育の質の差になっていくのでしょう。 

子どもは、世界どこでも同じです。

 

 

その2.

「発達障がい」、「学習障害」の違いは大切です。

同じものだと思っている人が多いように感じます。

そこで、わからない言葉がたくさん出てきます。

障がいの定義ですから、法律ももちろん出てきます。

「どういう意味かわからない」と悩む生徒の気持ちがわかります・・・。

 

その3.

「読み書き」がなぜ特に難しいのかについて、

脳の情報処理プロセスを知っていると

子どものつまずきの箇所が、「これは、聞く力に関係しているのかもしれない」

など、なんとなく推測できるようになります。

特に、「ディスレクシア」について調べると、色々詳しく出てきます。

この辺になってくると、一人で本を読んでいるだけでは

専門用語(に見える)言葉の多さにギブアップしそうになるので、

セミナーに出かけましょう。 

読み書きや、学習障害のセミナーなど全国で開かれています。

関西では、LDセンターが有名です。

 

その4.

上と関連して、WISC-IVとか、KーABCという知能検査があります。

これは、子どもの学び方を知る、情報のヒント!です。

そして最低限、情報の処理のタイプについて知っておくと、

「こういうタイプの子は、これは苦手だろうな」

と、推測できるようになります。

IEPを作成するときにも、役に立ちます。

(ですが子どもはすぐに変化するので、

古いデータを信じすぎてはいけません。)

学習障害や発達障害関連の用語になれてくると

いろんな本への理解が深まってきます。

 

自分はどうなんだろうと考えたり、得手不得手と照らし合わせて

「そういえば!」と思い当たったりします。

 

その5.

突然飛び出す、うろうろするなど、行動の問題については、

応用行動分析の本は、ヒントになると思います。

また、作業療法士さん(OT)が学校に来られていれば相談して下さい。

すごく具体的なアドバイスをもらえることと思います。

応用行動分析という言葉が難しそうですが、 

子どものしつけにも生かせるし、

その場しのぎではなくて、

なぜその子がそういう行動を取るのかを分析することで、

 

問題の解決につながる方法です。

 

「わー、子どもをしからなくてすむ!

 日常でも使えるわ」と思いました。

 

その6

「なんかこの子、読み書きが苦手っぽい」と思ったら、

多くの場合、「見る力」にも問題を抱えているケースが多いです。

ビジョントレーニングをすることでものすごく見え方が改善することもあるので、

なるべく視機能の専門家(オプトメトリスト)につないで下さい。

 

また、言葉の専門家は、言語聴覚士(ST)さんです。

もし学校や自治体の相談室でそうした専門家がいれば相談して下さい。

身近に相談できる人がいなければ、

私でよければ相談して下さい。

 

専門家の人は、たくさん事例を知っているので

先生が一人で悩んでいる問題の原因を「これじゃないかな」と

ぴたっと教えてくれます。

お医者さんのようなものです。 

その処方箋は、先生が考える(←当たり前です英語指導でお給料頂いてるんですからとしても、

原因がわからなければ対処しようもないので、

専門家の診断や助言は、とても助かります。(私の経験です)

 

その7

学び支援のHPに、マイ本棚をアップしています。

特別支援、学習障がい、協同学習の手法や、多感覚学習法についての本もあります。

色々な指導方法は、国語の特別支援関連の書籍にも多くあります。

国語と英語は、基本的につまずくところが同じなので

すでに多く出ている参考書は英語指導に応用できます。

 

 

その8

学習障害の子がつまずく原因の多くが文字と音の結びつきにあるとすれば、

フォニックスの指導は、やってみる価値があります。

難しく考えず、すべてのルールを教えなくてもいいので、

まずは、「音の足し算」をすれば読めるようになるよ、

というところからスタートすればいいと思います。

(で、実はこれは、ほかの多くの他の生徒にも有効な指導です)

その6で、処方箋を考えるのは教員、と書きましたが、

手持ちの薬が一種類(つまり教え方のバラエティーが少ない)のは

 

「どんな腹痛にも正露丸!」

 

と言い切るのと同じです。

 

欧米では、今は一人の教師が色んなセミナーや勉強会に参加し、

いくつもの指導法やアプローチを身につけています。

 

様々な子どものタイプに合わせた指導をするには、

認知情報処理の違いのほかに、

「この子には、こういう風に。あの子には、このツールがいい」

など、使い分けたりすることができれば

先生方の英語の知識と合わせて 鬼に金棒 です。

 

黒板を使った一斉指導でも、プリントや、

指導の順序などで工夫はできます。

 

「こういう風に教えることもできる」と知っているだけでも、

全然違ってきます。

 

 

その9

あまり知られていないことですが、日本の児童英語指導はかなり進んでいます。

もともと小さい子どもは、音楽や絵本、実物や映像、ダンスなど、

あらゆる感覚を使った、”多感覚学習法”でないと学びません。

(それと対極にあるのが、座ったままで聞くだけの、紙と鉛筆だけの二次元の学び方です)

幼児教育に英語を取り入れた形の児童英語の指導は、

まさに、日本の子どものための多感覚学習法を実践しています。

フォニックスはもちろん、

ドラマや、英語落語や、BBカード、文法九九、楽しいチャンツなど、

すごく工夫したものもあるし、種類も多く、

とにかく子どもの目線に立った指導が徹底しています

児童英語の実践から、中学校や高校英語で取り入れられることは

多いのではないか、と思っています。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その9まで書いて、力尽きました。

その10が思いつかないので、そろそろ寝る時間みたいです。

おやすみなさいー

 

 


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
多感覚学習法。 とてもためになりました。 (Chico)
2016-05-19 15:13:24
多感覚学習法。 
とても参考になるブログで、ありがとうございます。

私は、翻訳業と並行してアメリカでピアノを教えています。

じっとしていられない子供たちを教えているので、多感覚学習法は、”http://blog.musicteachershelper.com/do-you-teach-students-with-adhd/”を読んで取り入れていましたが、日本語でそういう言葉があるのだと知り、検索できる光が見えました。ありがとうございます。

文字と音の結びつきの話でしたり、見る力についてなど、多角的に解決方法を見出す心持ちも勉強になりました。

ユニバーサルデザインという検索語から辿り着きました。

貴重なお話をありがとうございました!
返信する
chicoさん (村上)
2016-05-19 23:03:04
ありがとうございます。

アメリカですとADHDは薬で抑えるというのが一般的になっているのかという印象です。フランスでは逆にそのような診断が減ってるとかいう情報も聞きますが、現地の本当のところはどうなのだろうと思っています。
子どものあるがままを受け入れ、その子が社会で幸せに生きていけるように大人が尽くすのは当たり前のことかと思います。未来は子どもたちの手にありますものね。私たち大人の現在は私たちの責任ですが、子どもの未来は子どもが作れるように、応援できる姿勢でいたいなあと思っています。ですがとにもかくにも力不足なのでこのような発信でぼちぼちやっています。
返信する
お返事ありがとうございます! (chico)
2016-06-13 16:30:53
お返事いただいて、ありがとうございます!
嬉しかったです。

ADHDは薬で・・・。そうなんでしょうね、一般的には、アメリカでも。 ただ、私の住んでいる北西海岸部はアメリカの中でもちょっと趣が変わっていて(ハイテク企業が多いためか)人種も文化もアメリカのスタンダードとずれているので、ADHDの子供達に対しても、ケミカルの薬ではなく、代替医療(ハーブ(漢方も)、ヨガ、瞑想)や他の取り組み(自然学習、音楽や絵等のアート教育、学年が決まっていない学校教育、学校に行かない自宅教育)が盛んです。
 
私は、中立でありたいと心がけていて(そう出来ているかどうかは別ですが)病気を薬で抑えることに反対なわけでもありませんが、ADHD等、子供達の発達の過程における違いに関しては、どうも薬を使わない方法でと思っています。 

それを理解する医師、教育関係者、保護者に恵まれているので、自分のピアノレッスンで、30分集中させてピアノを弾かせる事に重きを置かない方法をとれているのだと思います。

長くなってしまいました。
私の知っているアメリカを間違えて伝えないようにと思うと長くなってしまいました。 とにかく大きい国で住んでいるところによって、もう、違う国みたいです。 マクドナルドは見事に同じですが(笑)

またサイトに来て、いろいろ勉強させていただきます!
ありがとうございます。
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