学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

「教えよう」と思う前に

2012年04月20日 | 特別支援教育について

先生は、すぐ、職業柄

 

「教えよう、教えよう」

 

とします。

 

だから、先生の教え方に合わない子が出てくると、

 

 

「教えてるのに、どうしてできないんだろう!?」

 

 

驚き、戸惑います。

 

そして、

自分が出した宿題の量とレベルがその子に合ってないんじゃないかとか

そもそも理解していないところに難しいのをやらせたんじゃないかとか

その他の要因は考えないで、

 

「この子には教えても、アカン」とか、

「全然勉強しないから悪い」とか、

「あの子は家でやってないし、宿題しないからできないんだわ」

「この子が注意しないのが悪いから、自業自得」

 

と、納得しようとします。

 

 

 

子どもが責任を果たさないからできないのであって、

自分のせいではない。

だって自分は、「教えている」んだもん、

と思います。

 

こうやってスラスラと私が書いているということは、

誰かに聞いたわけじゃなく、

私自身が思っていたことだから。

 

 

 

今は、まず自分の知識不足を責めますねえ・・・・。

 

 

 

「この子はどんな風に学ぶ子か」を

 

ちゃんと見極められていないから、

うまく指導できないのだ、と思います。

 

 

ふつう人は基本的に「自分を基準として」相手について想像します。

だから、予想外のことについては準備ができません。

 

「えっ、こんなことがわかっていなかったのか」

というのが、

先生の思う「普通の基準」から外れている子どもたちです。

 

 

まさか、ちゃんと文字が写せるのに、覚えられないなんて

まさか、黒板の字がぶれて読めていなかったなんて

まさか、字と字の間がはっきり見えていなかったなんて

まさか、一度に記憶できる容量が少なくて、ちょっとずつ繰り返ししないと覚えない子だったなんて

まさか、読むときは読めるのに、書くときに文字を思い出すのにすごく時間がかかる子だったなんて

まさか、音の区別にあまり意識が行かない子だったなんて

まさか、テストの問題が解けない理由が英語じゃなくて、
    なんと自分が書いた日本語の問題文の意味や漢字がわからないせいだったなんて

まさか、プリントのフォントが変わると読めなくなっちゃうなんて

 

 

まさか、まさか~

 

という子どもたちが実はたくさんいる。

 

 

 

それは、「できない」んじゃなくて、

普通と思い込んでいるやり方が合わないだけで、

違うやり方なら、できるかもしれない。

 

 

そういう視点があると、あとは、工夫するだけでいいんです。

 

 

字を少し大きくすると、読みやすくなった!

ビジョントレーニングをすると、読み間違いが減った!

はっきり発音する練習から始めると、書き取りも上達した!

 

そんなふうに、「弱いところは適切に補う」視点が得られるようになります。

 

「教え方」じゃなくて、

「学び方」が最初というのは、そういう意味です。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここから余談です。

話は変わりますが、

思い出せばきっと、先生たちの小さい頃に、

何かしら、みんなより上手にできないこと、

苦手なことがありませんでしたか。

 

 

私の場合は、「順番通りに物事をする」とか、「きちんと最後までやる」、

「忘れ物をしない」ということがとても苦手でした。

実は漢字と計算もだめでした。

 

今でもだめです。

私の板書は、ひらがなばかりで恥ずかしくて生徒に見せられません。

「先生、英語ばっかり教えてるから、
 漢字は忘れちゃった♪」

とか言って誤魔化してます(笑)

 

難しい漢字じゃないんですよ。

例えば、「文型」 の 「型」 が思い出せません。

それも、毎回です!

「「形」「系」「型」、どれだったっけ?」と黒板の前で悩みます。

 (そしてうちの子は、しっかりそれを遺伝してしまってます)

 

 

こういうことで苦労されていない先生は、きっと、

「思い出せない」ということを「信じられない」と思うでしょう。

でも私は読めるので、

ワープロなんかでは変換機能で正しい文字を選択できます。

 

また、(一見)無意味なものの記憶が極端に悪いので、

無意味な数字が並んでいる代表の、電話番号も覚えられません。

 

昨年引っ越してから1年間、自宅の電話番号がどうしても思い出せなくて、

色々な書類を書く度に「電話番号の紙どこだっけ」とさがしながら、

悲しくなっていました。

語呂合わせを考えて、なんとか思い出せるようになりました。

 

地図も駄目です。

 

地理や歴史の年表で点数が悪い子は、おそらく似たような問題を抱えてると思います。

そういう子には、
「語呂合わせ」などなど試してみてね。

 

多感覚を日頃から意識して教えると、
どのタイプの子にも対応できます。 

 

地理の勉強はまず「目」からの刺激が基本。

 

それに刺激をさらに増やしていくのです。

例えば、 

色を加える、

ジオラマにして立体感を出す

(触れるので「触」の刺激が増える、作る過程で「動」の刺激が加わる)、

地図上に旅物語を作って「イメージ」や「意味」と関連づける、

それを言葉にだして「音」の刺激を増やす、

特産物とかも一緒にしちゃった歌を作って丸ごと暗記などなど、

 

色んな工夫があります。

 

 

そのなかで、「どれがその子に合っているか」

その子自身が、

自分で見つけて行かなくては、

自学自習に結びつけられません。

 

 

私たちは、「自分で考えて、自学自習ができる人」

を育てたいのですから、

 

先生が「教えるんだー」

ではなくて、

「この子の学びを支えるんだー」というのは、

教育の根本的な理念に合致しています。

 

 

親なら、自分の子どものタイプを理解すればいいのですが、

先生は、それではいけません。

 

予測不可能な事態に対処できません。

 

だから、教師として、

いろいろなバージョンの 

「子どもの学び方」を知ることは、すごく大切です。

 

 レゴじゃありませんが、認知の個性は無限の組み合わせがあります~

 

常に、驚き続けましょう。

そして、その子たちに、教えてもらいましょう。

「どんな風にみえてるん?どんな風に聞こえてるん?どんな風やったら、覚えやすい?」

ですよ。

 


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5 コメント

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Unknown (masami)
2012-04-20 14:46:45
ほんとうにこどもによって様々で、私もかつて「教える」ものだと思っていました。

しかし学習障害の娘から学んだことは
どれだけたくさんのアプローチを見つけ、どう組み合わせて提供するか、という事でした。

娘は漢字が覚えられなくて、先生がお子さんに試され事私もほとんど(粘土)以外やってみました。

でも結果的にかかる時間と覚える内容とを冷静に見てみたところ、

「覚える」のを辞める
という選択肢に至りました。

覚える代わりに
ふりがなのついた本をたくさん読みました。そうすることで書けなくても読めるようになり、さらに本を読む楽しみができました。

この取り組みで学校の先生とはかなりもめました。
「漢字は国語の基本だから、時間がかかっても覚えさせるべきだ」

との主張に
「漢字の書き取りの練習に毎日2時間はついやせません。書けなくてもいいのです。読めればいいから本を読ませます。」

と言い続けましたが、サボっていると言われてしまいました。

でも
一旦は書けなくても、読める、事が大切だと娘は教えてくれました。

それ以降私自身も
「学び」の為のアプローチをたくさん持つことと目的を明確に意識するようになり、今では「教える」事なんて私はできないんだな、と感じています。

まだまだ知らないアプローチがあって出会いがあるとワクワクしてしまいます。
いつも情報ありがとうございます。

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masamiさん (まとりょん)
2012-04-20 19:16:43
コメントありがとうございます。

masamiさんのコメントを読んで、LDのある子どもへのアプローチは、2つあることを改めて思い出しました。
① レメディアル(弱点補強)と、
② 長所を用いた指導

です。①ばかりやっていては、
漢字に1日2時間かけて、それで終わってしまいます。

②では、理解力や批判的思考、分析力、読解力などを身につけていってほしいですね。もし読むことが苦手なら音読してやる、あるいはDAISYなどを使って機械で読んでもらうなどして、知識や理解の面でも遅れないようにしないといけませんね。

書くのは徐々に追いついていくとして、
知識や理解を年齢相応レベルにキープするために、masamiさんの取られている方法も1つだよなあ、と思いました。がんばってくださいね~。
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Unknown (masami)
2012-04-20 23:53:00
先生

意外な事実でしたが、数年遅れではあったものの、娘は「覚える」事をやめたら、書けるようになりました。

それは彼女がディスレクシアではないからだということは断っておきます。

現在は中学2年生に相当しますが、中1までの漢字で実は問題が起きていません。書くことがほとんど無くなったので、目立たなくなったと言うのも要因ですが、実際には小学校3年生くらいまでに学ぶ、「漢字の構造」さえ理解していれば読めたり、イメージがつかめれば意外とかけるという事も分りました。

学年相当という概念にとらわれず、時間がたてば本人にとってやりやすい、学びやすいアプローチであればある程度はキャッチアップできると実感しました。

が・・・
まだ数学で苦戦しています。
小3からやり直すことに決めました。

基本
どんぐり方式で行こうと思っています。
問題を自分でビジュアル化して理解をしてから進めるというものです。

本人も自分自身の能力と特性を最近は理解しているので、小3からやり直す(結果的には5歳はなれた弟と同じ事をするとしても)ことに抵抗はないと言ってくれたので、やってみます。

お返事ありがとうございました。
大変勇気付けられました。
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Unknown (masami)
2012-04-20 23:59:49
ああ、先生

実はDAISYを使ってみたいと思い、調べてみたのですが、良く分からず・・・

日本で英語のDAISYを希望した場合、どうしたらよいのでしょうか?

もし仮に日本で英語のDAISYを申しこむことが可能なら、私の最近の悩みである、帰国子女やプリスクール出身の子どもたち、また多読的に英語学習を進めたい子どもたちにとって大きな武器になります。

もしご存知であれば教えていただけませんでしょうか。娘の学校にも補助教材として推薦したいと思います。英語ネイティブでない子どもたちの学習の助けになると思っているのですが。
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Unknown (まとりょん)
2012-04-21 08:20:56
>>学年相当という概念にとらわれず、時間がたてば本人にとってやりやすい、学びやすいアプローチであればある程度はキャッチアップできると実感しました。

はい、これはスウェーデンの学校報告でも、そんな風なことが「あるわよ」と書いてありました。
子どもの学ぶスピードは、一定ではありませんし、ずっと亀さんのようでもあるとき爆発的に向上するタイプもいるし、積み重ね方も人それぞれですもんね。

DAISYは、
http://blog.goo.ne.jp/itkayoko/s/DAISY
よかったら過去ログ見て下さい。
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