会報いしかり
第94号(平成29年11月26日)
いしかり手打ちそば同好会 初版発行:平成20年9月13日
コラム 〒061-3202 石狩市花川南2条6丁目256 URL:http:blog.goo.ne.jp/it sobo
そば希聞 “音威子府紀行”
平成29年9月6日(金)早朝5時。網走の夜も白々と明け始めた頃、今日の目的地である音威子府村咲来(さっくる)に向け車を出す。
咲来には、昨年から季節々でお世話になっているそば農家・加藤農園がある。
加藤さんを知ったのは、前職の就活の途中で目にした「幻の咲来そば・杉や」という幟(のぼり)を立てているそば屋さん。
店舗は、北大の通りを麻布に向かう北30条西5丁目ビルの1階。一度通り過ぎてしまったため慌ててUターンし確認。
その日は仕事に戻る。翌々日の日曜日11時、改めて店舗の前に立つ。暖簾と幟が出ていたので、押し分け中に。
“いらっしゃ~い”の掛け声とともに厨房から店長が顔を出す。若い。34、5才くらいだろうか。
店自体はこじんまりとしてそれほど広くない。
テ-ブルが2卓と椅子席が4つ。客は、まだ居ない。そば粉を分けてもらえるだろうかと、聞いてみる。
すると、一つ返事で“ああ、いいよ。カウンターの上に載っているから、そっから好きなだけどうぞ”。
見ると500g分包で5袋、丁寧に山積みしてある。じゃあ、1㎏といって2袋を手に取り、代金を支払う。
それを機に数回訪れ、1㎏ずつ購入。ある日、ある質問をしてみた。
そば包装のラベルに「村にあるものをネップエイド」と印刷されていることについてだ。
言い遅れたが、店主の名は杉谷さん。
曰く、友人が音威子府村咲来でそば農家(加藤農園)をやっている縁で始めたとのこと。
ラベルには生産者の名前も書かれており、ネットで検索し数日後電話を入れる。
幾度となく遣り取りをしているうちに、直送してくれることになった。加藤さんとの交流がLINEで始まった。
顔が見えないままのお付き合いは、私自身好まないところでもあり、時期は未定としながらも、
挨拶に伺いたい旨のLINEを入れる。快諾。訪問日を気にしながら日を重ねるうち、
私自身にも環境の変化があり延び々になっていた。遅くなったが天気予報をにらみながら、今日に至った。
オホーツクの秋は早い。車窓から見る景色は、右に目をやれば紅葉が濃く色づき、
左を見ればオホーツクの海は静かに凪いでいる。海面は仲秋の日差しを映し、
まばゆいばかりに輝きを放っている。朝も早いせいか、行き交う車もまばら。
走ること1時間。サロマ湖に朝日が昇ってきた。島との陰影が実に美しい。思わず感嘆。
車を道路の端に止め、携帯に収める。 サロマ湖に朝日が昇る
国道238号をひたすら北上。途中、道の駅「愛ランド湧別」で小休止。小用も終え、
ふと見た先に大きな観覧車がある。遊園地が併設されているのだ。明日からの3連休、
家族連れで賑わうだろうこの遊園地も、今は静かにその時を待っている。
再びアクセルを踏み込み、興部に向かう。300m手前の標識を確認しながら、信号を左折。
国道40号に入る。今回のこの旅は、NAVIに頼ることなく地図を片手に走ろうと決めていた。
名寄に入ると一転して天候が怪しくなってきた。「名寄美深道(通行無料)」を更に北上。
「美深北IC」で下り、国道48号から最終目的地の「音威子府」に。走ること15分。
「咲来」の地名表示が見えてきた。加藤さんに電話。“最初の信号を左折。
踏切を越えた一つ目の角に「消防会館」があるのでその向かい”。
指示されたとおりに、車を走らす。“最初の信号”までは、結構な距離だ。
大きな倉庫が1棟建っている。倉庫は周りを威圧するようなデカさ。
建屋は三階の建物に匹敵するような高さだ。駐車場も広い。大型トラクターが3台と小型のトラクターが1台、
整然と並んでいる。車を倉庫の際に停めたところで、加藤さんがニコニコしながら近づいてきた。
車を降りた途端に寒気に包まれる。寒いと感じながら握手を交わし、倉庫の中に。
小柄な男性が一人、機械周りの掃除をしていた。
2年後を目途に、音威子府に飲食店を開く予定で手伝ってくれているとのこと。紹介を受ける。
小熊さんと言い、年齢は31歳。比較的小柄な人だ。挨拶の態度、受け答えの物腰はしっかりしている。
商売をしてもきっと成功するだろう。
入って、左に玄ソバ乾燥機が5台。水分を15%前後に調整することで、加水率や風味が変わるとの説明を受ける
。正面には、石臼が3台。右には作業用倉庫が我が物顔に幅を利かせている。
倉庫の中の倉庫。そして、作業用倉庫の隣には冷蔵庫。
更に右に目を移すと、スノコを敷いた上に、今年度産の玄そばがうず高く積まれている。
玄ソバ乾燥機
そば畑は倉庫から離れたところにあり、栽培面積は130町(=130ha)。
今年は昨年に引き続いて天候に恵まれず、まだ収穫を終われないでいるのが3割近くあり午前11時には畑に出掛けるという。
一昨年までは、他の地域が天候に恵まれなくても、音威子府だけは恵まれたのにどうしたのかと嘆く。
加藤直樹さん。出身は福岡県。東京で、音楽の先生をしていた奥様と知り合い、雪を見たさに音威子府に来たという。
暫くして、奥様のお父様が病に倒れ逝去。そば農家を継ぐことに。気が付けば5年が経っていたと笑顔で話す。
日焼けした、いい笑顔である。播種から栽培、収穫まで一人でやっているので大変だが、
ウチのそばを待っていてくれる人が居るから頑張れる。私も、そのうちの一人だ。
刈り入れに出る時間が迫って来たため、最後に一つだけ聞いて失礼することにする。
「ねっぷえいど」ってなんですか。ねっぷ、は語呂から言って分かるでしょう。
えいど、はAID。つまり、バンドエイドのエイドと同じで、援助とか助けるということで、
音威子府の村おこしという意味ですと教えてくれる。その他、数人の仲間とバンドを組んで(奥様と杉谷さんもメンバーの一員)、
音威子府村祭りで演奏する活動も行っているそうだ。兎に角、音威子府のために一所懸命頑張っている人、
という印象が強く窺い知れる。
バンドの仲間。左の女性が奥様
来年の再訪を勝手に約束して、国道40号を旭川へ向けて走り出す。
音威子府を覆っていた鈍色の雲も、士別に入った頃から回復しはじめ、
比布に入る頃には北国の秋特有の真っ青な空が広がっていた。
そして、トンネルを抜けた時、いきなり視界に入ってきたのは山頂に真っ白な雪を冠した大雪山連峰。
青い空と白い雪のコントラストは、息をのむほどに美しい。その姿に沿道に車を寄せ、見入る人も。
旭川から美唄までは、国道12号を南下。背中に張りを感じたため、美唄からは道央自動車道を使って我が家に。
到着は午後5時ジャスト。網走を出て12時間の長旅だったが、適当に休憩を取りながら走ってきたので、
凄く疲れたという感じはない。
It was the most fulfilling day。
事 業 報 告 事 業 報 告
■ 10月28日
2017年度全麺協段位認定会“合格者祝賀会”
■ 10月29日、11月5日、19日
サッポロさとらんどそば打ち教室
お 知 ら せ
○ 12月、1月の当番
12月:作業班は3班、受付は4班
1月:作業班は4班、受付は1班
○ 事業部から
「麻生こども太鼓クラブそば打ち教室」が12 月17日に変わりました。
当日は“サッポロさとらんど”もありますので、人手が足りません。ご協力お願いします。
平成30年2月までの事業予定
当会の事業にはお手伝いをお願いします。
○は当会の事業