時計の歴史は古い。木の棒を立てただけの日時計。水時計や砂時計。縄・蝋燭・ランプ・香を燃やした燃焼時計。
そしてゼンマイ時計から振り子時計へ。その振り子時計がなくなって久しいが、チクタクという秒針の音も時計からなくなりつつある。
そして、いまや最先端の電波時計へ。十万年に一秒の誤差しか生じないとされている「原子時計」。この原子時計をもとに送信される標準電波を受信し、自動的に時刻や日付を修正する電波時計。
科学の進歩を代表する電波時計がゆるゆると回っている。まやかしの進歩によって、人間本来の「生きる喜び」を失いつつある地球人。
さて、「春浅し」の季語の斡旋によって、作者のそのような思いや暖かい春を待ち焦がれる憂鬱感が伝わって、感慨深い。