マーケティング研究 他社事例 634 「余裕のある経営」 ~松下幸之助さんのお話~
新型コロナウイルス禍において、経営が圧迫されている企業が少なくありません。
財務に余裕を持たせる事が出来たら、どんなに経営が楽になる事かと考える経営者は沢山いらっしゃると思います。
そんな余裕のある経営に通ずるのが、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏(以下、幸之助翁)が唱えた「ダム式経営」だと思います。
幸之助翁は1950年ごろ、技術提携の必要性を感じ、アメリカ企業を訪問しました。
当時、日本は戦後の焼け野原から立ち上がり、経済復興活動へ本格的に動き出した所でした。
そんな日本とは対照的な、余裕のあるアメリカ企業の経営を目の当たりにしたことが、ダム式経営を思いつくきっかけになったと言います。
幸之助翁が創設したシンクタンク、PHP研究所によると、幸之助翁がダム式経営の大切さを感じたのは、アメリカ電池メーカーのユニオン・カーバイドを訪れた時の事でした。
同社が1個15セント(当時の約54円)で販売していた乾電池について、同社の担当者に「いつから、この価格なのですか?」と尋ねると、「30年間、この価格で売っています!」という返事が返ってきたと言います。
2度の世界大戦を経ても価格が上がらなかったことに、幸之助翁は非常に驚きました。
当時の幸之助翁の分析によると、ユニオンは2~3割の製造施設を予備として持ち、製造側に余裕を持たせることで供給を安定させて価格のバランスを保っていたと言います。
ただ、幸之助翁が説いたダム式経営は生産体制における「ダム」にとどまりません。
著書「実践経営哲学」(PHP文庫)で、ダム式経営の考え方について次のように説明しています。
「ダムのようなものを、経営のあらゆる面にもつことによって、外部の諸情勢の変化があっても大きな影響を受けることなく、常に決定的な発展を遂げていけるようにする。」
そこには、「設備のダム、資金のダム、人員のダム、在庫のダム、技術のダム、企画や製品開発のダム」など色々なダムがあるとしています。
そしてダム式経営と同時によく幸之助翁が説いたのは「適正経営」の考え方です。
先述の著書の中で『ダム』を作るためには、「会社の技術力、資金力、販売力などを含めた会社の総合実力というものを的確に把握」することの大切さも語っていました。
余裕のある経営をするには、まず自らの力を正確に認識しなければなりません。
自分の力を超えて事業をすれば失敗してしまいます。
ダム式経営の前提としての適性経営の重要性も当時、強調していたのです。
ダム式経営で幸之助翁は、設備や資金、人員のダムなど、色々な面でのダムの大切さを訴えましたが、それらのダム以前に必要なダムとして言及しているのが、「心のダム」でした。
別の言い方では「ダム意識」とも表現しています。
「ダム意識を持って経営していけば、具体的なダムというものは、その企業企業の実態に応じていろいろ考えられ、生み出されてくる」と説明しました。
一方、「あなたは今成功されて余裕があるから、ダム式経営が必要などと言えますが、私にはそんな余裕はありません。どうしたらダム式経営ができるのですか。そのへんをしっかりと教えて下さい」と、今から60年ほど前に、アメリカ視察から帰国した幸之助翁の講演会で、一人の経営者が質問を投げかけました。
アメリカ流の第一線の経営手法が聞けると期待して講演に来ていた経営者は少なくありませんでした。
『ついにその手法を教えてくれるのではないか』
集まった経営者らは固唾を飲んで待っていましたが、幸之助翁の答えは彼らにとっては期待外れのものでした。
「そうですなあ~、ダム式経営をやろうと思わんといかんでしょうな」
幸之助翁がそう言うと、その場にいた経営者らは、しらけムードになったと言います。
ところが、そんな中でただ一人、その言葉に感銘を受けていた人物がいたのでした。
京都セラミックを創業して間もなかった稲盛和夫氏でした。
それから20年近くたった1979年に稲盛氏はPHP研究所の雑誌「voice」で次のように振り返っています。
「その時、私は本当にガツーンと感じたのです。その上で簡単な方法を教えてくれというふうな、そういうなまはんかな考えでは、事業経営はできない」
幸之助翁の言葉を借りるとすれば、たくさんの経営者らを前にして言いたかったのは「心のダム」や「ダム意識」だったのかもしれません。
そしてそれを理解したのが稲盛氏だったのでしょう。
ダム式経営は、資金だけでも、設備だけでも、人だけのダムでもありません。
時間はかかるかもしれませんが、あらゆる面に一つひとつ「ダム」を作っていくことが、その企業の強さにつながるという事を、幸之助翁はダム式経営と呼んだのかもしれませんね。
下記は彩りプロジェクトのご紹介です。
ご興味があればご一読下さい。
経営の根幹は「人」です。働く人次第で成果が変わります。自分事で働く社員を増やし、価値観を同じくし働く事で働きがいも増します。
彩りプロジェクトでは、風土改革を軸にした「私の職場研修」、「未来を創るワークショップ研修」等、各企業の課題に合わせた研修をご提案差し上げます。ITソフトメーカー、製造メーカー、商社、小売業者、社会福祉法人、NPO法人等での研修実績があります。
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メール info@irodori-pro.jp
HP https://www.fuudokaikaku.com/
お問合せ https://www.fuudokaikaku.com/ホーム/お問い合わせ/
成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣
新型コロナウイルス禍において、経営が圧迫されている企業が少なくありません。
財務に余裕を持たせる事が出来たら、どんなに経営が楽になる事かと考える経営者は沢山いらっしゃると思います。
そんな余裕のある経営に通ずるのが、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏(以下、幸之助翁)が唱えた「ダム式経営」だと思います。
幸之助翁は1950年ごろ、技術提携の必要性を感じ、アメリカ企業を訪問しました。
当時、日本は戦後の焼け野原から立ち上がり、経済復興活動へ本格的に動き出した所でした。
そんな日本とは対照的な、余裕のあるアメリカ企業の経営を目の当たりにしたことが、ダム式経営を思いつくきっかけになったと言います。
幸之助翁が創設したシンクタンク、PHP研究所によると、幸之助翁がダム式経営の大切さを感じたのは、アメリカ電池メーカーのユニオン・カーバイドを訪れた時の事でした。
同社が1個15セント(当時の約54円)で販売していた乾電池について、同社の担当者に「いつから、この価格なのですか?」と尋ねると、「30年間、この価格で売っています!」という返事が返ってきたと言います。
2度の世界大戦を経ても価格が上がらなかったことに、幸之助翁は非常に驚きました。
当時の幸之助翁の分析によると、ユニオンは2~3割の製造施設を予備として持ち、製造側に余裕を持たせることで供給を安定させて価格のバランスを保っていたと言います。
ただ、幸之助翁が説いたダム式経営は生産体制における「ダム」にとどまりません。
著書「実践経営哲学」(PHP文庫)で、ダム式経営の考え方について次のように説明しています。
「ダムのようなものを、経営のあらゆる面にもつことによって、外部の諸情勢の変化があっても大きな影響を受けることなく、常に決定的な発展を遂げていけるようにする。」
そこには、「設備のダム、資金のダム、人員のダム、在庫のダム、技術のダム、企画や製品開発のダム」など色々なダムがあるとしています。
そしてダム式経営と同時によく幸之助翁が説いたのは「適正経営」の考え方です。
先述の著書の中で『ダム』を作るためには、「会社の技術力、資金力、販売力などを含めた会社の総合実力というものを的確に把握」することの大切さも語っていました。
余裕のある経営をするには、まず自らの力を正確に認識しなければなりません。
自分の力を超えて事業をすれば失敗してしまいます。
ダム式経営の前提としての適性経営の重要性も当時、強調していたのです。
ダム式経営で幸之助翁は、設備や資金、人員のダムなど、色々な面でのダムの大切さを訴えましたが、それらのダム以前に必要なダムとして言及しているのが、「心のダム」でした。
別の言い方では「ダム意識」とも表現しています。
「ダム意識を持って経営していけば、具体的なダムというものは、その企業企業の実態に応じていろいろ考えられ、生み出されてくる」と説明しました。
一方、「あなたは今成功されて余裕があるから、ダム式経営が必要などと言えますが、私にはそんな余裕はありません。どうしたらダム式経営ができるのですか。そのへんをしっかりと教えて下さい」と、今から60年ほど前に、アメリカ視察から帰国した幸之助翁の講演会で、一人の経営者が質問を投げかけました。
アメリカ流の第一線の経営手法が聞けると期待して講演に来ていた経営者は少なくありませんでした。
『ついにその手法を教えてくれるのではないか』
集まった経営者らは固唾を飲んで待っていましたが、幸之助翁の答えは彼らにとっては期待外れのものでした。
「そうですなあ~、ダム式経営をやろうと思わんといかんでしょうな」
幸之助翁がそう言うと、その場にいた経営者らは、しらけムードになったと言います。
ところが、そんな中でただ一人、その言葉に感銘を受けていた人物がいたのでした。
京都セラミックを創業して間もなかった稲盛和夫氏でした。
それから20年近くたった1979年に稲盛氏はPHP研究所の雑誌「voice」で次のように振り返っています。
「その時、私は本当にガツーンと感じたのです。その上で簡単な方法を教えてくれというふうな、そういうなまはんかな考えでは、事業経営はできない」
幸之助翁の言葉を借りるとすれば、たくさんの経営者らを前にして言いたかったのは「心のダム」や「ダム意識」だったのかもしれません。
そしてそれを理解したのが稲盛氏だったのでしょう。
ダム式経営は、資金だけでも、設備だけでも、人だけのダムでもありません。
時間はかかるかもしれませんが、あらゆる面に一つひとつ「ダム」を作っていくことが、その企業の強さにつながるという事を、幸之助翁はダム式経営と呼んだのかもしれませんね。
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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣