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マーケティング研究 他社事例 632 「e学習教材」 ~講師の質、授業料問題を解決!?~

2020-09-03 09:36:11 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 632 「e学習教材」 ~講師の質、授業料問題を解決!?~


現在、学習塾業界は活況を迎えています。

しかし、課題は多く、生徒の学習力向上に本当に一役を買っているのかと言う所は懐疑的な所がぬぐえません。

個別指導塾は大学生アルバイトが講師を務めることが多く、指導の質のばらつきがまず問題です。

また、比較的学力が低い生徒達が多く、週に5日通うことができれば成績を上げられるかもしれませんが、集団指導塾に比べて授業料が高いためにそれも難しく、その結果、学校の授業に取り残されていく生徒たちが出現する有様です。

「eラーニングならこの問題を解決できるかも」

eラーニングは講師の質に左右されず、講師の質に左右されず、一定の教え方が出来ます。

さらに週何回学んでもコストはほぼ変わらず、サービスの低価格化が見込めます。

そして理解度などの学習状況が把握しやすく、学習習慣が付いていない生徒に遠隔で勉強を促すことも出来ます。

すららネットの前身である、ベンチャー・リンクの一事業で進めていた時に、そのリーダーであった湯野川氏は教材開発に取り掛かりました。

中学生向けの国語・数学・英語の教材を発売したのは2007年です。

2年もの時間を開発に費やしたのは教材の特徴に理由がありました。

学生向けのeラーニング教材は講師の授業動画を配信するものが多いですが、すららネットはアニメーションを使った授業で生徒の理解を促します。

練り込まれたシナリオや沢山の絵コンテを用意する必要があり、手間がかかります。

アニメにこだわったのは「どんな生徒でも集中力が続くように」といった思いがあったのと、双方向性の高い授業を実現するためです。

授業中には時折、システムが生徒に対して内容を理解しているかどうかを把握する質問を投げかけ、回答の正誤によって理解度を判断し、次の授業内容を変えます。

これは講師による授業動画では導入が難しい機能です。

授業後は学んだ内容を定着させるために練習問題を解かせるのです。

出題レベルは生徒の理解度に応じて自動で調整され、間違えたらその場で添削し、知識の定着を支援する『アダプティブ・ラーニング』と呼ばれる仕組みで近年のeラーニングでは当たり前のに搭載されている機能ですが、開発当時は珍しい機能でした。

複雑な仕組みの教材は自前で作り上げたもので、時間はかかったが「独自性のある最先端の教材ができた」と湯野川氏は当時考えていました。

教材の完成度に自信はあったものの、利用者は思うように増えず、当初は赤字が続いたのでした。

そんな中、ベンチャー・リンクの経営状況が悪化し、開発費や営業費は削られていったのでした。

「このままでは事業がなくなってしまう」

湯野川氏は2010年にMBO(経営陣による買収)で独立しました。

事業部、子会社時代は最多30人ほどの社員がいましたが、独立時は13人とスリムな体制でスタートし、成功を確信していた湯野川氏の読み通り、会員数は徐々に増え、2013年12月期には3万人弱に達し黒字化したのでした。

サービスの対象は小学生と高校生にも広がり、2020年3月には小中学生向けに理科・社会の教材の提供も始めました。

学習塾向けから、学校向けにも販路拡大し、私立校を中心に補修や復讐、自宅学習用の教材として関心を集め、現在7万人の有料会員のうち、4万人以上を学校経由が占めています。

ただ導入校数としては、まだ200校に過ぎず、全国に小中学校・高校は約3万5000枚あり、開拓の余地はまだまだ大きいと言えそうです。

そんな中、湯野川氏が需要拡大の起爆剤として期待を寄せるのが政府の「GIGAスクール構想」です。

「GIGAスクール構想」の2023年度までに小中学校で生徒1人に1台のコンピューターを配備することが柱の構想です。

投資を生かすには、すららネットのようなeラーニングを導入するのが不可欠となり、公立校の需要も増すはずです。

さらにコロナ禍も追い風となります。

2月末に政府が全国の小中学校などに一斉休校を要請し、学校現場は大きく混乱しました。

学校や塾向けの支援策として一時的に無償でサービスは利用できるようにしたところ、会員が一気に10万人も増えました。

「無償提供先の教育委員会などからは、今後も使い続けたいという声が集まっている」

日本は少子化で学校数は漸減しています。

同じ学校に通う生徒の学力の幅は広がりますが、理解度に合わせて教員が細やかな指導を施すリソースは限られています。

eラーニングでそこを補う必要性は今後も増しそうです。

すららネットは現在の導入校数の20倍近くに相当する、私立校の3割、公立校の1割にサービスを導入する目標を立てています。

ばらつきのある学力を底上げするというコンセプトは新興国市場にも合います。

海外では既にインドネシアやスリランカの学校で小学生向け算数教材の導入を進めています。

海外市場の開拓は長期的な成長戦略の柱とする考えのようです。


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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 
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