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卓越性の探究者、波田野が皆さんに販売戦略・営業手法についてや、コミュニケーションについて思う事をお届けします。

マーケティング研究 他社事例 506 「インフラ運営は行政から民間へ⑥」 ~コンセッションが促す企業経営改革~

2020-02-28 08:32:02 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 506 「インフラ運営は行政から民間へ⑥」 ~コンセッションが促す企業経営改革~


「ここまで来るのに約20年。長かった。」

前田建設工業は言います。

愛知県有料道路や仙台空港などコンセッションの運営事業者としてたびたび名前が上がる前田建設は、大手5社に次ぐ準大手ゼネコンですが、今ではコンセッション関連の営業利益は60億円強と、連結営業利益の2割近くを占めています(利益貢献ベース。再生可能エネルギー関連の利益を含む)。

3年後に100億円、10年後には営業利益の5割をコンセッション関連で稼ぐことが目標となっています。

バブル崩壊後、逆風にさらされてきた建設業界ですが、東日本大震災や東京五輪などの特需で、業界の淘汰は進んでいません。

今後数年の受注残がある建設会社も多く、しばらくご飯のタネには困らない状況が続くと言います。

しかし、人口減と政府債務の増大を考えれば、その後に血で血を洗う過当競争に陥るのは必至です。

その中で、前田建設は「請負」という伝統的なビジネスを超えて、インフラの「運用」で稼ぐ事業構造にシフトしようとしているのです。

コンセッションに目を付けたのは建設不況の嵐が吹き荒れた2000年前後の事です。

公共事業の縮小や地価下落に伴う建設需要の低迷、相次ぐ談合問題の露見などで、伝統的な請負ビジネスが岐路に立たされていた時期でした。

「欧米の建設会社を研究している時に、一部の会社が空港の運営を始めていることを知った。それ以来、欧米の建設会社を訪問するようになった」

聞けば、欧州連合の拡大と域内の移動の自由を認めたシェンゲン協定によって東欧諸国の業者が安価な労働者とともに流入して来るとの事。

その時に建設だけに依存していては生き残れません。

そこで、建設会社の持つ営繕のノウハウが生きるインフラ運営に乗り出したのでした。

大手ほどの規模を持たない前田建設にとって、請負に固辞すればいずれジリ貧になります。

インフラ運営にかじを切る欧州の建設会社を見て、前田建設はコンセッションこそ自社の未来だと思うようになっていったのです。

そして、PFI法の改正でコンセッション方式が導入された2011年に「脱請負」という旗を掲げたのでした。

「脱請負」という言葉には、投資という形でリスクを取り、インフラの運営と、年金基金など投資家への運営権の売却で収益を上げるという決意が込められています。

国内のコンセッションで得た知見によって、新興国で拡大するコンセッション市場への参入も可能になりました。

前田建設が現在、有望視しているのはベトナム・ホーチミンとロンタイン国際空港(建設中)を結ぶ55kmの高速道路プロジェクトです。

既に片側2車線の高速道路が走っていますが、2025年の空港の本格稼働を前に、車線の拡幅が計画されているのです。

この区間の運営権と車線拡幅がセットで民間に売却される計画となっています。

ベトナム高速道路公社(VEC)など国営企業の民営化が浮上したために、事業者選定は停止していますが、案件が動き出せば手を上げると言います。

ほかにもガーナの有料道路でもPPP(官民連携)プロジェクトが可能かどうか、実施調査する覚書を政府と交わしていますし、結果次第では、アフリカでのインフラ運営も射程に入って来ます。

(続く)



彩りプロジェクトでは、「リーダーシップ研修」、「未来を創るワークショップ研修」等、各企業の課題に合わせた研修をご提案差し上げます。

経営の根幹は「人」です。働く人次第で成果が変わります。自分事で働く社員を増やし、価値観を同じくし働く事で働きがいも増します。

彩りプロジェクトでは、製造メーカー、商社、小売業者、社会福祉法人、NPO法人等での研修実績があります。

研修と一言と言っても、こちらの考え方を一方的に押し付ける事はしません。実感いただき、改善課題を各自が見つけられる様な研修をカスタマイズしご提案しているのが、彩りプロジェクトの特徴です。


保育園・幼稚園へご提供している研修【私の保育園】【私の幼稚園】は大変ご好評をいただいています。

また、貴社に伺って行う研修を40,000円(1h)からご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

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現在、経済産業省では「経営改善計画策定支援事業」を行っており、金融支援を必要とする企業の経営改善計画書を策定する際の費用の2/3補助があり、上限は200万円です。

また、「早期経営改善計画策定支援事業」は、同様に策定する際の費用の2/3補助があり、上限は20万円です。

こちらの「早期経営改善計画策定支援制度」は金融支援を要しないものですので、容易に取得しやすいのが特徴です。

メリットとして、金融機関との信頼関係を構築する為の制度としては有用です。

なぜなら、経営内容を開示する事、計画進捗のモニタリングを金融機関に報告する事は、金融機関が企業を評価する際に「事業性の評価」をしやすくなります。

金融機関は担保に頼らずに融資するには、「事業性の評価」が不可欠です。

「事業性の評価」とは、金融機関がその企業の事業を理解する事です。

「事業性の評価」に積極的な金融機関とそうではない金融機関がありますが、これからの金融機関とのお付き合いの仕方として、有用な制度となりますので是非ご利用下さい。

※このような方(会社)におすすめです。(中小企業庁資料より)

・ここのところ、資金繰りが不安定だ

・よくわからないが売上げが減少している

・自社の状況を客観的に把握したい

・専門家等から経営に関するアドバイスが欲しい

・経営改善の進捗についてフォローアップをお願いしたい

この補助金を利用するには、経営革新等認定支援機関の支援が必要です。

彩りプロジェクトは認定支援機関です(関財金1第492号)

経営革新等支援機関とは、「経営改善、事業計画を策定したい」「自社の財務内容や経営状況の分析を行いたい」「取引先、販路を増やしたい」「返済猶予、銀行交渉のことを知りたい」

「事業承継に関して、代表者の個人補償をどうにかしたいんだけど・・・」

というお悩みを始め、中小企業経営者を支援するために国が認定した公的な支援機関の事です。

お気軽にご相談下さい。

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マーケティング研究 他社事例 505 「インフラ運営は行政から民間へ⑤」 ~クローズアップされる運営権の証券化に伴う流通市場の存在~

2020-02-27 08:57:14 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 505 「インフラ運営は行政から民間へ⑤」 ~クローズアップされる運営権の証券化に伴う流通市場の存在~


空港や道路で一定の成果を収めているコンセッションは様々な分野で活用が進みます。

浜松市は2017年、市内の下水を処理している西遠浄化センターと2か所のポンプ場に関して、20年間の運営権を水処理世界最大手のフランスのヴェオリアなどの企業連合に売却しました。

宮城県も上下水道事業をコンセッション方式で民間に委ねる計画です。

いずれも市が水道管など設備の維持・更新の負担に耐えられなくなりつつあることが動機です。

税収や利用料が増えれば自治体の負担で維持・管理は可能かもしれませんが、人口減少時代の今、利用者が増えるという絵は描きにくいと言えます。

上下水道料金の大幅な値上がりを避けるため、コスト削減にたけた民間のノウハウで上下水道の効率化を図ろうとしているのです。

「県が事業を継続した場合、40年後には料金を1.5倍に上げざるを得ない。安心・安全な水を供給し続けるには従来の運営方法では限界がある」と宮城県の村井知事は言います。

PFI法でコンセッションの対象になるのは「料金収入を生むインフラに限る」と定義づけられており、収益を生まないインフラのコンセッションというのは矛盾しています。

しかし、老朽化した一般道など無料のインフラの維持・更新は待ったなしです。

水害が深刻化している中で各地の治水事業も不可欠です。

民間の資金とノウハウを活用しつつ、インフラの更新も並行させていくには、運営管理のパフォーマンスに応じて対価を変えるタイプのコンセッションを導入することも一考すべきでしょう。

「質の高い管理をすれば民間にもインセンティブを与える。そんな方式を導入すべき」

全てを税金でまかなう事が出来ない以上、コンセッションの適用対象を拡大することで、効率化と質の向上を目指すべき時であると言えます。

コンセッションを最大限に生かすために検討すべきことは、実はまだ多いと言えます。

例えば、経営の自由度をどう確保するか、という問題があります。

愛知県有料道路の場合、計画を上回った料金収入につなげても事業者の取り分は6%までで、インセンティブは限られています。

また、発注などで事業者の裁量が認められていますが、道路管理については手法が定められている部分が残ります。

必要な品質を満たせばやり方は問わない性能発注にはなっていないのです。

通行料を引き上げる場合には、県議会の承認が必要とされ、ハードルは高いと言えます。
(料金を下げるのは自由)

水道など生活に密着したインフラの場合も値上げは困難を極める事でしょう。

公共性とのバランスを考慮した上で、どこまで経営の自由度を与えるかは今後の大きな課題と言えるのです。

こうした課題に加え、将来的には運営権の2次流通市場の整備も必要です。

海外のインフラ運営会社は一定期間たつと運営権を証券化して年金基金などに返却していきます。

言い換えれば、運営会社は有望なインフラの運営権を取得し、安定したリターンを生む金融商品を組成するという役割を負っているのです。

しかし、日本の場合はコンセッションの事例が少ない上に、証券化によって運営権を別の会社に譲渡することに抵抗感が強く、運営権の2次流通市場が存在しません。

生活に密着したインフラはリスクがそれほど高くないために、長期の運用を手掛ける年金基金にとって有望な投資先になるはずです。

2次流通市場の不在は企業の負担にもなります。

愛知県有料道路の運営権を取得した際に、ARC(愛知道路コンセッション)の中核企業である前田建設は未払金として将来支払う運営権を1200億円以上、計上する羽目になりました。

運営権は将来の収入に対するものですが、会計ルール上、運営権と負債を連結貸借対照表に載せなければならなかった為です。

運営権を得るたびに負債が計上されるのは大きな負担となります。

コンセッションの潜在力を発揮し、インフラの有効活用につなげるためには、こういった課題を解消していく必要があるのです。

(続く)



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マーケティング研究 他社事例 504 「インフラ運営は行政から民間へ④」 ~空港運営権は高値!?~

2020-02-26 10:54:26 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 504 「インフラ運営は行政から民間へ④」 ~空港運営権は高値!?~


PFIの一形態として導入されたコンセッションはまず空港で活用が進みました。

第一弾は関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港でした。

政府全額出資の新関西国際空港会社は2015年に関空と伊丹空港の44年間の運営権をオリックスとフランス・バンシ・エアポートを中核とする企業連合に売却したのです。

44年という長期で運営権対価が巨額となるため、入札が成立するかどうか危ぶまれましたが、2兆2000億円(年490億円)でオリックス・バンシ連合が落札しました。

「契約期間が長期にわたることは、われわれ民間と国の双方にとってメリットがある」

落札した企業連合が設立した空港運営会社、関西エアポートの担当者は語ります。

巨額投資を回収するには一定の期間が必要となります。

この案件のように44年間も運営を続けることになれば、行政サイドが懸念するような維持修繕をおざなりにする事態は起きにくいと言います。

2018年には神戸空港も関西エアポートの運営対象に加わったのでした。

昨年9月の大型台風で関空が一時閉鎖に追い込まれるなど想定外のトラブルもありましたが、民間運営の効果は出ています。

格安航空会社の拠点になっている関空ではインバウンドの増加に伴って保安検査の待ち時間が問題になっていましたが、3~4人が同時に保安検査を受けられるスマートレーンを導入、待ち時間を3割削減しました。

商業施設の改革も進めており、免税店の配置には、店舗の中を抜けて搭乗口に至る「ウォークスルー型」と呼ばれる方式を採用しました。

店舗内を回遊する曲線の道路が配置してあり、並べられた商品に目が留まりやすくなりました。

こうした細かな工夫でインバウンドの需要を取り込み、免税事業収入を伸ばしたのでした。

民営化が始まった2016年度に998億円だった非航空系収入は2018年度に1301億円に拡大しています。

路線誘致にも力を入れました。

2017年4月から。3000km以上の長距離国際線が新規に就航した場合には初年度の着陸料を無料にする措置を導入した所、イギリス・ブリティッシュ・エアウエイズが昨年4月から、今年の3月にはスイス国際航空がチューリッヒ線の初就航を予定するなどの成果が出ています。

関西3空港の後、国内では空港のコンセッションが進みました。

仙台空港や高松空港の民営化に続き、北海道内の7空港や福岡空港などにも広がっています。

「空港コンセッションは公的負担の削減に資するので肯定的に評価している」

政府出資の運営会社が保有している時代に、関空の負債残高は1兆円を超えていましたが、直近では8497億円にまで減少し、運営権の売却で負債解消のめどがついたそうです。

関空・伊丹の2兆2000億円が典型ですが、空港の運営権は高値で落札されるケースが目立っています。

人口減で国内需要の増加が見込めない日本の空港の運営権が高値で落札される現状に首をかしげる向きもありますが、国の金庫を預かる財務省の立場で見れば大成功と言えるでしょう。

(続く)



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マーケティング研究 他社事例 503 「インフラ運営は行政から民間へ③」 ~コンセッションで日本は未来に向かえるか~

2020-02-25 15:30:38 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 503 「インフラ運営は行政から民間へ③」 ~コンセッションで日本は未来に向かえるか~


PFIの一手法としてコンセッションが制度化されたのはPFI法が改正された2011年の事です。

しかし、道路整備特別措置法(特措法)では、有料道路を運営できる主体を都道府県や地方の道路公社に限定しており、民間企業による有料道路の運営は認めれていません。

当初、大村知事は道路特措法の改正を目指したましたが、日本の高速道路システムの根幹をなす同法の改正には国の抵抗が強く、実現に長い年月がかかるのは確実でした。

そこで、国家戦略特区の枠組みを活用して道路コンセッションを実施することにしたのでした。

2012年の事です。

「議会や地元から特に異論はなかったが、県庁の建設部から懸念の声が出た。『国から様々な圧力が来るかもしれない』と。そんな話があれば戦うと押し返したが」そのように大村知事は振り返ります。

その後も道路を巡る規制の壁にぶつかりました。

象徴的なのは、事業者の利益をどう確保するかという問題です。

有料道路はそもそも事業者が料金収入で利益を得るという前提に立っています。

しかし、利益を上げられなければ、運営権の入札に手を上げる民間企業などありません。

料金収入による利益を事業者に確保させるべく、国土交通省道路局と激しい議論を繰り広げたのでした。

さして最終的に公社が入札時に計画した料金収入のプラスマイナス6%まではARC(愛知道路コンセッションに帰属するという事で落ち着きました。

料金収入が公社計画を上回った場合に6%の超過分まではARCの取り分に、それ以上は公社に返す形になりました(公社推計を下回った場合、マイナス6%まではARCが負担、それ以上は県が負担)

6%の上限があるものの、企業努力による成果を民間企業が得る形では画期的な取り決めでした。

通勤時の割引やPA改革などが功を奏し2018年度の交通量は前年度比で4.3%増加しました。

公社計画を上回った分に相当する7億5000万円ほどが公社に還元されたのでした。

民営化以降、台風や大雪などの自然災害が起きましたが、道路管理に関わる問題は起きていません。

日本初の道路コンセッションに自信を深めた愛知県は新たな計画にコンセッションを積極的に活用しています。

昨年8月に中部国際空港島に開業した愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」では、仏GLイベンツと前田建設の合弁会社に15年間の運営権を売却しました。

GLイベンツは、スポーツイベントや国際見本市など大規模イベントを企画運営するグローバル企業です。

8月30日からのオープニングイベントでは、世界的にファン層が拡大しているeスポーツの世界大会を開催しました。

eモータースポーツとして知られる「グランツ―リスモSPORT」や芸能人による「ストリートファイター」対決などで会場は大いに盛り上がりました。

併せて開催されたKーPOPライブステージとの相乗効果もあって、3日間で3万5000人が足を運びました。

運営を始めて2か月ですが、稼働率を上方修正するなど初年度から黒字化が視野に入りつつあります。

愛知県は今後、老朽化が進む愛知県体育館に代わる新体育館の建設に「BT+C(民間が建設、公共に所有権を移した後にコンセッションとして運営権を売却する手法)」などPFIの手法を活用する見込みです。

「有料道路で愛知県の後に続くところがないのが残念だが、他の自治体もコンセッションにチャレンジして欲しい」と大村知事は語ります。

(続く)



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マーケティング研究 他社事例 502 「インフラ運営は行政から民間へ②」 ~コンセッションで日本は未来に向かえるか~

2020-02-21 09:33:27 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 502 「インフラ運営は行政から民間へ②」 ~コンセッションで日本は未来に向かえるか~


従来のPFI(PFI「ライベート・ファイナンス・イニシアティブ」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法の事で、民間の資金、経営能力、技術的能力を活用することにより、国や地方公共団体等が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供でき、事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供が期待されています。)は、民間企業が公共インフラを建設し、運営を担う国や地方自治体から建設資金を回収する仕組みが主流で、民間企業への支払いは分割で長期間にわたるため、国や自治体は建設費用を得る為に借金をする必要がないものの、長期的な財政負担が軽くなる訳ではありませんでした。

それに対して、公共施設を運営する権利を民間企業に丸ごと売却するコンセッションであれば、国や自治体は売却益で建設にかかったコストを回収できます。

運営権を買い取った事業体が業績を改善させることも期待できます。

実際に空港や有料道路、上下水道などで採用する事例が出て来ました。

コンセッションは老朽インフラの更新費用の捻出にあえぐ我が国にとって処方箋の一つになり得ます。

では、活用には何が必要なのでしょうか?

愛知県の知多半島を南北に貫く知多半島道路には、大府パーキングエリアがあります。

大変利用客が多くにぎわっています。

地名建築家の隈研吾氏が設計した木感あふれる建屋には、著名パティシエの辻口氏が手掛けるベーカリーと、東京・恵比寿の人気店「賛否両論」で腕を振るう笠原氏の和食店が軒を連ねています。

2018年のリニューアル以降、大府PAの売上高は2015年~17年の平均と比べて40%増加したのでした。

大府PAのほか、半田インターチェンジ(IC)の手前の下り車線にある阿久比PAにも著名シェフがプロデュースしたイタリアンがオープンしました。

今後は上り車線にもPAを新設し一般道からも利用可能な温浴施設などを完備した道の駅が建てられる予定です。

このPA改革を進めているのが、知多半島道路や中部国際空港連絡道路など愛知県有料道路8路線を運営している愛知道路コンセッション(ARC)です。

これらの有料道路はもともと愛知県道路公社が運営していましたが、2016年にコンセッション方式で30年間の運営権を売却したのでした。

落札したのは、前田建設工業を中心とした企業グループで、それ以来、愛知県有料道路の料金収入は入札前の公社計画を大きく上回っています。

2018年度の料金収入は174億円と公社計画より10%ほど多い結果となり、2019年度の料金収入も9月末までの時点で90億円と公社計画を15%上回りました。

PA改革など施設開発で増収を図る一方、コスト削減も徹底してきました。

象徴的なのが社員の数です。

公社時代の2015年度は95人の職員で運営していましたが、民営化によって道路運営に関わる人員は20人近く減少しました。

また、公共発注の場合は公平性の観点から広く薄く地元の業者に仕事を回す必要がありますが、民間企業は発注先や期間を自由に決めることが出来ます。

発注形態が変わったこともコスト削減に寄与したのです。

後述するように、完全な経営の自由が実現しているわけではありませんが、PA改革に見られる増収策と経営効率化によるコスト削減を見るに、コンセッションの効果は確実に出ています。

愛知県が有料道路の民営化に踏み切ったのは、道路運営の効率化と質の向上を同時に成し遂げるためです。

そして実現する手法として、運営権の民間売却であるコンセッションに目を付けたのでした。

民間の資金や創意工夫を活用する仕組みとしては、PFIは基本的に建設コストを一定の期間にわたって延べ払いする仕組みで、サービスの改善や売り上げに増に対するインセンティブがさほどありません。

それに対して、コンセッションであれば、業績改善は運営権を得た事業者の取り分になるため、民間の創意工夫が発揮されやすいのです。

もっとも、「実現までに4年8か月もかかった」と大村知事はぼやくように、日本初の有料道路コンセッションは困難を極めました。

(続く)


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