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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (116) 長尾家 29

2024年06月20日 08時42分56秒 | 甲越軍記
 佐平治景房は本丸を攻め落とされ、景虎と共に二の丸に引き入るところを、金津の士卒、大槻半弥が良き敵を求めて廊下を飛び回っていたが、景房を見つけると拳を握りしめ槍の柄を捻って躍り上がり、景房の腰のあたりを突くと
景房十九歳、痛手を受けてどっと倒れたところに、藤井源八が駆け寄って来て、たちまち景房の首を掻き切った。
喜平二景虎は時に十三歳なれど駆け戻り、兄の仇、藤井源八を一刀のもとに切り伏せた
大槻半弥は、これを見て景虎に突きかかるところに、二の丸の番士、戸倉興八郎、曽根半兵衛が駆け寄り大槻の槍を切り落とし、さらに大槻をも縁より下に切り落とした。
両士は景虎を守って、二の丸に入ったが敵が満ち満ちており、今は外へ逃れること叶わず、二の丸の板敷をはがして「しばらくここに身を隠し賜え、夜には必ずお迎えに参ります故」と景虎を隠し、二人は敵の囲みを切り抜けて落ちていった。

 府内の勇士たちは敗れてみな散り散りとなり、あるものは絶望して討ち死にするもの、あるいは晴景と死生をともにせんと思う者、冑を脱いで敵に降る者とさまざまであった。
照田常陸介、黒田和泉守、金津伊豆守、そのほか与力の諸将は本丸に入り、城の門を固く閉ざして大篝を焚いて逆襲に備えた。

その夜、本丸では勝どきを上げて、諸勇士をねぎらい、長尾景康、長尾景房の首を並べて見聞した。
城外では、長尾の士、戸倉興八郎と曽根半兵衛が景虎を救い出さんと、密かに城際にへばりついているところに、鬼小島弥太郎、秋山源蔵の二名もやって来た。
問えば、この二人は昼間の惨敗に腹を立て、城内に切り込んでうっぷんを晴らすつもりで来たという
戸倉はこれを「わずか二人で敵中に切り込んだところで、敵の二三人を討って返り討ちに会い、むなしく死ぬるだけのことである
我らは二の丸に隠した景虎さまを救いにやって来た、景虎さまを救って再び長尾の家を再興させるのが我らの務めである、合力せよ」と言えば
鬼小島、秋山は大いに喜び、共に手伝うことを快諾した
「某が一人で勝手知ったる二の丸に忍び込み、景虎さまを救い出すから、三人はここで待ち受けて路地の敵を防ぐべし」と言って戸倉興八郎は赤裸になり太刀を履き、水門より忍び入り、敵の虚を伺い何なく二の丸に入り、板敷の下から景虎を救い出した。

再び水門に向かって堀に身を沈めたところに、たまたま見回りの番兵がこれを見つけた
しかし、この兵は手柄を我一人のものとしようと考え、仲間にも知らせず水門出口で槍を構えて待ち構えた
戸倉は水中にて早くもこれを察して、足を蹴って素早く浮かび上がると、番兵は乗ったりと槍を戸倉めがけて下ろしたが、戸倉は槍先の柄をつかむと同時に全力で引きづりこんだ、番兵はたまらず真っ逆さまに水門の中に落ちたところを戸倉が首を掻き切り、景虎を連れて三人が待つ場所へ行くと、三人は喜び、急いで景虎をひき上げた。
番兵たちは、ようやく物音に気付いて五人の方に向かって駆けだした
五人は「もはや遠くへ逃れるは難し、近くでかくまわれるところに参ろう」というと
「なれば長尾家の菩提所、林泉寺はいかが」と誰からとなく声があがった。




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