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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (120) 長尾家 33

2024年06月23日 08時11分59秒 | 甲越軍記
 三人は「いや儂らは何もしてはおらんが」と言ってから、夕べの不思議な怪女の事を主に話した。
すると主は顔色を変えて「これは・・・心に覚えがある」と言い
「恨みの報いとは逃れがたいものだ、あなた方には、隠し立ては致さずすべてを話しましょう
某の妻は気性激しくて少しの事でも頭に血が上り、見境がつかなくなり下女奉公の娘たちの些細な過ちにも腹を立てて、むごい折檻を繰り返していました
そんなおり、一人の下女がまたしても犠牲になり、激しい折檻に耐えられず首をくくって死んでしまったのです
世間に漏れることを恐れて、あの榎の木の下に埋めたのです
されども無念の死を遂げた娘の執念は妻の業となって、夜な夜な妻に復讐していたのでありましょう」と話し
その日のうちに、無念の娘の供養を丁重に行い霊を祀った。
そして「我とても遊侠の暮らし気ままに行い、あらぬ悪事も度々行ってきた
人の恨みとは恐ろしきものである、これからは心を入れ替えて生きよう」
そう言うと、髪を剃って益翁と名も改めて出家した。

それからは諸国行脚の旅に出て歩くこと数年を経て、栃尾にやって来たのであった。
景虎は益翁の事を風の便りに聞き知って、ぜひ会いたいものだと思い、招いた
益翁の諸国の地理に詳しいことは一日では語り尽せず、何度も景虎は益翁を招いて話を聞いた。
益翁も景虎が若年ながら、虎をも呑む志あることを悟り、戦国諸将の強弱を話して聞かせると、ある夜、益翁に囁いた
「わが兄、晴景に申したき談あるが、周りは敵ばかりで動くこともままならない、貴僧は我を伴い府内に連れて行ってはくれぬか」と言うと、益翁はこれを快諾承知した。
「但し、その姿では行けませぬ故、髪を剃り愚僧の弟子の体で行かねばなりません、それであれば心安く行くことが出来ましょう」と言うと景虎は喜び勇み、早速に美作守に話した。
美作守は驚き、果たして敵ばかりの道中を無事に府内まで行けるだろうかといぶかしがり「長尾平六は雄略他の大将を遥かに超えております、いまだ年若い景虎さまの、照田父子討伐の志には涙溢れるばかりに感動していますが、敵勢の強い今は時期尚早と思われます、いましばし時節が到来するまで、待たれるのが宜しいかと思います」と言い
「その廻国の僧も果たしていかがなものであるかわかりません、もし道中で心翻せば、御身はたちまち危うく成るでありましょう、大切な御身でありますれば軽々しい行動は慎むべきでは」とも言った。

景虎は、心は違えども、その場は美作守に従うかの体に見せかけて退出した
そして(益翁が裏切れば、某の運の極みなり、それも仕方あるまい、ただただ手をこまねいて月日の経つのを待つことこそ悔しけれ)
益翁と心合わせて早々に髪を剃り、僧形に姿を変え、従う戸倉、秋山、曽根、鬼小島もまた髪を剃って僧形に姿を変えて、栃尾を旅立った。







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