【写真:さびが目立つ室内プール屋根裏の梁(県立彦根総合運動場提供)】
県立彦根総合運動場・スイミングセンター(彦根市松原町)室内プールの存続が危ぶまれている。屋根の老朽化が進み、県は「安全が確保できない」として来年度、休館する。財政難もあり、再来年度以降の先行きは不透明。長年、団体利用してきた学生や障害者グループは「代わりのプールがない。改築して存続してほしい」と切実な声を上げる。
今月(11月)6日、県スポーツ健康課は室内プールの団体利用者を対象に説明会を開催。老朽化のために休館することと、県の財政状況の厳しさを伝え、存続については明言を避けた。
会場からは「ほかに活動場所がない」「屋根が多少壊れても構わないので存続して」と意見が続出。県側は「ほかのプールを利用してほしい」と答えるのが精いっぱいだった。
問題の屋根は築34年。部分的な修理はされてきたが、プールの塩素の影響で、屋根の梁(はり)のさび付きが深刻だという。県は「屋根の一部が落ちることも考えられる。全面改修が必要だ」としている。
しかし、費用がかかる全面改修をまかなう余裕はなさそう。室内プールなど3つのプールからなるスイミングセンターは、2006年度から県体育協会が指定管理者として運営し、コスト削減を図っているが維持管理費は年間約4000万円に上る一方、利用料収入は1000万円にとどまっている。
県は、団体利用者の受け入れ先を探そうと甲良、愛荘両町と東近江市など、近隣の公営プールに問い合わせを始めた。だが、団体利用者は簡単にはプールを移れない事情を抱えている。
【写真:練習に励む滋賀大水泳部=県立彦根総合運動場・スイミングセンターで】
湖北地域の障害者の水泳愛好会「積み木クラブ」は10年前から利用。会員は小学校低学年から30代までの約40人。自分では泳げない人もいるため、常に10人前後のボランティアが補助に付く。1回につき、4レーンを約3時間貸し切る料金は夏が1700円、冬が3300円。このような条件で民間プールを探すのは至難の業だ。
重度の知的障害と心臓疾患のある会員の中川貴文さん(26)の母親ちづ子さん(52)は「重い障害のある子どもらが気兼ねなく泳げる場所は限られている」と語気を強める。
滋賀、県立の両大学の水泳部も危機感を募らせる。全国大会への出場選手を毎年出している創部81年目の滋賀大の前主将鎌田聡さん(4年)は「車がある部員は限られ、隣の市町のプールまで行く手段がない」と訴え、県立大の部長大西力さん(2年)は「部がなくなってしまう」と不安顔。
このような利用者の声を集めようと、彦根市水泳連盟は「彦根スイミングセンター室内25メートルプール存続の会」を立ち上げ、署名活動を開始。来年1月末に県に提出する。現在、3000人超の署名が集まっている。問い合わせは事務局=電0749(22)5945=へ。 (伊藤弘喜)
【県立彦根総合運動場・スイミングセンター】 1974(昭和49)年に開館。室内25メートル(7コース)、屋外50メートルと飛び込み用がある。年間利用者は過去10年間で4万-5万人の間で推移。79年のインターハイ、81年のびわこ国体の会場になった。
(11月23日付け中日新聞・電子版)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20081123/CK2008112302000016.html