◇県内関係者からは賛否
大戸川ダム(大津市)の建設凍結を求め、滋賀、京都、大阪、三重の4知事が11日、和歌山市で発表した共同見解。国から地方主導に河川政策を変える「地方分権の試金石」(橋下徹・大阪府知事)となる動きで、国に自治体の意向を尊重するよう、治水政策の見直しを迫った。県内の関係者からは賛成、反対双方の意見が上がった。【服部正法、稲生陽、近藤希実】
◇現実的な整備を--知事
嘉田由紀子、橋下両知事のほか、京都・山田啓二、三重・野呂昭彦の4知事が同ダムについて「河川整備計画に位置づける必要はない」と凍結で合意。同日、近畿ブロック知事会議の前に記者会見し、共同見解を発表した(野呂知事は欠席)。
嘉田知事は会見後、「安全安全と言って、大きな(治水)施設に傾いてきたが、施設だけでは守れない」と話した。そのうえで「現実的に段階的に、できることから整備することが大事だ」と、ダムのような長期間かかる事業ではなく、短期間で着実に治水効果が上がる政策や財政負担も考慮すべきだとの認識を示した。
◇反応二つに割れる--県議会
県議会の反応は二つに割れた。先月の本会議で、近畿地方整備局に淀川水系河川整備計画案を見直すよう求める意見書を24対22の賛成多数で可決。賛成した民主党・県民ネットワークの江畑弥八郎議員は「知事の共同の意見は歴史的な事。いい流れだ」と歓迎。「長期間かかる計画は途中で見直しも必要。道路整備や防災を含め、後処理のシステム作りが課題」と語った。
一方、意見書に反対した自民党・湖翔クラブの佐野高典議員は「プラスは何一つない。道路や下水道の整備は遅れ、財政難の中で(ダムの代替の)河川改修ができるかも疑問」と反発。滋賀では知事意見に県議会の議決が必要と県条例で定められているが、「12月議会で厳しく追及する」と話した。
◇意見に敬意を表す--流域委員長
国の諮問機関「淀川水系流域委員会」の中村正久委員長(滋賀大環境総合研究センター長)は県庁で「連携して意見を出したことに深く敬意を表したい。(ダム建設を不適切とした)委員会の意見書の趣旨を十分くみ取ってもらった」と評価。4知事が大戸川ダムを凍結とした点は「歓迎する。整備局は委員会、府県と共同で前向きに課題に取り組んでほしい」と求め、他の3ダムに関しては「意見書に挙げた項目に十分配慮してほしい」と注文した。
◇地域に説明できず--大津市長
4知事が共同見解を発表後、目片信・大津市長が市役所で記者会見。「知事に伝えたいのは『聞く耳を持ってほしい』ということ」と批判。「知事の強い意向に押し切られた。他のダムに言及せず、大戸川だけに絞って他の知事に話をしたと受け止めている。自分の言いたい事は言っても、他の話は聞かないのでは、我々は地域に説明ができない」と語った。
また、近畿地方整備局がダムが中止なら周辺道路に予算をつけないとした点について、「ダムあっての整備で、切り離すことはできない。県道なので、当然県がやるべき仕事」と県をけん制した。
(11月12日付け毎日新聞・電子版:同日付け朝日・京都・読売の電子版なども報道)
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20081112ddlk25010473000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20081111-OYT8T00782.htm
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000000811120003