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新国立競技場 NHKニュース 疑問 メディア批評

2015年08月28日 21時49分54秒 | 新国立競技場
新国立競技場 NHKニュースへの疑問 ~メディア批評・ウオッチドッグ~

■ 「設計から施工を一貫して発注」と「公募型プロポーザル方式」の意味を理解していない

新国立競技場 きょう整備計画決定へ

今後のスケジュールは

新国立競技場について今後、予定されているスケジュールです。
28日、政府は関係閣僚会議を開いて、新しい国立競技場の性能や工期、総工費の上限などを盛り込んだ整備計画を決定することにしています。
来月上旬には設計から施工を一貫して発注する「公募型プロポーザル方式」で業者の募集が始まり、11月に締め切られる予定です。

(8月28日 5時15分 NHKニュース)

 「設計から施工を一貫して発注する」は「デザインビルト方式」(design to construction system)と呼ばれる「発注方式」である。公共工事においては、設計・施工分離の原則」が明確化され、設計と施工を別々の主体(企業等)で実施することにより、設計のチェック・品質確保・コスト管理を図ることを基本としている。 しかし、近年、公共事業でのコスト削減策として、設計の一部と工事を一体の業務として発注する方式が登場した。受注業者がもつ新技術を生かした設計が可能になり、コストの削減や工期短縮が可能になり、成果物の高精度・高品質が期待できるとしている。
 これに対し、「公募型プロポーザル方式」というのは、調達方式で、一定の資格要件は課した上で幅広く応募者を「公募」して、設計の取組方針等の提案を求め、総合的に評価して設計者を特定する方式だ。設計料の競争入札ではなく、設計者としての適正・能力等を重視して応募者の選定を行う方式である。
 「施工を一貫して発注する『公募型プロポーザル方式』」という表現は適切でない。
 筆者は、新国立競技場の建設費が高騰した要因の一つには、日本スポーツ振興センター(JSC)が採用した「デザインビルド方式」と「公募型プロポーザル方式」にあるという疑念を持っている。新国立競技場の建設工事の調達問題はジャーナリズムはしっかり監視する必要がある



■ 「未公表分」の“怪”
新国立競技場「上限1550億円」など決定

 「焦点となっていた総工費の上限は1550億円として、政府は、計画の見直しを決定する前に公表していた2520億円に未公表分を加えた2651億円と比べて、1100億円余り削減したとしています」

(8月28日 9時05分 NHKニュース)

 「未公表分を加えた2651億円」とは何かを伝えていない。新国立競技場の総工費「2520億円」と日本スポーツ振興センター(JSC)は発表していたのではないか。 今回、突然「未公表分」があったとしているが、説明もされていないし、余りにも不明瞭で、問題である。「1550億円」への不信感がますます生まれる。
 こうした疑問点きちんと取材をして明らかにするのがメディアとしての責務だろう。 メディアは政府から「未公表分」と説明されて、簡単に納得するのは“お粗末”だと思うが……。


 「周辺整備費237億円」はどこへいった? 「1550億円」の内訳が不明

「周辺整備費237億円」の内訳は、「明治公園整備」33億円、「周辺人工地盤」143億円、「歩行者ブリッジ外苑西」22億円、「歩行者ブリッジ新宿道」19億円、「水道等インフラ移設」15億円、「サブトラック連絡通路」4億円、「明治公園撤去」1億円とされている。 総工費「2520億円」が決められた際には、明らかにされてなかったが、含まれていなかった可能性が強い。
 「周辺人工地盤」については、新国立競技場の建設用地が、高低差7~8メートルの斜面になっており、この敷地をフラットにして競技場や公園を建設するために必要な基盤整備である。また最寄りの駅からのアクセスを確保する「歩行者ブリッジ」、立体公園化する「明治公園整備」など、“バリアフリー”を確保するために基盤整備として必須の工事である。
2020年東京オリンピック・パラリンピックのキーワードの一つは“バリアフリー”、パラリンピック開催をきっかけに、車いすなどでも容易に移動可能な障害者や高齢者に“やさしい”街づくりに大都会東京が大きく踏み出すとしていたのではないか。
今回の「1550億円」には、「周辺整備237億円」は、どのように処理しているのだろうか? “曖昧”にする問題でない。メディアはきちんと取材して明らかにすべきだ。





東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
新国立競技場建設費 2520億円破綻
ゼネコン主導の新国立競技場建設計画への疑問
二転三転「維持費と収入」 新国立競技場収支への“疑念
新国立競技場 “国際公約” 検証“屋根なし”は“公約違反”ではない
有識者会議の責任~国立競技場将来構想有識者会議~
審査委員長の“肩書き”が泣いている 新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏会見
巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト
破綻した“多機能スタジアム” 新国立競技場 機能を絞って“コンパクト”に
「五輪便乗」 日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟建設 16階建の高層ビル
東京オリンピック 競技場 東京ベイゾーン ヘリテッジゾーン


2015年8月28日
Copyright (C) 2015 IMSSR

******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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新国立競技場総工費1700億円が妥当!

2015年08月24日 19時56分24秒 | 新国立競技場
「総工費」の上限は「1700億円」が妥当な水準




新国立競技場の総工費「1550億円」の方針
政府は、新しい国立競技場の整備計画で焦点となっている、総工費の上限について、「1550億円」とする方針を固め、28日関係閣僚会議を開いて、競技場の性能や工期も含めて整備計画を決定する方針としている。(出典 NHKニュース 2015年8月27日)

 2015年8月14日、政府は、新国立競技場の整備計画を再検討する関係閣僚会議を開き、施設の機能は「原則」としてスポーツ競技用のものに限定し、屋根は観客席の上部にだけ設けることなどを盛り込んだ、整備計画の基本的考え方を決定した。
 しかし最も重要な課題、「総工費」を先送りにしている。一体どのくらいの額で示すのか、
2014年1月、文科省は、「新国立競技場設計条件」(フレームワーク設計)を受けて、新国立競技場関連の予算を、新競技場建設費「1388億円」、解体費「67億円」、周辺整備費「237億円」、合わせて1692億円(2013年7月時点の単価、消費税5%)を“上限”とする方針を事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に示した。
 この“上限”を基本にして、可動式屋根や、電動式可動席など設置しない機能の経費を差し引いた上で、資材費と労務の値上がりで25%増、消費税の増分を加えて算定するとほぼ上記の水準となると思う。必ず「周辺整備費」も含めた額で提示すべきである。本体建設費だけなら「1400億円」程度である。
 今月中をめどに決めるとしている新国立競技場の機能の詳細は、総工費を決める際にも重要だけでなく、東京五輪開催後の維持管理や収支にも極めて重要なポイントである。
新国立競技場の“白紙撤回”の再出発はまさに正念場を迎えている。





東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
新国立競技場建設費 2520億円破綻
ゼネコン主導の新国立競技場建設計画への疑問
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新国立競技場 “国際公約” 検証“屋根なし”は“公約違反”ではない
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審査委員長の“肩書き”が泣いている 新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏会見
巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト
破綻した“多機能スタジアム” 新国立競技場 機能を絞って“コンパクト”に
「五輪便乗」 日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟建設 16階建の高層ビル
東京オリンピック 競技場 東京ベイゾーン ヘリテッジゾーン




2015年8月24日
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廣谷  徹
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International Media Service System Research Institute
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新国立競技場 国際公約 東京オリンピック招致 安倍首相

2015年08月21日 09時09分14秒 | 新国立競技場
新国立競技場 “国際公約” 検証“屋根なし”は“公約違反”ではない




ザハ氏事務所がJSC批判 「建設費高騰はデザインが原因でない」
2015年7月28日、ザハ・ハディド氏の事務所は、ホームページ上で、「コスト高は東京の資材や人件費高騰によるもので、デザインが原因ではない」との声明を発表した。また、費用がかかりすぎるとされたアーチは230億円ででき、総工費の10%未満だったとしている。
建設費が膨らんだ要因について「完成日が動かせないプロジェクト、建設コストの急上昇、さらに国際的な競争がない環境のなか、少数の候補から建設会社を選定すれば競争原理が働かなくなるとJSC=日本スポーツ振興センターに警告したが聞き入れられなかった。十分な競争原理が働かないなかで、あまりにも早期に建設会社を選定したことが見積もりの過剰な高騰を招くことになった」と建設会社の選定方法に問題があったとの見方を示した。
そして、計画見直しで新しいデザインを選べば、質が悪くなるうえ、建設費も高くなるリスクがあるとし、安倍晋三首相に対し、有効な提案をする準備があると書簡を送ったことも明かした。
ザハ・ハディド氏は、8月にも来日して、自らの言葉で説明する準備を進め、日本で定着している「総工費高騰はデザインのせい」というレッテルをぬぐい去り、総工費を抑えた新案を準備していると伝えられている。

(出典 朝日新聞 NHKニュース 日刊スポーツ 2015年7月28日)


(New National Stadium, Tokyo, Japan Satement by Zaha Hdid Architecs 2015年7月28日 抜粋)
Zaha Hdid Architecs

新国立競技場 首相「計画を白紙に戻す」
 安倍総理大臣は、新国立競技場について、「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直すと決断した」と述べ、計画を見直す方針を表明するとともに、下村文部科学大臣らに新しい計画を速やかに作成するよう指示したことを明らかにした。
安倍総理大臣は「オリンピックは国民皆さんの祭典だ。主役は国民一人一人、そしてアスリートの皆さんだ。だから皆さんに祝福される大会でなければならない。国民の皆さん、またアスリートたちの声に耳を傾け、1か月ほど前から計画を見直すことが出来ないか検討を進めてきた」と述べ、そして、「手続きの問題、国際社会との関係、東京オリンピック・パラリンピック開催までに工事を終えることができるかどうか、またラグビーワールドカップの開催までには間に合わなくなる可能性が高いという課題もあった。本日、オリンピック・パラリンピックの開催までに間違いなく完成することができると確信したので決断した。オリンピック組織委員会の森会長の了解もいただいた」と述べた。
(要約 NHKニュース 2015年7月17日)


新国立、2千億円未満に減額検討 デザイン見直しも
 2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設問題で、安倍政権は2520億円に膨らんだ総工費を2千億円未満に減額する方向で検討に入った。巨額工費に対する世論の強い批判を受け、計画の大幅な見直しを迫られた。
 政府関係者によると、今のデザインを決めた12年の国際コンペで選考に残った別のデザインを生かした案への変更や、工期を延長し一度に雇うより人件費を抑えることを検討している。
 工期を延長すると、競技場を使うはずだった19年のラグビーワールドカップには完成が間に合わないため、今後、安倍晋三首相が東京五輪・パラリンピック組織委員会会長でラグビー界に影響力のある森喜朗元首相と協議し、見直しを最終決断する見通しだ。
 新国立競技場は2本の巨大アーチで建物を支える特殊な構造で、総工費が当初の約1300億円から2倍近くまで増大していた。

(出典 朝日新聞 2015年7月16日)

高すぎ“新国立”に総理、総工費削減、計画変更検討
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる「新国立競技場」について、安倍総理大臣が総工費2520億円の削減に向け、計画を見直す検討に入ったことが明らかになった。
 新国立競技場を巡っては、2本の巨大な鋼鉄製の「キールアーチ」などが総工費を押し上げ、当初の予算を900億円以上、上回り、2520億円に上った。関係者によると、今月末にマレーシアでIOC(国際オリンピック委員会)総会が開かれ、この場でメイン会場の建設計画を報告することにしている。政府はこれまで計画の変更はないとしてきましたが、与党などからは巨大な予算に対する批判が上がっていた。このため、安倍総理は総工費を削減するために建設計画を変更する方向で検討に入ったという。今後、オリンピック・パラリンピック組織委員会と調整に入るものとみられる。

(出典 ANNニュース 2015年7月15日)


新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏会見 「大幅なコストアップの詳細は承知していない」
 総工費が「2520億円」に高騰して、世論から厳しい批判を受けている新国立競技場建設問題について、新競技場のデザインを決めた国際デザイン・コンクールの審査委員長を務めた安藤忠雄氏(73)が経緯について初めて記者会見を行い、「デザインの選定までが仕事でコストの決定議論はしなかった」と述べた。
冒頭に、7月7日に開かれた新国立競技場の計画を公に議論する最後の機会となった「有識者会議」に欠席した理由について「大阪で別の会合があったので欠席した」と釈明した。
 「私たちが頼まれたのはデザイン案の選定まで、実際にはアイデアのコンペなんですね。こんな形でいいなというコンペですから、徹底的なコストの議論にはなっていないと思う。私自身こんなに大きなものは造ったことがない。流線形で斬新なデザインでした。なによりもシンボリックでした。この難しい建築工事を日本ならできると私は思いました」
 また、政府内で総工費2520億円の削減に向け、計画を見直す検討に入ったことについて、「建築家、ザハ・ハディド氏のデザインは外すわけにはいかないと思うが、2520億円は高すぎる。もっと下がらないかと私も聞きたい。徹底的議論して調整して欲しい」と述べた。
 新競技場の総工費が問題になってから、安藤氏が公の場で発言するのは初めてで、JSCによると、安藤氏からJSCに会見の要望があったという。
 安藤氏は、総工費が正式に示された7日の有識者会議を欠席したことから、下村文部科学相から「選んだ理由を堂々と発言してほしい」と指摘されていた。

(2015年7月16日)

新国立競技場 “国際公約” 検証“屋根なし”は“公約違反”ではない
 新国立競技場の建設を巡って、「2520億円」の建設計画を支持する根拠として、“国際公約”という声が関係者から聞こえる。
 2015年7月8日、菅義偉官房長官は記者会見で、新国立競技場の総工費が「2520億円」となったことに関し、現行のデザインについて「変更は我が国の国際的信用を失墜しかねない」と述べ、維持すべきだとの考えを示した。
さらに建設高騰の主な要因となっている「キールアーチ」について「このデザインを国際オリンピック委員会(IOC)総会で世界に発信して、東京が開催を勝ち取った経緯もある」と強調した。こうした意見は、新国立競技場の建設を現行のデザインで建設すべきだと主張する関係者の根拠となっている。
一方、IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長は2015年6月末、準備状況を監督するために来日したが、毎日新聞は、単独取材を行い、現行の奇抜なデザインでなければ国際公約違反かを聞いたところ、「(ジョン・コーツ委員長は)けげんそうな表情を浮かべて答えた。『(日本)政府が決めること。変更したいと思えば、すればいい。総工費が増大して負担となることは心配している。IOCが象徴的な施設を求めたものではない』」と伝えている。(毎日新聞特集ワイド:なぜ見直せない「新国立」 2015年7月6日 毎日新聞社説 2015年7月9日)

IOC関係者は、一貫して、新国立競技場の建設計画見直しについて、「否定的」なコメントを出した経緯は一切ない。
 しかし、日本では、安倍首相、下村文科相、森組織委員会会長、日本スポーツ振興センター(JSC)、すべて口を合わせて、“国際公約”を盾に、変更はしないで当初計画通り建設することを主張していた。
  新国立競技場の建設計画変更は、ザハ・ハディド氏デザインを高らかに歌い上げた日本の東京五輪関係者の“顔がつぶれる”ということで、“国際公約”を持ち出したという疑念が拭えない。
 ようするに招致演説で新国立競技場の建設を“約束”した安倍首相の“顔をつぶさない”ということではないかという印象を持つ。

 日本は「2020年東京五輪」を招致するにあたって、新国立競技場について何を“公約”したのか、本当に誘致に成功した「大きな原動力のひとつ」だったのか、検証する。


招致演説で何を訴えたのか?
 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会総会、7日は、2020年夏季五輪開催地決定の投票だった。立候補していたのは、スペインのマドリード、トルコのイスタンブール、そして2回目の開催を狙う東京。どこの都市が選ばれてもおかしくない紙一重の激しい“競争”だった。投票の直前まで招致活動が繰り広げられていた。
 投票直前に行われた最後の招致演説は、冒頭に、高円宮妃久子さまが東日本大震災の復興支援にフランス語も交えて感謝の言葉述べられた上で、佐藤真海氏(パラリンピック 走り幅跳び)、太田雄貴氏(フェンシング)など現役アスリート、滝川クリステル氏(フリーアナウンサー)、安倍晋三首相、猪瀬 直樹東京都知事、竹田 恆和氏(招致委員会理事長)、水野 正人(招致委員会副理事長)がスピーチを行った。
 第一回目の投票では、東京が46票、イスタンブールが26票、マドリードが26票、決選投票に進む2位を決める投票で、イスタンブールが勝ち、東京とイスタンブールの間で決選投票が行われた。結果、東京が60票、イスタンブールが36票、2020年夏季五輪開催地は「大差」で東京に決まった。
 事前の予想では、東京は決して優位ではなかった中で、“劇的”な勝利だった。
 
 安倍首相は招致演説で、「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、確かな財政措置に至るまで、2020年東京大会は、その確実な実行が確証されたものとなります。」と述べている。
 新国立競技場の建設は、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致の“切り札”になっていたと関係者は言うが、招致演説の内容で見る限り、新国立競技場に触れたのは、安倍首相のこの部分だけである。
 投票直前に行われた最後の招致演説は、登壇者の選択やスピーチの内容が素晴らしく、大成功で、各国のIOC委員に“東京”をアピールするのに大いに効果的だったと言われている。
 しかし、この招致演説で、印象的だったのは、新国立競技場ではなかったのではないかと思う。招致演説で印象的だったのは、スポーツを愛する“日本人”だったり、「おもてなし」だったり、パラリンピックの出場者の情熱だったり、東日本大震災からの復興なのではないか。新国立競技場の建設が印象的だったと報道は何もない。想像ではあるが、各国のIOC委員の印象も同様だったのではないか? つまり新国立競技場は、「2020年東京大会」招致の“切り札”でもなんでもなかったのではないか?


安倍首相は知らなかった ザハ・ハディド当初案は“実現不可能”
 2015年8月19日、第三者委員会の第二回会合に提出された資料によると、設計会社JVは、ザハ・ハディド氏のデザインを“忠実に” 再現し、かつ各競技団体の要望を全て盛り込むと、総工費「3535億円」に膨らむという試算結果を、2013年7月30日に、日本スポーツ振興センター(JSC)に報告をしていたことが明らかになった。「本体工事」は「3092億円」、「周辺整備」は「370億円」、「解体費」は「73億円」、試算条件は2013年7月単価、消費税5%である。
ザハ・ハディド案のデザインが採用された時の概算経費、「1300億円」の2倍以上に膨れ上がった額である。

 日本スポーツ振興センター(JSC)からこの報告を受けた文科省は、大幅なコスト削減の指示、日本スポーツ振興センター(JSC)は、8月20日、延べ床面積を29万平方メートルから22万平方メートルに減らすなど「1358~3535億円」の複数の縮小案を報告していた。
 この時点で、文科省や日本スポーツ振興センター(JSC)など関係者は、ザハ・ハディド氏の当初デザイン案は、ほぼ“実現”不可能と認識していたと思われる。しかし、すでに招致ファイルにはザハ・ハディド氏の当初デザイン案が掲載され、新国立競技場の建設をアピールして、東京五輪の招致運動がラストスパートしていた中で、“起動修正”をためらい、本腰で乗り出すことはなかった。
 しかし、事実上“実現不可能”、“粉飾”された建設計画だった。

 一方、文科省は、この事態を把握しながら、安倍首相や下村文科相には報告せず、2013年9月7日、安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、ザハ・ハディド氏のデザインによる当初案で招致演説をしていたことが明らかになった。
(朝日新聞 2015年8月21日)
 ザハ・ハディド氏の当初案の“実現可能性”がほとんどないという認識にありながら、当初案で、“国際公約”をしていたとすれば、なんとも“お粗末”で“無責任”な対応と批判されても当然である。

いずれにしても、2015年9月7日には、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会IOC総会では、ザハ・ハディド氏のデザイン案の新国立競技場建設計画のままで、安倍総理の招致演説が行われることになる。そして、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致に成功した。


「2020年東京大会」の招致ファイルから見る“公約”は“レガシー”(未来への遺産)と“コンパクト”
 一方、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会が行ってきた招致活動ではどうなっていたのだろうか?
2013年1月7日、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、14項目から成る「TOKYO2020立候補ファイル」を国際オリンピック委員会(IOC)本部(ローザンヌ)へ提出した。
「立候補ファイル」は、“東京”が2020年夏季五輪開催都市に立候補する際の「公約」である。
最初に、「2020年東京大会」開催趣旨について以下のように記述している。
「1964年大会が日本国内及び世界中に力強い感銘を与えてから約50年が経過した。世界の最先端をいくこの都市は、オリンピックに更なる価値をもたらし強化する新たな基盤を世界規模で作り出すことになる。2020年東京大会は、急速に変化する新しい世界に生きる若い世代をスポーツやオリンピックに結び付け、次世代への長期にわたる資産を創造することになる。」
「2020年東京大会」をIOCが推進している“レガシー”(未来への遺産)にするという宣言である。
“レガシー”(未来への遺産)というキーワードは招致ファイルの中に頻繁に登場する。
そして、「都市の中心で開催するコンパクトな大会」も強調している。
「私たちの大会コンセプトは、大都市の中心でかつてないほどコンパクトな大会を開催し、スポーツと感動の中心にアスリートを据えることである。
 2020年東京大会は、成熟し今なお進化を続ける大都市の中心で開催される。東京が掲げるコンパクトな大会により、私たちは過去からの資産を大切にしながら明日に向かって進んでいく都市の姿を世界に伝えていく。
コンパクトをコンセプトとして掲げる2020年東京大会では、アスリートと観客の双方にとっての利便性を考慮し、下記により競技会場やインフラ設備を配置する。」
 「コンパクト」も「2020年東京大会」開催に係る“キーワード”で招致ファイルの中で登場する。「コンパクト」な大会を目指す、「2020年東京大会」を立候補するにあたって“公約”だ。
「2020年東京大会」のキーワードは、「コンパクト」と「レガシー」、このキーワードは、世界に対する“公約”であると共に、国民に対する“公約”である。

 続いて、競技会場やインフラなどの整備についての考え方を次のように記述している。


「物理的レガシー: 東京の新しい中心の再活性化」

(出典 「TOKYO2020立候補ファイル」 2013年1月7日)

 「東京の新しい長期計画と完全に一致して、2020年東京大会は東京に有益な物理的レガシーを残す。
 2020年東京大会は、新設または改修された競技やエンターテイメントのための会場や施設、新たな緑地を地域にとって重要なポジティブなレガシーとして提供する。それらのレガシーには次のものが含まれる。

・ 2020年東京大会に向けて国立霞ヶ丘競技場、海の森水上競技場、夢の島ユース・プラザ・アリーナA及びB、オリンピックアクアティクスセンターなど、11の恒久会場が整備される。
・ 国立代々木競技場、東京体育館、日本武道館など、1964年オリンピック大会時の施設を含む15の主要コミュニティ・スポーツ施設が改修される。」
(中略)
・ 東京圏にある33競技会場のうち28会場、全てのIOCホテル及びIPCホテルが選手村から半径8km圏内に存在する、コンパクトな大会を開催する。
・ 過去の遺産を守りながら未来へのビジョンを示すため、競技会場を、運営・テーマにより2つのゾーンに分ける。一つは1964年東京大会のレガシーが集積するヘリテッジゾーン、もう一つは未来に向けて発展する東京の姿を象徴する東京ベイゾーンである。

 2020年東京大会のオリンピックスタジアムが位置するヘリテッジゾーンは、1964年大会のオリンピック・レガシーを今に語り継ぐ場所である。1964年東京大会のために建設された主要会場を、2020年東京大会で使用することは、次の世代へのオリンピックの新たなレガシーを創造し、継承していく精神を示すこととなる。
オリンピックスタジアムとなるのは、国立霞ヶ丘競技場である。国立霞ヶ丘競技場は、1964年大会のオリンピックスタジアムであり、テストイベントが行われる2019年までに最新鋭の競技場に生まれ変わる予定である。2020年東京大会では、8万人収容のオリンピックスタジアムとして、開・閉会式、陸上競技、サッカー、ラグビーの会場となる。
ヘリテッジゾーンには、同じく1964年大会の会場となった国立代々木競技場、東京体育館及び日本武道館を含め、計7つの競技会場が位置する。」

 東京ベイゾーンは、東京湾の臨海部に位置している。水と緑、生物多様性の拠点として開発される予定の場所であり、東京の未来への発展を力強く感じさせるゾーンである。東京ベイゾーンには、計30の競技が行われる21の競技会場があるほか、IBC/MPCが設置される。そのIBC/MPCは、日本最大の国際会議・展示施設である東京ビッグサイトに置かれる。なお、主要なメディアホテルおよび7つの競技会場がIBC/MPCから徒歩可能な範囲内にあり、東京圏にある全33会場中残りの21会場は半径10km圏内に位置する。」

 ここでも、「コンパクト」、「レガシー」(未来への遺産)のキーワードがしっかり記述されている。
新国立競技場については、「2019年までに最新鋭の競技場に生まれ変わる予定である。2020年東京大会では、8万人収容のオリンピックスタジアムとして、開・閉会式、陸上競技、サッカー、ラグビーの会場となる。」という記述しかない。
 「2020年東京大会」で、IOCや各国に強調したポイントは、「東京圏にある33競技会場のうち28会場、全てのIOCホテル及びIPCホテルが選手村から半径8km圏内に存在する、コンパクトな大会」であり、新国立競技場ではない。
 もっともこの“公約”、「半径8km以内」は、“経費節減”で競技場の新建設を相次いで中止し、既存の施設に振り替えるという計画の見直しで、事実上破たんしているのは承知の通りだ。 明確な“公約違反”であろう。
 建設中止の競技場は、夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)、夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)、若洲オリンピックマリーナ(セーリング)、ウォーターポロアリーナ(水球)(新木場・夢の島エリア)の4か所である。
バトミントンは、武蔵野森総合スポーツ施設(東京都調布市)、バスケットはさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)、セーリングは江の島ヨットハーバー(藤沢市)、水球は東京辰巳国際水泳場に会場変更することが決まった。
東京ビッグサイト・ホールA (レスリング)と東京ビッグサイト・ホールB (フェンシング・テコンドー)は幕張メッセ(千葉市)となり、幕張メッセでは、レスリングとフェンシング、テコンドーの3つの競技の会場となった。
 また馬術は、障害馬術、馬場馬術、総合馬術は馬事公苑に変更した。
 自転車については、トラックの競技を伊豆に変更する方向検討中である。
 しかし、IOCはこの“見直し”について、「コンパクトな大会を目指す」という趣旨を理解し、基本的に了承しているのである。

 続いて、「会場の概要」では、ザハ・ハディド氏のデザイン(国際デザイン・コンクールで採用された案)の新国立競技場の完成予想図を掲載すると共に、次のように記述している。



(出典 「TOKYO2020立候補ファイル」 2013年1月7日)

「会場の概要」
(出典 「TOKYO2020立候補ファイル」 2013年1月7日)

 「東京は大会のコンセプトである「コンパクト」に沿ってその過去と未来が独特な形で融合され、過去の遺産を守りながら、未来に向かって「未来をつかむ(Discover Tomorrow)」ことができる都市であることを世界に示している。会場は1964年東京大会のレガシーが残るヘリテッジゾーンと、未来の都市開発モデルである東京ベイゾーンという2つのテーマ及び運営ゾーンに位置する。東京圏にある33の競技会場のうち28会場は選手村から半径8km圏内にあり、選手のことを最優先に考えた、極めてコンパクトな配置となっている。
 計画されている37の競技会場のうち15会場(41%)は既存のものであり、その中の2会場は2020年大会のために恒久的な改修が必要となる。既存会場のうち3会場は1964年大会の時に整備されたものであり、当時水泳とバスケットボールの会場だった国立代々木競技場は2020年ではハンドボールの会場に、体操や水球が行われた東京体育館は卓球の会場、日本武道館は1964年と同様2020年も柔道の会場として利用される。
 2020年大会に向けて建設が予定されている競技会場は、総競技会場数のうち22会場(59%)であり、そのうちの11会場は東京のレガシーとして残す計画である。こうした恒久施設のうち、1964年のオリンピックスタジアムであった国立霞ヶ丘競技場は、テストイベントが行われる2019年までの完成を予定しており、2020年大会では開・閉会式、陸上競技、サッカー及びラグビーの会場となる。武蔵野の森総合スポーツ施設は、東京西部の多摩地域に2016年の完成を目指しており、2020年大会では近代五種が行われる予定である。
会場の選定、建設状況及び立地は、東京の中長期計画「2020年の東京」を中心に、社会、開発、持続可能性に関わる東京都の計画に合わせるとともに、2020年東京大会を選手重視のコンパクトな大会にすることを目指す。」



(出典 「TOKYO2020立候補ファイル」 2013年1月7日)

 新国立競技場については、テストイベントが開催される2019年までに完成させることや、収容人数を「8万人」し、「開・閉会式、陸上競技、サッカー、ラグビーの会場」とする以外に記述はない。完成予想図を見れば、“屋根付き”であることは分かるが、“屋根付き”のスタジアムであることをアピールしている形跡は一切ない。屋根付き”かどうかにこだわるのは、専ら“日本”の“事情”なのである。“公約”も何もしていないのである。IOCも、“斬新なデザインで、”“屋根付き”の現行案は“前向きに”評価しながらも、変更するかどうかは、デザインの問題であるとして、主催国が決める案件で、特に問題ではないとしているのである。
 「2020年東京大会」を支持した各国IOC委員にヒアリングをしてみたらどうか? 筆者の予想だが、「新国立競技場を“屋根付き”にするかどうか、開催国で決めれば良い。“屋根なし”にしたところで、“公約違反”でもなんでもない」と全員が答えるだろう。
 
 “国際公約”を理由に、「2520億円」の新国立競技場にこだわる根拠はなにもない。


IOCバッハ会長 “見直し”に理解 「デザインは問題ではない」
 7月18日、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は英国セントアンドルーズで「IOCの関心は競技場のデザインではなく、機能的な競技場が準備されるかだ。見直しで最新鋭の競技場が妥当な金額で造られることになると思う」と述べ、見直しに理解を示した。
 バッハ会長が主導して昨年末にまとめた中長期の五輪改革プラン「アジェンダ2020」では、五輪のコスト削減や既存施設の利用を掲げる。
バッハ会長は、横浜国際総合競技場など別施設の利用を否定した上で「新国立競技場を造ることは日本政府が決めたこと。この見直しによるコストカットは、アジェンダ2020に合致する」と話した。

(要約 朝日新聞 2015年7月18日)




新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(6) 陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに





「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパククトな大会”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京五輪大会 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市





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2015年7月12日
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廣谷  徹
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新国立競技場 開会式 リハーサル 「3ヶ月」では間に合わない?

2015年08月20日 16時25分39秒 | 新国立競技場
新国立競技場 開会式 リハーサル 「3ヶ月」では間に合わない?





(北京オリンピック 2008年 「人民網日本語版」 2008年08月12日)

オリンピックのハイライトは、「開会式」である。毎回、開催国が“威信”をかけて力を入れて演出の豪華さを競う。
北京五輪では、映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)氏、ロンドン五輪ではアカデミー監督賞を受賞したダニー・ボイル氏が総監督を務めた。
 当初のオリンピックの開会式は、入場行進、聖火点灯が中心だったたが、回を重ねるごとに演出に工夫を凝らし、3時間以上かけて催される巨大な“ショー”となっている。
 開会式の競技場は、まさに“ステージ”となり、コンサート、舞台芸術、映像上映、マスゲーム・ショー、アクロバット・ショー、空中を舞う仕掛け、そして花火が繰り広げられる。出演者は1万人を超える。
 開会式の経費も巨額で、北京オリンピックでは約110億円、ロンドンオリンピックでは約33億円とされている。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開会式の演出は、これからプラニングされていくことになるが、これだけの開会式を行おうとすると、その準備やリハーサルは長期間に渡って実施しなければならないだろう。
 無数のLEDで構成される映像スクリーンや高繊細のビデオプロジェクターなどの映像システム、そして最新の音響システムと競技場内で繰り広げられるイベントと連動させるのが開会式の“感動”を生みだすポイントである。
 舞台は、「8万人収容」の巨大スタンド。
 気の遠くなりそうな詳細な演出の進行が求められことになる。
 それを成功させるには、綿密なリハールを繰り返すことが必須である。本番にたどりつくまで「3ヶ月」では到底無理だと思う。それを成功させるには、綿密なリハールを繰り返すことが必須である。本番にたどりつくまで「3ヶ月」では到底無理だと思う。ロンドンオリンピックの開会式のリハーサルは200日に及んだという。(出典 Wikipedia)
大会運営関係者はこの準備期間をどのように考えているのだろうか?
 もっとも、北京五輪やロンドン五輪の開会式と、演出の“豪華さ”を競うことはあきらめて、極力簡素にして、「3ヶ月」の準備期間で間に合うように設計するという方法もある。“シンプル”な大会運営を掲げる東京五輪にとっては、その方がふさわしいかもしれない。東京五輪の世界のアピール度が多少、犠牲になってもしかたがない。
 新国立競技場の完成時期が前倒しできなければこの方法しかない。
 判断は早くすべきだと思う。






(北京オリンピック 2008年 「人民網日本語版」 2008年08月12日)




東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
新国立競技場建設費 2520億円破綻
ゼネコン主導の新国立競技場建設計画への疑問
二転三転「維持費と収入」 新国立競技場収支への“疑念
新国立競技場 “国際公約” 検証“屋根なし”は“公約違反”ではない
有識者会議の責任~国立競技場将来構想有識者会議~
審査委員長の“肩書き”が泣いている 新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏会見
巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト
破綻した“多機能スタジアム” 新国立競技場 機能を絞って“コンパクト”に
「五輪便乗」 日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟建設 16階建の高層ビル
東京オリンピック 競技場 東京ベイゾーン ヘリテッジゾーン




2015年8月20日
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新国立競技場 日本青年館 五輪便乗 JSC本部 新高層ビル

2015年08月11日 08時03分53秒 | 新国立競技場
「五輪便乗」 日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟建設
16階建の高層ビル





 2015年8月10日、参議院予算員会で、新国立競技場の建設問題が取り上げられ、民主党の蓮舫元行政刷新相は、“白紙撤回”されたにもかかわらず、現在も進められている関連工事の総額が約320億円あるとして、政府を追及した。
 この中で、問題視したのが、「JSC本部棟・日本青年館新営設計・工事・管理等」業務である。
 政府内で、密かに“白紙撤回”に向けて検討が進めれれている最中、6月30日に、この建設工事で「165億円」契約が、文科省とJSCで交わされた。「165億円」の内、「47億円」はJSCが負担するが、その財源は、税金とtotoでまかなうとしている。

 実は、新国立競技場関連経費は、「2520億円」とは別枠で、JSC本部・日本青年館の移転費用等(174億円)や新国立競技場設計監理費用(91億円)、埋蔵文化財調査費(14億円)など「279億円」の経費が必要だとして、2014年1月、文科省と財務省は合意している。
 平成26年度の政府予算で、「2020オリンピック・パラリンピックの東京招致・開催支援等」という項目で、「現在の国立霞ヶ丘競技場(陸上競技場)は、建築後50年以上が経過し、競技場そのものの老朽化が進むとともに、今日開催される大規模な国際競技大会の主会場としての仕様を満たさない状況となっていることから、2019年ラグビーワールドカップ日本開催、2020年オリンピック・パラリンピック東京招致等を視野に入れ、同競技場の改築を目指す。平成26年度においては、新競技場の実施設計及び既存建物の解体工事等を行う」として、約230億円を計上している。一見すると、「新競技場の実施設計及び既存建物の解体工事」と誰もが思うのは間違いない。


(平成26年度予算概算要求 財務省)

 実はこの中に、新国立競技場の建設用地内にあるJSC本部と日本青年館の移転費も、「支援等」として“こっそり”入れ込み、「五輪便乗」と問題視されている。
 計画では、現在の日本青年館の南側にある西テニス場の敷地約6800㎡に、地上16階地下2階、延べ床面積約3万2000平方メートルのビル、「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」を新築し、JSC本部の事務機能や日本青年館の宿泊施設・ホールなどの機能を集約した施設を整備する。JSCは、この内、4フロア、6000平方メートル、これまでの1・4倍の面積を使用して、本部機能を移転する計画である。
 2015年6月14日、競争入札で、安藤ハザマが落札、落札額は152億5000万円(予定価格は164億9626万円)だった。
 「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」建設は、文科省の新国立競技場整備に関する「予算の上限」をJSCに示した時にすでに「174億円」(内JSC本部関連は28億円)を入れ込んでいる。 膨れ上がる新国立競技場の建設費を“抑制”するために「232億円」は別枠にしたのであろう。
それにしても「152億5000万円」使って。「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟」を建設する必要があるかどうか、しっかり検証したのだろうか。 神宮外苑に、新たに1240席の大ホール、客室数約220室のホテルを税金を投入して建設する必要があるのだろうか? 
 日本青年館は、全国の青年団活動の拠点にするため、「1人1円」の建設資金募金活動を繰り広げ、 大正14年9月に総工費162万円をかけて地上4階地下1階建ての旧日本青年館が完成した。
昭和54年2月には、青年団募金5億円が集められ、政府、経済界、各界の支援を受けて総工費54億円をかけて地上9階地下3階建ての現在の日本青年館が完成した。そして約30年、首都圏には、ホテルやホールの施設は十分に整っている。“時代”は変わっているのである。「五輪便乗」と批判されてもやむ得ないのではないか?
「東京五輪」を名目にした“便乗・膨張体質”が早くも露呈している。


(新日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟完成予想図 出典 日本青年館ホームページ)

再三にわたって迷走を続ける新国立競技場の建設問題については、その責任体制のお粗末さが批判されてしかるべきであろう。
 文科省やJSCはこうした巨大プロジェクトのマネージメント能力に欠けているというだろうか? 先が思いやられる。
 新国立競技場を巡る“迷走”は更に深刻さを増していく。





新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(6) 陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに




「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意






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新国立競技場 有識者会議

2015年07月18日 21時45分45秒 | 新国立競技場
有識者会議の責任 ~国立競技場将来構想有識者会議~




 「各界を代表する学識経験者や実務経験者などで構成される会議。主として国・地方自治体などの諮問機関として設置される。経済界・学界・関連団体・文化人・マスコミなど多様な分野を代表する識者が選ばれ、幅広い観点から議題について検討する」(出典 デジタル大辞典)
“有識者”とは、幅広い“見識”と“知性”、豊富な“専門知識“、そして“信念”を持ち合わせている人をいうのであろう。

■「国立競技場将来構想有識者会議」(有識者会議)発足
 2012年1月31日、日本スポーツ振興センター(JSC)は、ラグビーワールドカップ2019大会と2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致活動を目的として、国立競技場の将来構想について審議するために「国立競技場将来構想有識者会議」(有識者会議)を発足させた。



 日本のスポーツ界を代表する“そうそう”たるメンバーで14名で構成されている。
 安西祐一郎(日本学術振興会理事長)▽安藤忠雄(建築家)▽小倉純二(日本サッカー協会名誉会長)▽佐藤禎一(元文部事務次官)▽鈴木秀典(日本アンチ・ドーピング機構会長)▽竹田恒和(日本オリンピック委員会会長)▽張富士夫(日本体育協会会長)▽都倉俊一(日本音楽著作権協会会長)▽鳥原光憲(日本障がい者スポーツ協会会長)▽馳浩(スポーツ議連事務局長)▽舛添要一(東京都知事)▽森喜朗(東京五輪・パラリンピック組織委員会会長)▽横川浩(日本陸上競技連盟会長)▽笠浩史(東京五輪・パラリンピック推進議連幹事長代理)=敬称略、五十音順


■最後の議論の場
 2015年7月7日、激しい批判にさらされた新国立競技場の建設計画を巡って、「最後の議論の場」となる“有識者会議”が開催された。
「2520億円」という当初計画の「1300億」の約倍に膨れ上がった建設経費やデザイン案維持への納得のいく説明がされないまま、責任の所在もあいまいなままで進めらてきたこことに世論の批判が殺到していた。JSCが施工業者と契約する7月上旬までに公で行われる「最後の議論の場」にもなるだけに、多くのキーマンが顔をそろえ、JSCの諮問機関の役割を果たす有識者会議がどう意見を集約するかが注目されていた。
 JSCはこの会議で、総工費が基本設計段階から900億円も膨らんだ経緯や本体工事と周辺整備費の内訳、維持・管理費の見通しなどを説明し、「10月着工」、「2019年」完成で、工事着工に向けた「大きなステップ」(JSC)として、建設計画について了承を得たい考えだ。
“有識者会議”は、文科省の管轄下にある日本スポーツ振興センター(JSC)の理事長の私的諮問機関であり、あくまで“意見を集約”する場で、議決する場ではない。会議の出席者が順番に各人の意見を述べる場だとされている。
しかし、建設計画の了承には、出席委員の過半数の支持が必要になるとされ、仮に支持が過半数に達せず、“承認されず”となれば、建設計画を前に進めるのは事実上不可能だろう。
 なお有識者会議には、安西祐一郎氏(日本学術振興会理事長)と安藤忠雄氏(建築家)が欠席した。新国立競技場のデザインを選定した国際デザイン・コンクールの審査員長を務めた安藤忠雄氏は、この日、大阪で所用があったとして、欠席した。


■ “全員一致”の“了承” 「有識者」の責任
  会議では、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長が、五輪招致で安倍晋三首相が「このスタジアムを造る」と発言したことに触れて「国際公約を守るのは重要」と指摘するなど、スポーツ界の重鎮からは計画推進を求める声が相次いだ。
 「膨れる不安にも説明が必要だ」と膨らむ総工費に疑問を投げかけたのは、「東京五輪・パラリンピック推進議員連盟」幹事長代理の笠浩史衆院議員(民主)だけだったという。委員からは逆に、「(ピッチサイドの移動席が)仮設ではサッカーW杯を招致できない」(日本サッカー協会の小倉純二名誉会長)、「屋根がないことで外国人アーティストと長期契約が結べない」(日本音楽著作権協会の都倉俊一会長)との注文が相次いだ。
出席者によれば、「『2520億円』の金額の根拠について、JSCから十分な説明はなかった」とか、「どの時点で計算が違ってきたのか、説明がないのでみんな驚いていた」(週刊文春 7月23日号)としている。
会議を締めくくったのは森喜朗東京五輪組織委員会会長で、「(総工費は)極めて妥当なところ」とし、これを受けて、河野日本スポーツ振興センター理事長が「異議なしで宜しいでしょうか」と述べて(週刊文春 7月23日号)、「2520億円」の「基本計画」は“全員一致”で“承認”され、会議は1時間あまりで終わった。

 「有識者会議」で“全員一致”のゴーサインが出て、わすか10日後、安倍首相は、一転して「白紙撤回」を表明したのである。
 多様な分野を代表する“識者”で構成され、幅広い観点から、“見識”と“知性”を持って“議論”をして、意見をまとめるのが“有識者会議”だろう。豊富な“見識”と“知性”の元に、“信念”を持って、JSCの「2520億円」の建設計画を“了承”したことを忘れていはならない。「有識者会議」の全員一致の結論が、安倍首相の“鶴の一声”で覆されたのである。“信念”を持って、「2520億円」の建設計画を“支持”したなら、「有識者会議」のメンバーはなぜ反論をしなのだろうか? それとも“信念”も何も無く、世論の批判には一切耳を閉ざし、“了承”したのだろうか? 
 どちらにしても、“有識者”の“看板”が泣いている。“見識”と“知性”と“信念”を持ち合わせているのが“有識者”だ。唖然である。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催で、これから先の50年、100年の“レガシー”(未来への遺産)を残すことが求められている。
 先が思いやられると憂慮するのは筆者だけであろうか?





東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
新国立競技場建設費 2520億円破綻
二転三転「維持費と収入」 新国立競技場収支への“疑念
新国立競技場 “国際公約” 検証“屋根なし”は“公約違反”ではない
有識者会議の責任~国立競技場将来構想有識者会議~
審査委員長の“肩書き”が泣いている 新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏会見
東京オリンピック 競技場 東京ベイゾーン ヘリテッジゾーン



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検証 周辺整備費 新国立競技場

2015年07月16日 17時18分27秒 | 新国立競技場
周辺整備費は誰が負担するのか 検証・新国立競技場周辺整備費




 東京都は、新国立競技場を建設する神宮外苑地区を、大規模スポーツ施設を中心としたさまざまな施設を集積させ、「集客の高い、賑わいのあふれるエリア」にして、「活力のあるまち」に再生するとしている。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催をきっかけにした“街づくり”の中核となる戦略の一つだ。五輪開催の“レガシー”(未来への遺産)のシンボルである。


 
(出典 新国立競技場(仮称)整備計画について 東京都)

 神宮外苑地区には、新国立競技場を取り囲むように、東京体育館、明治神宮球場、明治神宮第二球場、明治神宮外苑軟式野球場、秩父宮ラグビー場、テニスコートなどのスポーツ施設や明治公園などが立地している。北側はJRの線路を挟んで新宿御苑、南側は青山通りだ。大都会東京の中心にある、まさにスポーツの“レガシー”(未来への遺産)にふさわしい“東京ヘリテージゾーン”になることが期待されている。
 新国立競技場だけを建設しても、エリアの再開発、“周辺整備”にしっかり取り組まないと“レガシー”(未来への遺産)にはならないことを忘れてはならない。

 新国立競技場を建設するにあたって、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)では、「新国立競技場基本設計条件」を公表して、周辺整備計画を定めている。

 
周辺整備
 周辺整備の設計については、周辺地域との関係があることから、東京都等関係
自治体とも調整しつつ進める。

歩行者デッキの接続
 交通機関、道路(歩道)や公園、他の敷地など既設の基盤交通機能との相互
の連携・調和に配慮し、地区全体にわたり回遊性のあるネットワークを持ち、バリアフリーに配慮するとともに、敷地内を貫通する歩行者空間、人溜まり空間(滞留スペース)となる広場的な歩行者空間の検討を進める。

公園の確保
 都立明治公園の再配置にあたり、現在の特徴と基本的な性格を継承しつつ、
現有規模の確保を図る。なお、広域的な緑のネットワークとの連続性、新国立競技場との一体的空間の整備、分断されていた既存公園の一体性・連続性の確保、立体公園制度の活用、歩行者や人溜まりのための空間と公園の緑との連携・共存に配慮した計画とする。

空地の確保
 オリンピック・パラリンピック競技大会等の大規模大会時には、施設の性格上、
人の流れが集中することから、安全で快適な空間として歩道状空地、広場状空
地を適切な位置に確保するとともに、歩行者デッキ、公園と併せて、機能面での連携に配慮した計画とする。
(日本スポーツ振興センター(JSC) 新国立競技場基本設計条件(案) 2015年11月)

 “周辺整備”には、当然、巨額の経費が伴う。
 “周辺整備費”を巡る経緯を整理してみよう



(出典 新国立競技場(仮称)整備計画について 東京都)

■ 周辺整備費 「372億円」 
  2013年11月8日、文科省は猪瀬直樹都知事に、新国立競技場の総工費を1852億円とすることを明らかにした。新国立競技場の本体工事費1413億円、解体工事67億円、周辺整備費372億円している。
日本スポーツ振興センター(JSC)が公表した「新国立競技場基本設計条件(案)」(2014年11月)でも、新国立競技場の本体工事費1413億円、解体工事67億円、周辺整備費372億円、総工費1852億円と、文科省の積み上げた額がそのまま記載されている。

周辺整備費372億円の内訳は次の通りである。

▽人口地盤等(バリアフリー)             266億円
▽都営大江戸線との接続 (バリアフリー)       11億円
▽サブトラック連絡通路                   30億円
▽立体公園(バリアフリー)                 39億円
▽上下水道幹線移設費                   26億円
計周辺整備費                        372億円 

 キーワードは“バリアフリー”、2020年はパラリンピックも開催されるため必須である。パラリンピック開催をきっかけに、車いすなどでも容易に移動可能な障害者や高齢者に“やさしい”街づくりに大都会東京が大きく踏み出そうというものである。
 新国立競技場の建設用地は、高低差7~8メートルの斜面になっており、この敷地をフラットにして競技場や公園を建設するために“人工地盤”を建設することとした。その経費として266億円が計上されている。
 “立体公園”も同じ理由で、フラットな公園として整備するためのものである。緑を確保するために、樹木の植栽も重要である。
 “環境にやさしい持続可能な”再開発である。


■ 文科省が示した“予算”上限額 “周辺整備費”「237億円」
 2014年1月、文科省は新国立競技場の予算の上限を、日本スポーツ振興センター(JSC)に示した。
これによると、本体工事費1455億円、周辺整備費237億円、総工費1692億円である。

▽明治公園        33億円  (立体公園)[バリアフリー]
▽周辺人工地盤    143億円
▽ブリッジ外苑西     22億円 (歩行者用デッキ[立体歩道])[バリアフリー]
▽ブリッジ新宿道     19億円 (歩行者用デッキ [立体歩道])[バリアフリー]
▽インフラ移設      15億円  (上下水道幹線移設)
▽サブトラ連絡通路    4億円  
▽明治公園撤去      1億円  (立体公園)
周辺整備合計      237億円
「文科省から新国立競技場の予算に関する正式な回答」 2014年1月30日

 人工地盤の約120億円、サブトラック通路が約26億円、上下水道幹線移設費が約11億円、減額されていたり、一方で、歩行者用デッキ約30億円増えていたりして、総額で約135億円削減されている。
 変更の理由は不明であるが、以後は、“周辺整備費”は「237億円」とされるようになった。


■ 縮小設計案 景観配慮、5メートル低く 1625億円を維持
 2014年5月28日、日本スポーツ振興センター(JSC)の将来構想有識者会議(委員長=佐藤禎一元文部事務次官)が開かれ、最大8万人収容の新競技場の「基本設計案」が承認された。周辺に配慮して高さは当初案より5メートル低い70メートルとし立体型の通路を見直し延べ床面積を25%程度縮小するとした。19年9月開幕のラグビー・ワールドカップ日本大会に向け、2019年3月の完成を目指すとしている。
基本設計案によると、敷地面積は当初計画通り約11万3千平方メートル、延べ床面積は約21万1千平方メートルで、外観は、ザハ・ハディド氏の流線形の案を元にデザインされ、地上6階地下2階。総工費は「1625億円」(2013年7月の単価、消費税5%で試算)とした。
競技場本体に約「1388億円」、公園や連絡通路などに約「237億円」と記されている。
内訳は、文科省が示した“予算上限”と同じだろう。


■ 新国立競技場、施工者に大成建設と竹中工務店
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場について、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は31日、工事施工予定者に大成建設と竹中工務店東京本店を選んだと発表した。
 大成建設は延べ面積約21万平方メートルの競技場など本体部、竹中工務店は開閉式遮音装置を設ける屋根を担当する。
 JSCは工区を、「新国立競技場等新営工事(スタンド工区)」と「同(屋根工区)」に分割した。スタンド工区は、競技場のスタンド、フィールド、人工地盤、外構などの工事を担当する。屋根工区は競技場のキールアーチや屋根、開閉式遮音装置、スカイブリッジなどの工事を手掛ける。いずれの工区でも、実施設計段階で施工者の立場から施工方法などの技術協力を行う。

 ここでは「スタンド工区」には、“人工地盤”は“外溝”が含まれている。
 文科省が示した“予算上限”の“人工地盤”「143億円」は「スタンド工区」の予算に含まれているのである。
 しかし、明治公園(立体公園)整備費や歩行者デッキ建設費、上下水道移設費等の「94億円」は含まれていない懸念が強い。
 “人工地盤”以外の“周辺整備費”はどこへいったのか?font>


スタンド工区と屋根工区の工事内容(資料:日本スポーツ振興センター)

■ 新国立競技場建設費 2520億円承認
 2015年7月7日、日本スポーツ振興センター(JSC)は「有識者会議」で、新国立競技場の改築費は、当初よりも「900億円」多い「2520億円」になることが決まった。スタンド工区が1570億円、屋根工区が950億としている。膨大な建設費に批判が集まるなか、5年後に向けた計画が進められることになった。
“人工地盤”と“外溝”の建設費は、スタンド工区の1570億円に含まれているだろうが、明治公園(立体公園)整備費や歩行者デッキ建設費、上下水道移設費等の「94億円」はどこへいったのか、曖昧のままである。



(出典 新国立競技場(仮称)整備計画について 東京都)

■ 破綻した「2520億円」 周辺整備費72億円は計上せず
 日本スポーツ振興センター(JSC)が敷地外にある2つの歩行者デッキ(立体歩道)など、計72億円の整備費を総工費に含まず発表していたことが明らかになった。これまでは歩行者デッキなどの整備費を含んで試算していたが今回は、未記載のまま発表し、改めてずさんな見積もりが浮き彫りになった。
JSCは2014年5月に示した基本設計で、駅からのアクセスが多いと想定する歩行者用デッキ(立体歩道)1号、2号の整備費を37億円とし、水道などのインフラ設備の移設費の35億円と合わせ、計72億円と試算し、「総工費1625億円」には、この72億円が含まれていという。
 新国立競技場の総工費を巡っては、当初の「1300億円」から約二倍に膨れ上がり、世論から厳しい批判を浴びている中で、総工費を意図的に圧縮するために、当初は総工費に含まれていた“周辺整備費”を意図的に曖昧にしたという疑問が生まれる。周辺整備費”は、神宮外苑を、スポーツの“聖地”として、五輪開催の“レガシー”(未来への遺産)とするために必須である。
バリアフリーの立体公園や立体歩道、そして緑化整備やインフラ整備はどこへいったのか? そして誰が負担するのか





東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
新国立競技場建設費 2520億円破綻
二転三転「維持費と収入」 新国立競技場収支への“疑念
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有識者会議の責任~国立競技場将来構想有識者会議~
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2015年7月16日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
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