第37期竜王戦の挑戦手合いが10月5日(土)から始まる。常勝の藤井聡太竜王に挑むのは、気鋭・佐々木勇気八段。藤井包囲網が送りこむ最終兵器だ。
その佐々木八段は、2010年10月四段デビュー。竜王戦はその年の第24期から参加した。佐々木四段は1回戦のアマに勝ち、2回戦で中田功七段(当時)に敗れ、昇級者決定戦に回った。
この初戦の相手が、植山悦行七段だった。植山七段は当時フリークラス9期目で、新鋭四段とフリークラスの対戦では、四段が勝つと誰もが思っていた。だが、2011年6月2日に指されたその結果は、植山七段の勝ち! これには誰もが驚いた。
だがそのいっぽうで私(たち)は、フリークラスというか、プロの実力のほどを知っていた。指導対局を受けてみれば分かるが、フリークラスは本当に強い。こちらがたっぷり時間を使って考え、渾身の手を指しても、まったく歯が立たない。
もっとも、私は順位戦参加棋士に教わったこともほとんどないから比較ができないのだが、両者の棋力の差異は、ほとんどないと思われた。
つまるところ、フリークラス棋士の斜陽は、加齢による根気・やる気の減退だと思う。先を読む力に衰えはなくとも、それを深夜まで保つ体力がなくなる。だからいい将棋を作っても、終盤で逆転されてしまう。
だが、誰にも好不調のバイオリズムはあり、たまたま絶好調のときがあると、素晴らしくいい将棋を指すのだ。植山七段は、この佐々木四段戦がそうだったのではあるまいか。
私たち将棋仲間は、さっそく植山七段に自戦解説をお願いした。
将棋の上達法は数々あるが、最も効果的なのは、棋士の自戦解説を聞くことだと思う。プロが精魂込めて考えた読み筋を披露していただく。そしてそれを吸収するのが最上と信じるのだ。
実際、植山七段の将棋理論は、とても勉強になった。佐々木四段戦も然りで、序盤の作戦勝ちから、優勢→勝勢と、盤石の勝利だった。
この終盤、佐々木四段が敗勢ながら、あからさまな一手詰めろを指した。それに植山七段は首を傾げたが、私は、「絶対に負けたくない」という佐々木四段の執念を感じ、こういう棋士が将来は大成するのではないか、と思ったものである。
かようなわけで、2011年度は幸先いいスタートを切った植山七段だったが、その後は平常運転に戻り、負けが続いた。その年度はあと、武者野勝巳七段に勝ったのみの2勝9敗で終わった。
そして2012年度は4勝11敗。2013年度に竜王戦を指し、現役引退。振り返って、佐々木四段戦の勝利が、最後の輝ける勝利となった。
蛇足だが、第24期竜王戦の5組への昇級者は、フリークラス8期目の大野八一雄七段だった。やはりフリークラス棋士は強かったのである。
その佐々木八段は、2010年10月四段デビュー。竜王戦はその年の第24期から参加した。佐々木四段は1回戦のアマに勝ち、2回戦で中田功七段(当時)に敗れ、昇級者決定戦に回った。
この初戦の相手が、植山悦行七段だった。植山七段は当時フリークラス9期目で、新鋭四段とフリークラスの対戦では、四段が勝つと誰もが思っていた。だが、2011年6月2日に指されたその結果は、植山七段の勝ち! これには誰もが驚いた。
だがそのいっぽうで私(たち)は、フリークラスというか、プロの実力のほどを知っていた。指導対局を受けてみれば分かるが、フリークラスは本当に強い。こちらがたっぷり時間を使って考え、渾身の手を指しても、まったく歯が立たない。
もっとも、私は順位戦参加棋士に教わったこともほとんどないから比較ができないのだが、両者の棋力の差異は、ほとんどないと思われた。
つまるところ、フリークラス棋士の斜陽は、加齢による根気・やる気の減退だと思う。先を読む力に衰えはなくとも、それを深夜まで保つ体力がなくなる。だからいい将棋を作っても、終盤で逆転されてしまう。
だが、誰にも好不調のバイオリズムはあり、たまたま絶好調のときがあると、素晴らしくいい将棋を指すのだ。植山七段は、この佐々木四段戦がそうだったのではあるまいか。
私たち将棋仲間は、さっそく植山七段に自戦解説をお願いした。
将棋の上達法は数々あるが、最も効果的なのは、棋士の自戦解説を聞くことだと思う。プロが精魂込めて考えた読み筋を披露していただく。そしてそれを吸収するのが最上と信じるのだ。
実際、植山七段の将棋理論は、とても勉強になった。佐々木四段戦も然りで、序盤の作戦勝ちから、優勢→勝勢と、盤石の勝利だった。
この終盤、佐々木四段が敗勢ながら、あからさまな一手詰めろを指した。それに植山七段は首を傾げたが、私は、「絶対に負けたくない」という佐々木四段の執念を感じ、こういう棋士が将来は大成するのではないか、と思ったものである。
かようなわけで、2011年度は幸先いいスタートを切った植山七段だったが、その後は平常運転に戻り、負けが続いた。その年度はあと、武者野勝巳七段に勝ったのみの2勝9敗で終わった。
そして2012年度は4勝11敗。2013年度に竜王戦を指し、現役引退。振り返って、佐々木四段戦の勝利が、最後の輝ける勝利となった。
蛇足だが、第24期竜王戦の5組への昇級者は、フリークラス8期目の大野八一雄七段だった。やはりフリークラス棋士は強かったのである。