及川 均 Logbook

フォトグラファー及川によるblogです。

マクロな話

2012年02月14日 | 写真のお勉強
Gallery H Logのコメントフォトクラブのコメントでマクロレンズの話がでたので、新しく加わったCXフォーマットも踏まえて撮影倍率のお話(復習)を。


そもそもマクロレンズとは接近してもピントが合うことによって、被写体を大きく写すことが可能なレンズ。

そして、「どのくらい大きく写せるか?」的なスペックとして、「最大撮影倍率」がある。

「最大撮影倍率」とは、そのレンズでピントの合う最短距離まで寄った時に、「センサー上にどのくらいの大きさで写るか?」というスペック。

多くのマクロレンズは最大撮影倍率が1倍(等倍)というのが多い。


そして、多くの水中フォト派ダイバーが、何故か極小サイズのウミウシなどを撮りたがる傾向にありながら、カメラのスペックにもこだわり、なぜかフルサイズ(高画素)を選ぶという状況をよくみるのですが、被写体を大きく写すためにはどうすればいいのかもう一度考えるきっかけになれば幸いです。

まず、最大撮影倍率の定義で述べた、「センサー上にどのくらいの大きさで写るか?」のうち、『センサー上に』を気にしない人が多いのですが、センサーには大きさがあります。

フィルムと同じサイズのフルサイズセンサー(ニコンではFXフォーマットと呼ぶ)、その半分のAPS-Cサイズセンサー(ニコンではDXフォーマットと呼ぶ)、そしてニコンから先日発売されたニコンオリジナルのミラーレスカメラの1インチセンサー(CXフォーマットと呼ぶ)、その他私は持っていないけど、フォーサーズサイズ(オリンパスとパナソニック)のセンサーなどがあります。
(ちなみにコンデジはレンズ交換ができないので、センサーサイズの統一などには無関係なため、各社マチマチなセンサーサイズですが、いずれも上記4つのセンサーサイズよりも「かなり」小さいセンサーです)

私は上記3つのニコンセンサーを持つカメラを持っているので、同じ条件でテストしてみました。

テストの様子はこんな感じ。



三脚にカメラを固定して、同じレンズで最短撮影距離で撮り比べただけです。


【レンズ】:TAMRON SP AF 90mm f2.8 Di MACRO(最大撮影倍率=等倍)
【露出モード】:絞り優先オート
【絞り】:F8
【露出補正】:+0.7

以上の条件でカメラだけを交換しながら撮ってみたのですが・・・


まずはフルサイズ(FXフォーマット)での撮影。【D700(1,200万画素)】



等倍撮影とは「実際の大きさ(1倍)でセンサー上に写る」ということなので、イメージとしてこの画像がフィルム1コマと同じサイズだと想像できれば、ウミウシのフィギュアの多きさもわかるでしょう。
そして、ここまで近づいて撮影すると、絞り込んでいる(F8)とはいえ、被写界深度は約2mm程度であることがわかります。



そして、カメラをAPS-C(DXフォーマット)に変えて撮影。【D300(1,200万画素)】



ぐっと大きくなりました。
もちろんさっきよりも近づいたわけではありません。
だって、既にこのレンズの最短撮影距離にありますから。
なにが違うのかというと、「センサーサイズ」。つまり、FXフォーマットの真ん中のあたりだけをクロップ(トリミング)したような感じになります。
ただし、実際にクロップしているワケではないですから、画素数は元のカメラ(D300)の1,200万画素です。




さらにCXフォーマットで撮影。【V1(1,000万画素)】



ウミウシを知らない人ならなんの写真かわからないくらいです。


と、上記3カットはレンズも撮影距離も同じ、つまり最大撮影倍率=等倍で撮影しているのに、写っている大きさが異なります。

つまり、センサーサイズの違いが出ていることになりますね。

と、ここまで書けば、被写体を大きく写すのには、その他の条件が同じならセンサーサイズが小さい方が有利になるということがわかるでしょう。

もちろん「大きく写すことだけ」を考えればこうなりますが、写真には他にも様々な要素があるので、これだけで決めるワケにはいかないことは当然です。


例えば、多くの人が撮った写真をブログに載せたり、ポストカードにしたり、大きくてもA4かA3くらいまでに引き伸してプリントする程度で、ポスターサイズまでプリントする人はそう多くはないでしょう。

プリントをどこまで大きく引き伸せるか?というのは単純に画素数に依存しますが、A3程度の大きさでも1,200万画素程度で十分なので、それ以上の画素数はポスターなどをプリントしない人には無意味なスペックとなります。


また、ボケに関してですが、絞りを開けることだけがボケを大きくする唯一の方法だと思っている人も多いのですが、撮影距離をつめることで、今回のようにF8まで絞ってもこんなにボケるんです。

だんだん話が撮影倍率から脱線してきましたので、今日はこの辺にしますが、過去にも同じような記事を書いているので、興味のある方は、このカテゴリ(カメラのお勉強)を遡ってみてみてください。


今回は撮影倍率だけに話を絞ってありますが、カメラやレンズを選ぶ時の目的は人それぞれ、用途それぞれですので、様々な項目を総合的に考えて選ぶことをオススメします。

カメラやレンズ購入について相談などありましたら、いつでもお気軽にお尋ねくださいね。



は~、久しぶりに長い記事書いて疲れた。




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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うんうん (如月14)
2012-02-14 21:56:07
今日のお話、分かってきましたよ~♪
何度も読むと、なるほど…
さらにゆんたくのテキストと併せて読むと、なるほどなるほど…
V1で・・・ (ムーミン)
2012-02-14 22:08:04
V1のレンズ装着写真が見たいです。

今の条件で水中だったら
ボケた写真が多くなるのかな~?
意外とレンズ側のポートが大きく
カメラ側のハウジングが小さくなり
ホールドしやすくなってしっかり固定できたり
して・・・
ちょっとテーマからそれました。 あしからず…
すごい (甲殻類馬鹿)
2012-02-14 22:50:01
被写界深度2mmって。
どんだけぇ~。
すごい世界で被写体と向き合っているんだ。

私個人的には、DXフォーマットの画角が
好きです。

マクロの限界年齢ってありますか?
たぶんあると思います。

如月14さんにとって今日って特別な日なのですか?
はい~♪ (如月14)
2012-02-14 23:32:19
甲殻類馬鹿様
チェックお見事です♡
本日は如月14の生まれた日でゴザイマス…
Unknown (及川)
2012-02-15 08:54:41
>如月14さん

時々知識を整理して再確認するのも大切ですな。

>ムーミンさん

V1に一眼レフのレンズつけた写真ですね。
今度撮ってみますけど、かっちょわるいですよ。
ちなみに、V1にはストロボがついていないので、ハウジング的にはやっかいになると思います。
とりあえずSEA&SEAに以前聞いてみたのですが、今のところV1もJ1もハウジングを出す予定はないそうです。
ウミウシマニアには需要がありそうですけどね。
ただ、一眼レフのレンズをつけるといろいろと障害もあって、ちょっと難しいかもですね。

>甲殻類馬鹿さん

ご自身もフィルム&105mmで撮ってるなら同じ被写界深度ですけど・・・
マクロの限界年齢ですか?
私の知る大方洋二カメラマンは60歳を過ぎても今だに現役でやってますよ。

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