教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

全国学力調査について①

2008年09月04日 | 教育行政・学校運営
《公開された結果》8月29日、再開二度目となった学力調査の結果が文部科学省から公開されました。文部科学省のHPには、膨大なデーターが掲示されています。今後、各教育委員会レベルで分析・検討がなされると思いますが、新聞を見ながら私が気になった項目をいくつか書き留めます。

 ①新聞では各教科の正答率が都道府県ごとに明らかになり、大阪府の子どもたちの正答率が昨年に続いて振るわなかったことが報道されていました。特に正答率の上位と下位が共に増え、学力二極化の進行が浮き彫りになったと言われています。
また、全国的にみると②正答率が高い地域や学校の取り組みについては、少人数学級でのきめ細かい指導、自宅学習の習慣付け、ボランティアによる授業サポート、授業中に私語が少なく落ち着いているといったことがらが挙げられました。③学力と家庭生活との関連では、学力調査と同時に行われた生活アンケートの分析を行い、朝食を毎日食べる児童は全く食べない児童に比べすべての科目で正答率が大幅に上回っていること、さらに『読書好き』で『家族と学校での出来事について話をしている』という児童ほど正答率が高いとなっています。④家庭の経済力についても関心が向けられました。その結果、学用品や給食費の公費負担を受けている就学援助の需給率と学力テストの正答率の関連を調べ、「経済格差=学力格差(8/30産経新聞)という見出しをつける新聞もありました。

《親の総力戦の結果としての『学力』というとらえ方》親の経済格差が子どもの学力格差につながる傾向というのは、多くの教育関係者が指摘しています。ある塾の入塾説明会に参加したことがあります。その中で「子どもの学力というのは、親の学歴・経済力・しつけ力(=親の強制力)・子どもに関わる時間など全てを動員した総力戦でつくられる」と説明されていました。このような分析は、学力を受験学力という面から見ると、当たっている面もあると思います。しかし、「どんな生き方をしようとするのか」「いつか学校を卒業し社会人になったとき、社会に役立つ人になれるのか」という問いかけをしないままに受験学力だけを身につけた子どもたちが、傍(はた)からみたら些細(ささい)な挫折をきっかけに自暴自棄になり、果ては無差別殺人や家族を殺す事件を引き起こすまでになることを見聞きするにつけ、この薄っぺらな学力だけに頼ってはいられないと思うのです。

《学力向上のための取り組みとは》教員であれば、学校や教育が子どもたちの可能性を広げる場になることを願わない者はないと思います。親世代の経済格差が子どもたちの学力格差にストレートに繋がるようでは、格差は後の世代に受け継がれ、学校や子どもたちから希望は消え去ります。全国学力調査で数値化された点数が、子どもたちの学力の全てを表現しているとは考えられませんが、行政や学校は、子どもたちの学力向上への道筋を引き続き考えていく必要があります。

 そのことは、決して「学力調査」対策の練習問題を事前にするとか、ましてやテスト監督にあたった教員が間違っている解答を指差して教えるような「手っ取り早い」ことであってはなりません。授業規律の確立や家庭学習の習慣化に成功している取り組みを広げる努力を続けると同時に、困難を抱えている学校に対する具体的な支援のあり方を検証していく必要があると思います。(引き続き考えます)