へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

参ったね、どーも

2006-09-12 23:14:30 | へちま細太郎
けんちゃんだよ、覚えてっか?

俺のうちに、藤川の野郎が居候してやがって、めんどくせえのなんの。
あいつはああ見えて、けっこう神経質なやつで、シーツのたるみは許さない。着るものにはアイロンをかける。洗濯機は全自動は汚れが落ちないから二層式にしろ、だめなら漂白剤を入れろ、とうるさい。
ゆうべは、箸の持ち方までごちゃごちゃ言った。
全く、日頃の行いとギャップがありすぎるんだよな。

カンベンしてくれだな

ところで、なんで、藤川が居候してるんだって?
タラバガニの逆立ちだよ。 あいつに一目惚れしたタラバガニの逆立ちが、どーしても藤川と付き合いたい、と衣笠米穀店の番頭さんに泣きついたらしい。 番頭の高橋さんは、
「今は時代が時代ですございますから、ご縁談については先方さまにお伝えはいたしますが…。実際、藤川さまとのご縁組みはきびしゅうございますよ」
と、やんわり婉曲な言い回しで断ったそうなんだが、女の一念は恐ろしい。 無理を通して、略式の見合いまでこぎつけたんだが、藤川は棒斐浄寺に立てこもり見合いをすっぽかした。
その後は、家にも帰らず俺のところに居座ったというわけさ。
あ~、気持ちは痛いほど理解できるが、出てって欲しいんだよ。
お願いだっ、毎晩毎晩、般若心経を唱えるのだけは止めてくれ。
朝飯を作ってくれるのはありがたいが、いちいち献立の内容を講釈するのはやめてくれっ

俺の白衣にアイロンかけるのは、なしにしてくれ
よれよれ白衣が、俺のトレードマークなんだってばっ

調子、狂う…。