へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

きっかけは…

2016-05-27 15:19:58 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

ぼくの入学した学部は、応用生産科学部(そんな学部はありまっしぇええん)という。農業か園芸に係ることなら、なんでもいいやの気分で学部を選んでしまった。
きっかけは、タコ壺の不気味な蘭の小百合なんだが、一度、氷を入れたリポビタンDを飲みほした後、そのままにしておいたマグカップの中に、朝顔の種が落ちてしまい、なぜが目が出る、という珍現象を引き起こしたことがあった。真冬だったんだけどね。
こりゃあ面白いっていうのが始まりだった。タコ壺の小百合以上に、バイオ科学で蘭型人間を作り、食用蘭のごとく、人類を襲ったらどうしよう、とか真面目な顔で話をしたら、学部の仲間に爆笑された。
「細太郎さん、けっこうおもしろいっす」
と、大学でもみんな細太郎呼ばわりだ。
「普通、そんな発想しません」
白崎という北海道出身の埼玉育ちが笑えば、
「いいじゃないっすか、これ、面白いからフィギア作らないか?」
と、悪そうな雰囲気を持ちつつ、実は相当オタクな発言をする荒波が茶髪にし過ぎて傷んだ髪をかきあげた。
う、おめえ、美容室いって、ヘアパックしてもらえ、と内心思いながらも口には出さない。
いかつい後藤は、
「その小百合っていう蘭みたいねえ。リポDで巨大化するなんて、どんな生体なんだか知りたい」
と小百合を今にも解剖したいような意気込みでつっこんできた。
「ゴメス、おめえ、小百合を分解する気か?」
「あ、いや、中島教授の宝物をそんな危ないメに合わせられません」
慌てて否定するも、アヤシイ。
ついでいっちゃうが、中島教授は、週に一度、つくばった大学で講義をしている。
天下に名高い中島教授は、その道での有名な博士らしい。
マジかよ。
一浪・現役関係なく、楽しく大学生活送っているけど、中島教授が俺を見つけるなり、遠くから、
「細太郎、このクソガキ~」
と叫ぶので、大学でもこの呼び名が広まってしまったというわけなんだな。
あ~、もう、たまには本名で呼ばれたいけど、肝心のはるみもいまだに細太郎くん、なんだよなあ。
まじ、辛いんだけど。。。


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細太郎、バイトする

2016-05-24 06:57:37 | へちま細太郎

おはよすへちま細太郎です。

大学生活も落ち着いて、俺とたかのりはバイトを始めた。
バイト先は、街を歩いていたら、花屋の人が撒いていた水が引っかかってしまい、びしょ濡れになったから、その花屋に決めてしまった。
なんてこったい。
とてもきれいなおばさんが、俺の顔をしげしげと眺めて、
「知り合いに似ていたからびっくりしちゃって」
と、お菓子だのコーヒーだの出してくれたから、
「はぁ」
と返ってこっちが恐縮してしまった。
花屋っていっても、むしろ種屋さんで、苗が大量に売られていた。人手が足りないんだそうで、俺とたかのりとで雇って貰うことにしたんだ。
「孟宗の中島教授のお手伝いをしていたの?なら安心だわ」
おばさんは、手を叩かんばかりに大喜びして、大歓迎してくれた。
どこで聞き付けたか知らないが、小栗先輩と水嶋先輩が顔を出して冷やかしにくるのには、参った。
もっとも、先祖代々美都一豪農を誇る二人には、苗の育成の方に興味があったみたいだが。
大学の合間に通うこのバイトは、自分にとっても勉強になるのでありがたかった。
ちなみに、誰に似ているんです?と聞いてみたら、驚くなかれ、またいとこの亮くんでした。昔、川に遊びにいって、かっこつけて海パンを投げたら川に流されてしまった、おっちょこちょいなやつだった。そのあとフルチンを写メに撮られるわ、ひいばあちゃんに叱られるわ、散々な目にあった。
「夏休みとかにたまに、苗木を軽トラで届けに来てくれるわよ」
軽トラ…。
あの亮君がねえ。
そのうち、再会できるかな。
楽しみだ。

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