へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

ごあいさつ

2007-12-31 23:15:44 | へちま細太郎
こんばんは、へちま細太郎です。

今年も読んでいただいてありがとうございました。
来年も…明日なんだけど…読んでください。

来年こそはおかあさんに会いたいなあ。

藤川家の事情

2007-12-30 21:55:17 | へちま細太郎
藤川だあ。

毎年のことだけど、何でクリスマスに法事をしなくちゃいけない。 今年はイブが休みなんだからその日にすりゃあいいのに、
「“身内”の法事だ、充分だ」
と、じいさんは吠えまくる。 “身内”って言ったって、どんだけの身内なんだ。
みんな勤めがあるだろうにと思うんだが、日本というのは今だにこういう上流階級への憧れと羨望と、あらがいきれないものを持っているのか、
「藤川家先々代の法事です。奥方様はさる高貴なお家のご出身で健在ですので、一族に連なる私も欠席するわけにはいかず…」
と言えば、あっさり休ませてくれるらしい。
こんなことで休ませるなっ、とおりゃあ言いたいね。
菩提寺の須庭寺(すていじ)には、“身内”と称する連中が集まってくる。が、不思議なことに若い奴らも大勢いる。
なんでクリスマスに来るか?と首を傾げていたら、
「みんなクリスマスに休みを取りたいんですよ。わかるでしょ?彼女とイブを過ごし、彼女を車に待たせて終わればまたどこぞに出かける、よくいえば、ひいおじいさまのクリスマスプレゼントですかねえ」
と、弟の実孝(さねたか)がしたり顔で言うではないか。
「罰当たりな奴らだな」
「他人のこと言えるんですか」
「少なくとも俺は、女をこういうところには連れてこないぞ、そういう常識はある」
「へ~」
実孝は疑り深い顔をして俺をみたが、
「硬派なヤンキーの兄貴のことだから、嘘ではないでしょ」
と、あっさり引き下がった。
「で、香華(きょうか)姉さんのことなんですけど」
「あん?」
香華とは二番めの姉のことだ。
「あのバカ元亭主、何とかなりませんかね」
離婚して半年たつというのに、まだ姉に未練があるのかここ1ヵ月つきまとっている。結婚生活は冷めていたというのに、今更何だと文句つけたい気分だ。今日も法事だというのに、嫌がる姉のそばでしつこく復縁を迫っている。
「堀内家も大変なバカ殿を持ったものだねえ、離婚して正解だったのかも」
「…」
「俺、別にかまわないですよ、あの緒方って先生。少なくとも法華姉さんの旦那よりマシだと思います」
と、実孝は笑った。
「そうか、おまえもそう思うか」
「兄貴、今、何考えているか、あててみましょうか」
じろりと俺は弟をみた。
「きっと、一緒だと思いますけど」
「そうか」
俺たち兄弟は顔を見合わせると、 人ごみの中を駆け抜けバカ元亭主の前に来るなり、
「いい加減にしやがれっ」
と、2人で思いっきりぶん殴ってやった。
けっ、ざまあみやがれっ。

クリスマスイブ

2007-12-28 23:56:03 | へちま細太郎
こんばんは、お久しぶりです、ぼくへちま細太郎です。

25日はクリスマスでしたけど、みなさんはどう過ごされましたか? ぼくのうちではみんなで楽しくおいしいごはんを食べました
。残念ながら、けんちゃん先生と藤川先生はいませんでした。なぜなら、2人とも用事があったからです。
クリスマスイブの日、藤川先生はけんちゃん先生に、
「とにかく姉貴に惚れてるのなら、連れて逃げ出す覚悟を持ってくれ」
としつこく詰め寄っていました。
「ばかいえ、おりゃあふられたんだ」
けんちゃん先生はとりつくしまもありません。
「おめえ、まともに受け取ってんのか?」
「受け取るも何も、コトが終わった後に言われたんだぞ、やってられっかい」
『“コト”ってなあに?』
2人の様子をうかがっていたぼくたちでしたが、ぼくはけんちゃん先生の言葉の意味がわかんなかったのでおとうさんに小さな声で聞くと、
『まだわかんなくていい
と頭をぽかりとたたかれてしまいました。
『?』
わかんないことを聞いて何が悪い…と言い返したかったけど、2人の様子が気にかかります。
「おめえ、法律や前の亭主のことなんか気にしてる場合じゃねえぞ」
「そんなんじゃねえ、男としてプライドが許さねえだけだ」
『法律って?』
またまたわからないので小声で聞くと、
『女の人は離婚したら300日は結婚できないんだ』
『何で?』
『いろいろあってな』
『ふうん』
ぼくは、じいっと再び視線を2人に戻しました。
「うちの姉貴は一番上と違って、意地っ張りだしホントのことが言えないし、親の言うことを素直に聞いてしまうんだ。だから、今度くらいは好きな相手と結婚させてやりたいと、さんざん迷惑をかけてきた弟がこうして頭下げてんじゃねえか」
「…」
けんちゃん先生は黙ったままです。
と、そこへ今まで傍観者だったおとうさんが乱入したんです。
おとうさんはけんちゃん先生の襟をぐいっとつかむと
、「カッコ悪いとかプライドとか、そんなこと言っていたら、女は逃げてっちまうぞ、一生後悔しても知らねーからな」
と、ものすごい顔でけんちゃん先生に怒鳴っています。
お、おとうさんのそんな顔見るの、ぼく初めてだよ。
「いいか、相手に恋人がいようがなんだろうが、絶対手ばなしたくないと思ったら死んでもいい覚悟で行動しろよ」
みんな呆然。 けんちゃん先生はしばらく目をぱちくりさせていましたが、
「おまえが言うと誰より説得力ある」
と、やっと言葉を発しました。
「ほんと、誰よりも、だ」
おとうさんとけんちゃん先生はしばらくにらみあっていましたが、おたがい大きいため息をつくとその場をはなれました。
そして、けんちゃん先生は、その場で深く考えこんでしまいました。
ぼく、そんなことより、おとうさんがなんだかおとうさんじゃないみたいで、ちょっと複雑な気分になりました。

恒例冬の京都7

2007-12-27 17:20:40 | 京都だより
『やうやう白くなりゆくやまぎは…』
などとかの清少納言が書いておりますが、まあこれは季節を問わず、日の出直前の山際はかなり美しいものでございます。
また『月はおぼろに東山~』と祇園小唄に歌われているように、昨夜の月夜はよいものでした。
今回の京都でよいなあ、と思ったことがひとつ。
高島屋7階からエレベーターで下に降りる際、駆け込んできた女性のために“開”ボタンを押して待っておりました。すると、入ってくるなり彼女は、
「ご一緒させてもらいますぅ」
と言い、こちらが出る時には軽く会釈を返してくれました。何とも気分がよくなったできごとでした。
「ご一緒させてもらいますぅ」
いや、こういう挨拶があるんだなあ。
もうすぐ、東京です。

恒例冬の京都6

2007-12-26 13:31:00 | 京都だより
四条通りをぶらつき中。
京都に来たら、若い人間なら必ず立ち寄る“都路里”。“辻利”と書くと宇治茶の店になる。
めったに食べないパフェを食べてりゃ、またまた俗世間に引き戻される電話。
仕事が辞めたくなった瞬間じゃあ。

恒例冬の京都5

2007-12-25 21:38:52 | 京都だより
さすがに疲れました。
曜日がわかんなくなったな。
出町商店街はとても賑やかで、夕食に買ったお寿司はネタが分厚くてまずまず満足でした。
さて、朝は余計な仕事が舞い込んでちょいずれ込んだけど、高山寺・神護寺・仁和寺・妙心寺とめぐってきた。
登って疲れた、疲れて登った。
なんかなあ、俗世間から離れたというのになあ。

恒例冬の京都4

2007-12-24 22:50:01 | 京都だより
東大寺大仏殿の前には『鯉のえさ…鹿も食べられるます』と、張り紙のある箱がある。中には“麩”が入っているのだが、これは近くの施設のために設置されたものらしい。 で、私は毎回ここで500円を出して、鹿に追いかけられるハメになるのである。
けどねえ、鹿も鹿でさあ、何もあごをのせて待ってることないじゃんよ~。
自分のうちの犬や猫を思い出して、何ともいえない気分になっちゃうんだよね。

恒例冬の京都3

2007-12-24 21:23:46 | 京都だより
さて、朝は京都御苑を通り抜け今出川御門から地下鉄今出川駅に向かったわけだけど、御所のわきにきたら北の空に虹がかかっていた。
京都に通い始めて10数年になるわけだけど、虹をみたのは3度目。
朝ははじめてた。
まあ、悪くはない光景だったかな。

恒例冬の京都2

2007-12-23 23:32:01 | 京都だより
サスペンスドラマ。
特に京都が舞台の場合は、呼び出されたり、死体が発見されたり、延々と続く告白のシーンの場所はたいがい観光スポットと相場が決まっている。
しゃあんめえ、と思うが、やっぱり長岡京の方から次の場面が南禅寺の境内というのは、びっくりを通り越して感心するくらいだ。
スタッフの苦労がしのばれてねえ。
んでもって、今日は南禅寺。その広い寺領境内には南禅院をはじめ、各塔頭が立ち並んでいるが、琵琶湖疎水の水道橋も走っている。 寺の中に妙なものがあるなあ、という違和感もあるが、環境の中に溶け込んでしまって気にはならない。
というわけで、この琵琶湖疎水の水道橋の下で、よく死体が発見されたりするのである。
観光客がぞろぞろ歩いているから昼間では犯行に及べないだろうし、夜中はまっくらで歩けないような場所だ。そんなところに昼間呼び出す間抜けな犯人はいないし、ひとめを気にして犯行は無理だろうし、だいいち捕まっちゃうっての。夜中にそんな場所にのこのこいくわきゃないしね。
ま、そんなわけで、今日は寺の境内までも殺人現場にしてしまう罰当たりなサスペンス劇場のスタッフに敬意を評して、琵琶湖疎水の水道橋を紹介しました。
あ、正式名称は調べてね。