へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

そもそも人が多いのは…

2020-09-23 15:07:35 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

連休中は、いつもの種屋さんでのバイト(まだやってたwww)にあけくれ、種屋さんでは、たまに藤川農園から苗や球根を仕入れて売ることもある。
一緒にバイトをしていた亮君は、卒業後公務員となって社会福祉科にいるが、たまに遊びにいてくれる。その亮君の運転で軽トラをかっとばして藤川農園に球根をとりにいった。
「来年用のチューリップの球根、10,000コねえ」
と、荒波がかついで網袋を持ってきてくれた。
「だいぶ人が入ってんじゃん」
亮君が人であふれた売店を見まわした。
「入場制限しても、園内広いからさあ、奥にいて出てこないお客さんが後から湧いてきて大変だよ」
と、ため息をついた。
奥には、藤川先生のお母さんの趣味のイングリッシュガーデンがあって、そっちはそっちで出入口があるんだけど、共通入場券を持っている人がのんびりやってくるんだと。
「どっかのロープウェイで、ご時世なのに人が多いって逆切れしたやつがいるっていうけど、いやあんたもだろって、言い返したくなっちゃうよねえ」
藤川農園の場合、共通入場券の販売をやめていたらしいが、GO TOの影響でお試しに販売してみたところ、この人ごみになったらしい。
「悠樹さんがブチ切れて、この週末からやらねえと発言して、やらないことに決まりました。子供向けの1日キャンプもやらんそうです」
すっかり主になった悠樹さんの意見は、絶対なんだそうで、今や北別府さんにとって代わる勢いなんだそうだ。
「まあ、見込みが甘かったって見直してよかったんじゃん」
といえば、
「違いますよ、自分のところからクラスターを出したくないんだそうで」
情けなさそうな表情で荒波がつぶやいた。
まあ、どこでもそうなんじゃないのか?と、俺はチューリップの塊を見下ろしながら、心の中でつぶやいた。
「でも、大かたの原因はあいつなんですけどねええ」
荒波は、4~5人の家族連れを引き連れたキチローを指さした。
「うん、わかるような気がする」
亮君、口に出さないでくれ。あいつが、なんで今でもここで働けているのが、俺はマジで疑問に思っているんだから。。。


ピーマン

2020-09-12 12:13:56 | へちま細太郎

秋がきたー!!どこがじゃあ。細太郎です。

「パプリカとピーマンの違いってなんだ?」
と、たかのりは百合絵さんのつくってくれた肉詰めピーマンを口に頬張りながらつぶやいた。
「それな」
たかひろもいったん仏様にお供えしてから食べる。昔で言うならスケコマシのたかひろは、別に信心深いわけでもない。ただ、ここが須庭寺の本堂というだけである。
「おんなじだよ、もとは唐辛子」
俺は、そういいつつ赤ピーマンの肉詰めも食べる。
そろそろお彼岸も近く、須庭寺の掃除を1日百合絵さんの賄い付きでバイトをしている。娘を溺愛しすぎて叩き出された元ゾクの副住職は、修行のし直しで北陸の本山に送り込まれた。
住職様は、老いてもますます元気で藤川家のご隠居といい勝負だ。悪代官と越後屋のたとえの如く、そろばんと電卓は必需品である。
すると、外から元気な幼い声が聞こえてきた。
「なんだ、なんだ?」
と、みれば幼稚園児か保育園児ともつかない集団が、エプロンをかけた女性たちに付き添われて庭を散策している。
「百合絵を園長にして、こども園を開園した。ようやく認可が降りてな。まあ、補助金おりんのが難点だが」
住職様とご隠居様が親子丼を抱えてやってきた。
「あ〜そ」
しばらく子どもたちをぼんやり眺めていたが、突然たかひろが、
「あの保育士さんかわいい」
とつぶやき、本堂の片隅においてあったギターをとり外に飛び出していった。
「子どもたちの前でなにさらすんだ」
みきおが止めに入ろうとしたが、
「みんな、ピーマンって曲知っているか〜?」
と、イミフなセリフが聞こえてきて、え〜しらなあい、という子どもたちの笑い声が聞こえてきた。
「あ〜、ごめんごめん、パプリカだっけ?おにいちゃん、間違えちゃったよ〜」
バカか。全員で外の様子を伺えば、たかひろは園児たちを前にして、突然、かの有名な「パプリカ」を弾き出した。
「あなあたにあああいいたあいいいいい♪」
突然のことにぽかんとしていた幼児たちは、やがておなじみのメロディーにのって歌い出し、踊りだした。
「すご」
楽しそうな幼子たちに俺たちも和んだが、しかしたかひろの目的は別なところにあるのを知っているだけに気分は、まあ複雑だが、しかし子どもが楽しくしている姿はいいもんだ。
やがて曲は終わるが、「もう1回やって〜」の声に再び、たかひろはギターを弾くハメになった。
「ヘビーローテーションだ」
しんいちがあきれてつぶやいたが、たかのりも飛び出していって一緒に踊り歌い始めた。
「恐るべし、ピーマンの魅力」
といいながらもみきおも飛び出した。
「おめえ、いかねえの?」
しんいちにきくも、
「知らねえんだ、俺」
としょうもない答えが帰ってきた。まあ、図体がでかいから可愛らしい集団には似合わないだろな、と思わず笑ってしまった。
「拙僧も知っておるぞ」
と、住職様も踊りだそうと外に行くのを慌ててとめ、
「お彼岸が別な儀式になります」
と笑えない冗談を言った途端に、木魚をたたく木の棒?で叩かれてしまった。
「お前なんぞ、唐辛子の肉詰めで十分だ、うつけ者〜!」
住職様、頭の血管がキレますってば。。。
ところで外では、まだまだヘビロテ状態だ。