へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

週末の過ごし方

2012-03-18 23:15:12 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

週末、遊び場と化す須庭寺。
「なんだって?バカ殿がタコ壺にプロポーズ大作戦だって?」
羊羹を丸ごとかじりながら、なぜか水嶋先輩があきれている。
何でこの人がここにいるのかって?
「そりゃ、ここが菩提寺だからだよ」
美都地区豪農№2の水嶋家の跡取りは、藤川家のお彼岸の法事のためにここ須庭寺にいた。
で、お彼岸といえばあれだ。
「麿は田吾作のお守はあきたでの~」
と、近衛少将さんは須庭寺には顔を見せていない。
「でなにかい、タコ壺のおばさんはバカ殿と結婚する気あるのかな」
「どうだかねえ」
ほうじ茶がぶ飲みして、また新しい羊羹に手を出す。
うえ、気持ち悪い。
「そういえば、先輩は大学どこへ行くんですか?」
「ああ、おれ?案の定京大スベッた。で、しょうがないから都の西北大学に行くことにした。去年受かってたKO大学でもよかったのになあ」
なんだよ、合格したKO大学入学辞退してたのかよ。
「もったいないことしたね」
「別に。俺はどこでもいいんだもん。農業やるし」
あ~そ。
「おかわりいかがあ」
百合絵さんが新しい羊羹と、お茶を運んできた。
「法要終わったの?」
「まだみたですわ。ほら、わたくしクリスチャンですから」
何の関係があるんだ、覗きに行けばすむことじゃないか。
「相変わらず、とんちんかんですねえ」
「あらま、ほめても何にもでませんですわ」
だから、ほめてね~っつ~の。。。
ほんと、いい遊び場だよ。


女心は複雑怪奇

2012-03-18 01:07:41 | へちま細太郎

どんな、タイトルなんだ。。。

プロポーズは冗談だといって、と叫ぶロり娘をしり目に、元気に登校する細太郎にムカつく、俺はけんちゃん、理科の教師だ。
文句あっか?

大人から見ればくそガキな細太郎は、年上のおねえさんからみればかわいくて食べちゃいたい少年で、同じ年やら年下からはかっこいい先輩なんだそうだ。
いったいどういう感性してんだ?
バカ殿のタコ壺へのプロポーズ攻撃は2週間たってもやむことはなく、毎日毎日、
「結婚してくれ」
「すかたーん」
の繰り返しで、よくも飽きずにやっているなということで、今では誰も気に留めなくなってしまった。
だいたい、この騒動の元凶は野茂のじいさんとご隠居の密談なんだが、このじじいどももまったく反省の色がなく、
「保健室より須庭寺の嫁の方がまだいい女じゃないのか?」
「エロボーズめ、目の付け所が違うわな」
と、じじいとは思えぬ猥談をかましまくるだけで事態を収拾する気がないようだ。
この事件の被害者は15歳の野茂なんだが、今まで男勝りの色気のない娘だと思っていたんだが、どうしてどうしてそんじょそこらの女に負けてはいない。
が、そんな野茂なんだが、自分では細太郎に対する気持ちに気づいていないっていうところが、逆にまだまだ子供なんだなと思わせる一面もある。
そーなんだ、野茂は細太郎が好きなんだ。俺にはよくわかる。
細太郎にはりょうこという、一見しおらしい小学校の同級生の彼女がいたんだが、いつのまにか同じ中学校のきょうすけとやらとできてしまったらしい。
しかも、二人そろって同じ高校に合格したときいて、細太郎はしばらく落ち込んでいたようだが、立ち直りが早かったのか、ホワイトデーのお返しを嬉々として配って歩いていた。
それがまた野茂の女心に火をつけ、怒りがなぜかタコ壺へと向けられているという理解不能な行動へと走らせていた。
「いや、笑える笑える」
俺は家でバカ殿の姉の嫁に話して聞かせると、
「私だってあんな小さいコが弟の嫁になるくらいだったら、細太郎くんの嫁さんになった方がマシだと思うわ」
と、こっちはこっちで複雑な家族愛を語ってくる。
う~ん。。。
いやはや、人生は奥が深く、理解不能だ。。


けんかをやめて

2012-03-05 13:08:24 | へちま細太郎

サッカー部に女子の入部希望者が絶えないから、ちょっととまどうけんちゃんだ。
やあ、久しぶり。

のぶちゃんのところに、またまた女の子が生まれて、今度こそ、
「清香(さやか)と名付けたぞ」
と、優香を背中にしょってあらわれた時は、腰を抜かさんばかりに驚いたもんだが、それ以上にバカ殿の気が狂ったとしか思えないプロポーズには、愛車のけんちゃん号でさえチェーンが外れた。
金曜日の朝っぱらからの、
「結婚してくれ」
騒ぎには、ブチ切れた匿名希望の東山がタコ壺保健室に籠城騒ぎにまで発展した。
片山教授と中島教授は、説得にあたるどころか、
「いつまで我慢できるか、かけてみんか?」
と、(仮)嵐1号2号に空き缶を差し出す始末だ。
さらに、この騒ぎで激怒したのが、あわれ婚約者?の野茂だ。
「何よ、何なのよ、あんなオバサンのどこがいいのよ」
女心は意味不明だ。
「俺は、ガキよりも20代のオネーサンの方がいいんだけどな」
と、浜中がキレまくる野茂をとめるどころか、遠巻きにして放置だ。
「触らぬ神に祟りなしだ。特に思春期のロリ娘は、自分中心に世の中が動いているようなもんだからな。妄想の中じゃ三角関係は男2人に自分1人と相場が決まっとる」
「2人とも自分が好きで『けんかをやめてえ~、二人をとめてえ~わたし~のた~めに~あらそわないでえ~』というアレか」
「だから、女2人に男1人は許せない、しかも、アラフォー世代の磨きがかかった女はただのオバサンだから、余計許せない」
15の小娘からみたら、高校生ですらオバサンだよなあ、とつぶやきながらコーヒーをずすり。
「きいいいいいいいい」
性悪娘のはるみも遠巻きにするくらいの暴れっぷりだが、そういえば細太郎はどうした?と、教室をのぞきに行けば、なんとウノなんぞやっている。
「おまえ、とめにいかねのかよ」
と、声をかけたものの、
「あんなになっちゃったら、止められないでしょうが…」
「なんだ、おめえ」
「何言ってんの、そ~ゆ~ことを教えてくれたのは、藤川先生やけんちゃん先生たちでしょ。それに、何されるかわかんないし」
「さめてんね」
…というか、かわいくないガキだ。
なんで、こんなクソガキがバレンタインチョコの№1なんだが、わからん。
あ~、なんだってこんな問題ばかり起こる学校の教師になっちまったんだ俺は…。
深く深く反省するばかりであった。


前代未聞のプロポーズ

2012-03-03 10:35:27 | へちま細太郎

おはようございます、へちま細太郎です。

昨日、卒業式あとは学校こね~ぜ、といきまいていた藤川先生は、何を思ったかイの一番に学校に向かい、到着するなりタコ壺保健室に飛び込んで、
「俺と、結婚しろ~」
と、匿名希望の東山先生に向かってとんでもないことを叫んだ。
「あ?何かましとんじゃ、おのれは」
突然の何の脈略もない「結婚してくれ」に、匿名希望の東山先生は、持っていたトラッキーのカンフーバットを握り直す。
「だから、つべこべ言わず、結婚しろ」
ここで言っておくが、藤川先生と匿名希望の東山先生は、別に恋愛関係はない。付き合っているという話もきかないし、ヤッちゃった話もきかない。
ただの同僚というだけの関係だ。それなに、
「は?結婚してくれ?どのツラ下げてそんなわけのわらんことをぬかす?」
「どのツラ?こんなツラだ」
ボケと突っ込みか…。
ぼくとおとうさんは、藤川先生の朝っぱらからの様子に異常事態を想定して、スクールバスを利用せず、藤川先生のZを二人して高速道路をかっ飛ばして追ってきた。
で、今の結婚してくれの叫びをきき、結婚漫才を目撃した。
「一生不自由はさせない、好きなことしていていい、当主夫人の仕事もしなくていい、お好み焼きがおかずでもいい、なんでもいいから結婚しろ~」
なんだそりゃ…。
みているこっちもわけがわからないのに、当に東山先生はもっとだろう。
眉がピクリと動き、トラッキーのカンフーバットを握る手が強くなったと思ったら、
「このスカターン!!」
という叫びとともに、カンフーバットが藤川先生の顔面をいやというほどぶんなぐった。
「ひえええ」
ぼくらは驚いたが、しかし藤川先生は喧嘩なれしているのか、殴られても平気な顔だ。
頬を押さえながらも、
「何すんだ、この凶暴女、人がせっかくプロポーズしているのに」
と、懲りずにまた「結婚しよう」を連発。
「誰が頼んだんじゃ、このボケがっ!!」
「やかましい、おめえのような女、他に誰が結婚してくれっていうんだ!!」
「もう一遍、いうたら、淀川に沈めたる!!」
「おお、本望だああ」
「うわあああ、何なんだ、こんな意味不明なプロポーズみたこともきいたこともないぞ。。。」
おとうさん、頭を抱えている。
今後の展開が恐ろしいと思えた、朝のとんでもない一場面だった。。。






 


結婚相手にチョ~ドイイ

2012-03-01 19:58:32 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

卒業式の壇上に、片山教授のくそまじめな顔が笑えた。
昨日は、あれから杉内攻略法が話題の中心となり、あげくたかのりが立ちあがっての振り向き涙こらえに発展して、大爆笑になってしまった。
だから、片山教授…もとい、片山学長のモーニング姿はペンギン…じゃなくてつばめそのものだった。もっとも、スリムな教授は、つば九郎ほど貫禄はない。
ぼくたちの卒業式は、公立の合格発表を待ってのことだから、まだまだ先だ。受験でけっこう空席があったけど、先輩たちはいつも通りだったね。
卒業式の間中、背中に野茂の視線が痛かったけど、無視してやった。おまえが、へんなことを決心しなけりゃ、藤川先生は学校を続けられたんだ。
といってもさ、辞表は学校が受けつけなくて保留どころか、
「いつも通り勤務してください、理事の伝言です」
と、御当主のおとうさんから間接的にくぎを刺されたらしい。
3年生を見送って、他に授業のない藤川先生が、おとなしくしているはずはなく、
「とりあえず、オーストラリア、F1を見に行ってだな。次にドイツのホームスティー先にあいさつに行き、イギリスに逃げたゾク仲間を探しだしてだな…」
と、おばあちゃんに嬉々と説明している。
「あんたね、もし私が喋ったらどうなると思うの」
おばあちゃんもあきれ顔だ。
「喋ったっていいよ~。悪いのはむちゃくちゃなことを言い出す、じじいどもだからね」
「あんたがいつまでたっても結婚しないからでしょうが」
「だからっていって、中学生はないでしょうが」
「心当たりねえのか?身近かによ~」
おじいちゃんは、ひざに抱いているミッフィーの頭をぽかりとひとつ。
「身近かに~?いねえなあ」
「先生たちだって、独身はいっぺよ」
「ありゃあ、女じゃねえしなあ」
頭をひねって、どうやら結婚相手になりそうな先生を思いめぐらしている。
「いいじゃん、タコ壺でも」
おとうさんがぼつりといった言葉に、藤川先生が、
「ありゃ、女じゃねえ…」
と、言いかけたけど、
「待てよ。あいつならノリは悪くなさそうだな」
「は?」
藤川先生は、何やら考え込む。
ぼくたちは顔を見合わせ、藤川先生をちらちらと盗み見た。
「あのさ、冗談だから」
おとうさんは、自分の失言を取り繕ったが、
「いや、今夜、しばらく考える」
と、藤川先生は立ち上がり、
「風呂入るぞ」
と、リカを抱いて風呂に突進してしまった。
「おい」
「あんた、ほんとにバカな子ねえ」
おばあちゃんとおじいちゃんは、おとうさんの顔を見てため息をついた。
「ふと、思いついたんだもん、仕方ねえべ」
仕方ねえべですむのなら、結婚は簡単でいいはずだよ、おとうさん。