へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

メリークリスマスでした

2016-12-26 22:08:06 | へちま細太郎
俺だ、藤川だ。

世間はクリスマスだが、うちは違う。
法事だ。
おおおばあさまの連れ合いが、こともあろうにクリスマスイヴにあの世にかっ飛んでしまって、小さなころからクリスマスなんかしたことない。須庭寺の薄暗い本堂で何で坊主の読経を聞いてなきゃいけないのか、わからん。その坊主に、あのアホ姉弟が加わって、大じいさんも、曾孫に経を読んでもらえば満足だべ。
どうせなら、アホ姉弟と、一応藤川家とは庶家の関係の住職もいるわけだし、3人で効き目のある経でもやってやればよかろう。
で、ところがだ。このあともある。
法事につきものの、精進おとしみたいな宴会。うちは、これを俺所有の別宅でハデに催すんだ。
もちろん、阿部さんが指揮して百人近くの料理を賄う。で、当然のことながら、うちは、一族あげての大飯ぐらいだ。百人とおもっていても、その1,7倍は喰らう。厨房は戦場だ。
で、今年は、ものすごく苦情が出まくった、若いのから。三連休だぞ。ネズミーに行きたい。ホテルの予約も入れちゃえばこっちのもんだ、と思ったのか、バックレ準備したやつがごまんとでたが、そんなことを、当主であるオヤジが許すわけがない。
23日から、農場に缶詰にされて、彼女に振られる、どうしてくれるんだ、と喚いた大学生のガキがいたが、実孝がスマホを奪うなり待ち合わせ場所に愛車のフェラーリで突撃し、そのままアフターサービスを行う徹底ぶりだった。
どさくさ紛れにバックレようとした俺には、のぶちゃんがべっとりと張り付き、抜け出す隙もなかった。
須庭寺の例の小部屋に隠れるべ、とやってくれば、細太郎の大学の友人の3人組が、中で酒くらっていて、それもできなかった。
「すいません、バイトなんで」
と、荒波がげろして言うには、
「たぶん、ここで細太郎が治美ちゃんとしけこむか、ばか殿が逃げてくるからいろってきとで」
暴走族坊主、あとでライダーカード、売り飛ばしてくれるわっ!
俺が、結婚して種馬になれない理由、わかってくれちゃう?