へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

降っても降っても…

2012-02-29 13:47:15 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

朝から雪が降るというので期待していたら、朝は雨だった。
今日は、明日が高校の卒業式というので、中学生も参加の予行練習という予定だ。
こんな日に、寒い場所で立ったり座ったりはいやだなあ、と超不機嫌。
「雪じゃないのぉ」
バス停で朝からはるみのキンキン声が響いて余計頭痛い。
「だいたい、罰あたりなんだよ。雪国の人は大変だっていうのに」
ぼくがひとりごとを言えば、
「それは、そこに住んでいる人はさあ~」
と、キチローが横から口を出してきたので、シカトしてやった。
でも、学校へ着くなりみぞれがだんだん白くなり、予行が始まる時間になると、
「雪だ」
と、大はしゃぎするくらいの降りになった。
「でも、これは積もらないよなあ」
水分を多く含んでいる春の雪は、積もらないが凍ったらやっかいだ。
「あ、でも明日は気温が高くなるっているから、大丈夫じゃない」
野茂が向こうの方でわいわいやっていた。
あいつ、ゼってえぼくを避けている。
ま、いいけどね。
野茂は、何を思ったか、あれほど嫌がっていた藤川先生との結婚をあっさり承知してしまって、中学を卒業したら、結婚式をあげて高校へは行かない宣言をした。
当の藤川先生は、そんな勝手な決定を承知できるか、とマジでキレてしまい、辞表を叩きつけて高校の教師をやめることになってしまった。
「俺は、二度と美都には戻らんぞ」
と、卒業式を終えたら、出奔するからな、とぼくにこっそり教えてくれた。
雪、積もらないといいな。
いつも通りの春がくればいいな、とぼくは降りしきるみぞれ交じりの雪にため息をついた。

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タコ壺保健室で場外戦始まる

2012-02-28 16:56:11 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

2月の初めに野茂と喧嘩して以来、口をきいていない。それどころか、野茂は学校の寮に籠城を決め込んでしまい、阿部さんのお部屋で生活している。
阿部さんは、藤川家の調理師でもあるが、寮の経営もかねていて、管理栄養士兼調理師、および計理士というつわものだ。もっとも、阿部さんは実質上は藤川家の調理師だから、ダンナさんと息子さんがここの経営を一手に引き受けているそうな。
ま、藤川家の経営グループなんだけどさ。
寮に部屋を持つ阿部さんなんだけど、実際には休憩所みたいなもんで住んではいない。そこへ、野茂が籠城したもんだから、阿部さんの居場所は、
「うちは、駆け込み寺やないねんで、カフェともちゃう」
と、匿名希望の東山先生をイラつかせる結果となっている。
「だいたい、ここにいたいんやったら、そのブルーのユニフォームやめてんか」
「だったら、このオレンジうさぎとペンギンはなんだ」
と、小百合の根元にある、うさぎとペンギン…いやメタボツバメのぬいぐるみを指差す。
「あ~考えても、おぞましい、このウサギ。めんたまひっついてる」
ビジター用のブルーの旧ユニフォームの背中には「ASAO 41」の文字だ。確かこの間は、「MORINO 30」だったし、「ARAI 25」(現在は阪神の新井弟)もあった。いったい、いくつユニフォームもってんだよ、このおばさんは。
「目ん玉ひっついているって、なんだこの野郎」
いきなり、サッシ窓をあけて中島教授が姿を見せた。
「きたな、強奪軍団」
片山教授が、自慢のハワイコナを持ち、隣のカウンセリング研究所の境のドアを開けて登場した。
「だいたい、失敬だろ、ペンギンってなんだ。これは“すわくろう”という、かわいいツバメのぬいぐるみだ。わけのわからん、カバと一緒にするな」
「カバとはなんだ、カバとは。あれは龍だぞ。だから“シャオロン”“パオロン”なんだ」
「ロン?できそこないの赤毛のロンか?」
「それは、ハリーポッターだろ」
ぼくら5人は、放課後ここへやってきて匿名希望の東山先生秘蔵の梅ジュースを、飲みながらサボった分の宿題を奥で片付けていた。
「ま、落合去ったあとの中日はおそるるにたらず。うちの杉内には手も足もでまい」
「畠山の一撃でその杉内も終わりだな」
「何をいうやら、能見にかなう名選手はいまい」
「金本に頼っているようでは、おわりだよ」
「最近は、鈍足も復活したようだな」
「は?KYの老害がいるような強奪球団に文句は言われたくはないわな」
「それをいうのなら、老人会みたいな中日も同じだろ」
「守道と、権藤を貶めるような発言はゆるさん」

ぼくら、ため息しかでませんよ~。
 

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朝からおしゃべりタイム

2012-02-28 08:49:47 | へちま細太郎

おはようございます、へちま細太郎です。

中島教授が中学・高校に抗議しても、今度は、
「保護者の要望です」
の一点張りで、高校先取り授業が行われ、ぼくらは頭が痛かった。
「やっぱり、県立受ければよかったかな」
と、後悔先に立たず。
「失恋のショックは大きいねえ」
数学のプリントと格闘しながらしんいちがクスリと笑った。
「しょうがないよな、相手がきょうすけじゃ」
「あいつはいい男だもんなあ」
たかのりとみきおも調子にのって言う。
「俺も男なら選ぶかもな」
たかひろはずずっとジュースをすする。
「落ちて二人ともうちに来たりして」
一番考えたくないことを…。
「いいじゃん、孟宗一チョコもらえる男を振ったんだ。それを見せつけてやれば」
「おまえ、りょうこより、野茂の方が似合ってるぞ」
突然、たかひろに面と向かって言われ、
「ふざけるな、あんな男女のどこに魅力がある」
ぼくは必死に抵抗するも、
「うん、ぼくもそう思うけどな」
としんいちまで言い出して、非常にムカついた。
「といっても、あのおっさんの嫁さんになるんじゃ、しょうがないよな」
「気の毒だけど、そっちもあってるよ」
「昔ならよくある話だろうけどね、未成年じゃ、淫行だよ」
「正式に結婚なら淫行じゃないべ」
「いや、それよりあのバカ殿が、ガキ相手にできるのかな」
ぼくも、そう思うんだけど、それはそれで野茂より藤川先生が気の毒に思う。
「う~ん」
朝から学校のカフェで、授業をサボりまくってロクでもない話をしているぼくらでした。
やれやれ、また呼び出しだなあ。。。

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寺ガールお寺に泊まる

2012-02-06 21:03:30 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

土曜日に須庭寺にやってきた寺ガールは、ご隠居さまと住職さまのぎっくり腰になりそうなくらいのはしゃぎっぷりのノリにのせられ、アメリカ軍の焼夷弾にも焼け残った境内を散策している。
「これがうまくいったら、宿坊でも始めんか」
ご隠居の言葉に、
「いいねえ、それ。寺ガール専門で1泊2食付、座禅、説法あり」
と、住職様は袈裟の袂からそろばんを出して、
「5,000円が相場だな」
「何をいうか、このナマグサ坊主、布団の上げ下げ、掃除までさせるとだな、4,000円で十分だろう」
「いやいや、そこはだな、食材費も考えないとだな」
ご隠居さまも電卓を出す。
「また始まったよ」
ぼくとたかのりは、あきれ顔。
「おい、おまえらヒマなら手伝え」
副住職さんがぼくらに、本堂を掃除しろという。
「今晩、もしあの二人が泊まるようならここを提供する」
「え~、マジ?」
本堂に何が出るか、わかってていってるわけ?
「俺はあんなちゃちゃらした女は嫌いなんだ。何が寺ガールだ。どこまで根性があるか、本堂で覚悟をしてもらおう」
ぼくとたかのりは顔を見合わせた。
「でも、ちっともこわくないよ」
「この世の中、おまえらみたいなやつらばかりではない」
副住職はそういって、意地くそわるく笑った。
「やだやだ」
ぼくらは文句を言いながら本堂の掃除にとりかかったんだけど、
「逃げ出すかなあ」
「確かめてみたいなあ」
と、やっぱり好奇心には勝てず、
「ぼくらもお手伝いしてお泊りしまあす」
と、いい、百合絵さまに喜ばれた。
百合絵さまの手料理は思ったより上手で、ことみさんも、
「やっと家事から解放された」
と大喜びで、小さい子供たちの世話をしていた。
そんな百合絵さんの心づくしの手料理と、住職様の説法ならぬボケ話、副住職の座禅と、
「やっぱ、来てよかったね」
「今夜、ホテルとっていなかったから、助かっちゃった」
と、寺ガールたちは大満足。
そして、本堂の須弥壇の前に布団を並べて寝たんだけど、翌朝全員が寝不足な顔で朝ごはんに現れた。
「おや、どうされた」
副住職は、左の眉をわずかに動かした。
「夜中、なんだか物音がして…」
「寒気がして」
「なんだか人がいるような気配がして」
と、しくしくと泣きだした。
「本堂とはそうしたものです。安息の場でもあるのですから」
副住職さんは、わざとらしくおごそかな声を出す。
「安息?」
3人の寺ガールは、再び青ざめると、
「やっぱり、お寺って遊びにくるところではないのですね」
と、口々に言い、百合絵さんの客間で休んでいきませんか?という申し出も断り、須庭寺を後にしたのであった。
「たかのり、細太郎」
副住職さんは、3人の姿が消えるやいなやぼくらの耳をつかみ、
「いたずらしやがって」
と、蹴とばされた。
「ばれてた?」
「みんなも協力してくれたよ」
ぼくらは、ダミーのご本尊さまにからまっている関ヶ原のおじさんと鳥羽伏見のおじさんを指さした。
「てめえらあ、先祖の霊をこき使うとは何事だ」
副住職さんの怒りにも、ぼくらは悪いことをしたとはちっとも思わなかったのだ。
う~ん、ぼくら罰当たり?

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寺ガール

2012-02-06 07:22:21 | へちま細太郎

おはようございます、へちま細太郎です。

先週、野茂と大げんかをして以来、面白くない。面白くないことに、野茂は学校を休んだ。
休んだ理由がインフルエンザときて、ふんざまあみろ、と思ったもんさ。
週末に入って、またもやヒマになったぼくはたかのりと遊びにいった。
「百合絵さん、割烹着だなんて、イメチェンしすぎですよ」
たかのりは、口が達者でしかも減らない。
「シスターの服の下は坊主かと思いましたよ」
「去年はお式まで美容院へいけませんでしたから、伸び放題でしたのよ」
ジーンズに割烹着姿の百合絵さんは、それはそれで初々しい。
いったいこの人はいくつなんだ。
「このおばさんは、姉ちゃんといっしょだからな、不惑をとっくに超えている」
副住職さんが火鉢で餅を焼く。
本堂には暖房器具を置いていず、須弥壇の前でぼくらは火鉢を囲んで茶飲みだ。
本堂は、須弥壇のある部屋が広く、両脇に14畳ほどの小部屋がついている。普段はふすまで締め切っているけど、法事などがあった時は開け放てばかなり広い座敷になる。
法堂は、本堂から渡り廊下でつながっていて、こっちは昔ながらの寒い作りで、ここで法事や葬式をしている。本堂を使えばいいのに、正座するのが嫌な檀家に文句を言われて法堂のみ使用になっているとか。
と、そこへきゃらきゃらした声が聞こえてきた。
「すいませ~ん」
副住職は若い女の声に、
「?」
と怪訝な顔をして、障子をあけて出ていくと、
「お寺拝観させてもらっていいですかあ」
と、若い女性が3人くらいたっている。
「当寺は観光寺ではないぞ」
と、すごんだ目つきをしてみたが、
「かまわぬではないか」
「当節流行の寺ガールかの?」
住職さまとご隠居さまの声がする。
「はい、藤川家の菩提寺だったんですよね」
美都市の観光案内をぱらぱらめくる。
「なんでそんなのに載ってんだ?」
副住職は不機嫌になったが、
「拙僧がこの隠居と相談して決めた。見学自由、座禅OK、精進料理食べませんか」
という、住職さまのニコニコ顔にいっそう不機嫌になる。
「精進料理って、あんた昼飯はタイカレーだろうが」
「やん、お坊さんもタイカレー食べるんですかあ」
「昼がまだなら、食べていかんか?」
「嫁の手作りでな」
と、百合絵さんを手招きで呼び、
「住職の家内でございます」
と、挨拶して寺ガールをびっくりさせた。
「今はやりの年下婚ですかあ」
「わか~い」
「びじ~ん」
ご隠居さままで悪乗りして、
「わしゃ80過ぎたが、元気だぞ。ばあさあんをおんだしてわしと結婚せんか?」
と言ったもんだから、本堂前は大騒ぎになってしまった。
「藤川家は跡取りが独身バカだから、子供うんだらウハウハですよ」
たかのりもご隠居に調子を合わせたもんだから、余計盛り上がった。
「なんなんだ」
副住職さん1人が不機嫌だったが、ぼくらは副住職さんが焼いていたおもちを食べてしまい、副住職さんは余計に機嫌が悪くなってしまった。
知らんわ。

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