へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

面影ばかり…2

2006-09-09 23:59:37 | へちま細太郎
長いトイレ休憩でした(^_^;)。

「妹姫はどうでもよい扱いを受けていたから、その家来の息子と結婚してもよいと言われていた。それが、いきなり大名と結婚しろはないよな。妹姫の恋人は切腹した。妹姫は恋人が生きていればこそと思えば殿様の言葉に従ったのに、絶望のあまり髪を下ろして出家してしまったんだな。その姫が住んだのが、この寺なんだな」
と、藤川先生が、しみじみとした顔で話してくれました。
もとの表御殿が仏間に変わっていると書きましたが、そこに、この妹姫のいはい(位牌)としょうぞう(肖像)画がありました。
藤川先生がしょうぞう(肖像)画…といってもかけじく(掛け軸)なんですが、それをみせてくれました。
きれいな女の人でしたが、かなしそうな目をしていました。
「いいか、細太郎」
と、かけじく(掛け軸)の棒の横をはずずと、中から紙を取り出しました。
ひらくと、
「おもかげばかり」
と書いてあって、一束の髪の毛がつつんでありました。
「これは?」
「たぶん、死んだ恋人の髪の毛だろうな」
藤川先生が、またもとの通りにくるんで、たいせつにたいせつにしまいました。

ぼくは、むずかしくてよくわかりませんが、でも、このお姫様がここに住めてよかったなあ、と花いっぱいの庭をみて思いました。