へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

暑さ倍増、熱血エース誕生

2012-07-27 16:02:34 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

猛暑お見舞い申し上げます…てなくらいの暑さで、夏休みに入ってからこっち、体育館での部活はそれこそ地獄だった。
炎天下の野球応援も死にそうだったけど、とっと負けてくれ、と思ったにも関わらずシード校を蹴散らして3回戦まで行きやがって…。
高校に進級したぼくらの中で、足の速さをかわれてしんいちが野球部にスカウトされ、
「坊主になるのはいやだ」
と、学校中逃げ回ったが、結局とっつかまり金本監督に、バリカンで丸刈りにされてしまった。
「よっしゃ、お前は代走専門な」
「そんなむちゃくちゃな」
髪を整えるのに30分は時間をかける色気づいたしんいちに、丸刈りの洗礼は星飛雄馬以上に目玉が燃え盛る現象を引き起こした。
「いつかエースを引きづりおろしてやる」
と、わめきたて、投球ホームを金本監督にひっついて習い、
「足腰を鍛える」
と、それまでチャリ通だったのをジョギングにかえてしまった。
「なんだあいつ」
バリバリのラガーマンになったたかのりとみきおは、日に焼けたくましくなったしんいちに唖然。
「面影ないじゃん」
と、はるみは爆笑し、中学時代からの彼女とべたべたなたかひろは、
「あれじゃあ、もてねえな」
と、呆れられた。
で、気が付けば、1年で背番号11の控えの控えピッチャー。代走どころか、代打で打ちまくるわ、打たれたエースの代わりに投げるわで、大活躍。
期待の1年生エース!と、新聞に書きたてられ、4月までのへなちょこ野郎はすっかり影をひそめてしまった。
「将来は甲子園目指します。プロ野球目指してがんばります」
と、大胆なインタビューの受け答えをしていた。
「どうなってんの?」
と、かき氷を食べながら恒例のべろ信号をしながら、俺たちは結局暑さに参っているだけだった。
ま、そんな、もんだ。


野球応援の花形はチア?

2012-07-21 12:52:24 | へちま細太郎

こんちには、へちま細太郎です。
暑中お見舞い申し上げます。

7月に入るとまもなく期末テストと野球応援が待っていた。
応援団の団長は、とうぜん秀にいちゃんだった。
はるみは、高校に進級すると、なぜか応援団所属のチアに入部した。
ユニフォームにあこがれたな、とあいつのミーハーぶりから想像できた。
そこへ、なぜかキチローが団部に入った。
「ストーカー野郎」
と陰口をたたかれたけど、結局は運動部並みのしごきに耐え切れず、脱走してしまった。
「来る者拒まず、去る者追わず」
秀兄ちゃんは、もとから大嫌いだっただけに、いなくなってくれてほっとしたみたいだ。
「わざとしごいたんじゃね?」
と、たかのりはラーメンとおにぎりを同時に食べながら、姿勢よくご飯を食べている秀兄ちゃんに大胆に質問した。
「俺は、他人の悪口は嫌いだ。嫌いだが、俺はそれ以上にあいつが嫌いだ」
秀兄ちゃんは、表情も変えない。
「でも、はるみはかわいい」
と、信じられないようなことを言った。
「え?」
「は?」
「マジ?」
俺たちは、食べる箸をとめて、秀兄ちゃんの顔を思わず見てしまった。
「なんで?」
「おまえら、わかってない」
ほんのり顔色が赤い。
「まさか、秀兄ちゃん、ほれちゃった?」
ぼくが秀兄ちゃん、というものだから、ぼくらの仲間はみんな秀兄ちゃんと呼ぶ。
みきおも、たかひろも、しかしそれ以上は何も言えない。
やっぱ、怖いもんな。
「とにかく、うちのチアは、プロ野球のチアなみに素晴らしい。はるみはそれについてこられるんだから、たいしたもんだ」
「はあ」
小学校からいっしょだったぼくたちは、あいつの小学生時代を知っているだけににわかに信じがたかったけど、秀兄ちゃんがいうんだから間違いはないんだろうなあと、はるみに対する認識を改めてみようかな、という気になった。
それにしても…。