へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

入学式

2012-04-06 23:03:23 | へちま細太郎

ピカイチです。
細太郎の父です。

今日は、息子の高校入学式。
事務職で忙しい俺は、入学式までは出ていられない状況だったが、同僚の田原と野村が2時間くらい抜けても誰も文句は言わない、と言ってくれたので講堂に急いでむかった。
よく育った細太郎。
双子で生まれたのに、もう一人は母親とともに育ち、物心ついた時より一度も二人には会っていない。
豆太郎の翼も、無事高校生になったぞ。
母親は…。
ま、いい。
それにしても、何で担任が久保田なんだよ。
浜中といい久保田といい、俺の遊び仲間だ。
願わくは、この3年間、あのバカ殿にだけは世話にはなってほしくはないと思うのは、父親として当たり前の心境だろう。
これ以上、プライベートがロクでもない教師に担任になられちゃ、俺は頭痛の種が増えそうで困る。
おい、細太郎、ななめ前の女子に見とれてるな、俺はお前をナンパな男に育てた覚えはないぞ~。
ため息ばかりが出る。。。
息子の門出なんだけどなあ。。。


あしたは入学式

2012-04-05 23:49:04 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

今日から、学校が始まった。
といっても、入学式前なのでぼくらはふつうに部活にきていた。
一応、クラスはおとうさんの書類をみてしまい、わかっちゃった。
う~ん、担任が久保田先生って、どういうことだ?
まあ、いいけどさ。
え?事務職のおとうさんの書類をどうやってみたかって?
おとうさん、財布を忘れて、ぼくにお金をせびりにきたんだな。
「大学行けばさあ、キャッシュコーナーあんじゃん」
と、おとうさんの真っ赤なままチャリを乗り回しながら、文句を言えば、
「やかましい、財布ごと忘れたんだ、キャッシュカードなんか、持ってねえ」
と、情けない答えが返ってきた。
「高校入ったんだからさ、お小遣い値上げ要求しちゃおうかな」
「ちゃんと休まずに行けたら、値上げしてやる」
強気な言葉だなあ、昔のおとうさん、どこいった。
そういえば、中1の時の事件?以来、あんまりぐずぐず言わなくなったな。
しつこくいろんなこと言わなくなったしなあ、うっとおしくなくなってよかったけど。
「うるせえな、くそおやじ、ちゃんと行くよ」
くるくる事務局前を回っていると、けんちゃん号が放置してある。
相変わらずの骨董品だけど、でも目立つなあ。
そこに、青いチャリに乗った阿部さんが猛烈な勢いでこっちに向かってきた。
「ちょっと、こんど~さん、農協のけんちゃん先生の友達の木村さん」
「木村さん?あの人がどうしたって?」
農協の木村さんっていうのは、けんちゃん先生とのぶちゃん先生の中学時代からの友達で、婿養子に入る前は与田さんとかいっていた人だ。
「米がまだ届かないよ。早く届けるように文句いって」
米だけは農協からしっかり届く、うちの学食。藤川家の米は、藤川家が営業している定食屋に回すので、学校までは手が回らない。
え?何で定食屋だって?考えても見てよ、おしゃれにメシを食らう一族か?
「おかしいなあ、昨日届くはずだったのに」
二人のやりとりを耳にしながら、阿部さんのチャリに目をやれば、青いコアラのシールがはってある。ぼくの視線に気づいた阿部さんは、
「ああ、これドアライダー、名古屋の実家に買ってもらった」
と、自慢げだ。
はいはいはい。。。
学校の桜はようやく開花を始めた。
あしたから、ぼくは高校生なんだなあ、とふとおとうさんを振り返ったら、なんとなく老けたような気がしたのは気のせいかな。
まだ、36だったよなあ。。。ほかの人からみれば十分に若いんだろうけどね。


秀兄ちゃんの好みのタイプ?

2012-04-04 23:40:50 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

高校生でもないのに、高校生のバスケ部で練習をするぼくたち…といっても中学時代からあんまりメンツがかわらないのは、中高同じ場所にあるからだからしょうがない。
孟宗学園は中高一貫じゃないから、高校に入ってからも新入部員はいる。
「そういう連中にレギュラーとられたら恥ずかしいだろ」
と、中学校の時からの先輩が、汗をふきながらぼくらを見下ろした。
「といっても、鳥谷や唐変木野郎のシゴキで残るのは、結局中学からの部員だけだものなあ」
「みんなサッカー行っちゃうし…」
硬派だと自称していても、サッカー部に入るとナンパに激変するのはたぶん顧問のせいだろう。
「情けない、それなら我が団部でひきうけてもいい」
今年から団長になった滝沢さんこと、ぼくの又従兄の秀兄ちゃんが直立不動の姿勢で立っていた。
この人の親戚には広之お兄ちゃんもいるわけで、まったくタイプが違う。
ぼくや、広之お兄ちゃんがはみ出してんのかな?
「秀兄ちゃんさあ、団部楽しい?」
「翔、おまえ学校楽しくないのか?」
と、逆に質問されて返答につまる。
「高校入ったら、赤松にしたようなマネはできないぞ」
「あ、すっかり忘れてた」
ぼくは、やる気がなくて学校にいったもののサボりまくって授業に出なかったんだ。担任の赤松はおかげで、背中に生首を背負うハメになったんだっけ。
そんなことすらすっかり忘れていた。
「ゲンキンだな、おまえ」
「そりゃもう、欲の塊で…」
鈴木がぼくを見て、くすっと笑う。
「おまえねえ」
団部にいると時とは違う秀兄ちゃんは、昔と同じくやさしい兄ちゃんだ。
「秀兄ちゃんが、野茂の結婚相手になればいいのに」
と、思わずつぶやいて、ききつけた秀兄ちゃんはニコリともせず、
「あんなのは女とはいわんし、いくらご隠居さまに言われても、これだけは断固拒否する」
と、強い口調で拒否の言葉を返してきた。
「ナンパのバカ殿に嫌われ、硬派の滝沢先輩にも拒絶される野茂って、女として魅力ないってことかあ」
鈴木が苦笑すると、
「そんなことを言うな、あれはあれで…」
と、秀兄ちゃんは言うものの、結局は言葉につまってしまった。
かわいそうな野茂。
でも、ぼくは同情はしないし、ぼくは気の強い女はタイプじゃないしね。。。
新学期をまもなく迎えようとする、春の気持ちのいい午後だった。
ふええっくっしょい。。。
ぐずっ。なんだ?風邪か?
突然、くしゃみがでたぞ?


くつろぎタイムは須庭寺で

2012-04-03 23:48:44 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

今日はとんでもない荒れた天気で、部活も午前中で終了して帰ることになった。
中島教授は温室が風で吹き飛ばされないようにあたふたしているし、結婚してくれの声も風にのって聞こえてきた。
春だというのに、この嵐はいったいなんだよ~。
同じように部活できていたたかのりが、
「午後ヒマなら須庭寺いかね?」
と、言ってきた。
「何しにいくんだ」
「ひまだし」
世間一般の高校1年生を迎えるあたりまえの15歳なら、カラオケいったりとかゲーセンいったりとかするだろうけど、なんで、
「須庭寺かあ」
になるんだ。
「ま、いいけど」
藤川家の菩提寺の須庭寺は、若い嫁…といっても不惑を越えた初々しいシスターと結婚した住職と、その長女と結婚した元ゾクの副住職と5人の子供たちで構成されている。
副住職さんと藤川先生は又従兄弟同士で、副住職さんの2番目の姉はシスターと大学時代の同窓生で須庭寺の末寺棒斐浄寺の尼さんだ。
ぼくとたかのりが須庭寺に向かうと、割烹着姿の百合絵さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいな、おいしいケーキができたところですのよ」
修道院での生活は十分充実したものだったのに、この不思議っこな元シスターも去年の地震で運命が大きくかわってしまった一人だ。
「地震さえなかったら、百合絵さんは今頃はオーストラリアの修道院に帰っていたの?」
たかのりの遠慮のない質問に、
「あら、わたくし、出てまいりましたのよ。京さまと日本が恋しくて」
と嫌がりもせず答えてくれた。
「まだ、好きなんですか?」
ちょっと興味があって聞いてみると、
「あら、今はもういい思い出ですわ」
と、ほおを赤らめた。
「じゃあ、今は住職様一筋ってこと?」
おいしいケーキはたっぷりあって、ここのうちの孫たちには大変好評だ。
そのケーキを食べる義理の孫たちに優しい視線をむけながら、
「さあ、わかりませんわ。だって、わたくし住職様しか存じませんから」
と意味不明なセリフが返ってきた。
「なんなんだ」
たかのりは、フォークをくわえたまま百合絵さんをつくづくを眺めている。
「オヤジも年だしな、いつおっちんでもおかしくないし、そしたら再婚もありうるしな」
どうみたってあぶないスジの人みたいな副住職さんは、面白くなさそうだ。
「パパは今でも反対なの?」
ことみさんにぎろりと睨まれ、副住職副住職さんは咳払いをしてごまかした。
「パパねえ」
ぼくは、平和でのどかな住職一家をちょっぴりうらやましく思った。
そういえば、ぼくのおかあさんと豆太郎君は今頃どうしているんだろう。
久しく忘れていたぼくが思いだそうとしても記憶にない母親と双子の兄のことが、一瞬だけ脳裏に浮かんで消えて行った。
そうか、ぼくは双子だったんだよ。


プロ野球開幕

2012-04-02 23:49:57 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

部活のために学校へ行き、体育館でのぶちゃん先生の怒号をききながら、
「高校になっても、まさかうどの大木野郎に指導されるとは思ってもみなかったよ」
と、ぼやくぼくたち。
高校バスケの顧問は、鳥谷先生という、まだ若い先生でかっこいい。
だけど、のぶちゃん先生にはまだまだ頭が上がらない。
「女バスもあの先生目当てだし、ジャーマネもなりたがっている奴がけっこういるってよ」
鈴木はボールに腰掛けながらごろごろさせている。
と、体育館外の水飲み場で無駄話をしていたら、
「結婚してくれ~」
「黙れ、このアホ」
と、応酬が聞こえたと思ったら。
「バカ殿、今日はやめといた方がいいぞ、すこぶる機嫌が悪いからな」
あのバカに機嫌のよい声は、中島教授だ。
「ま、相手が相手だからねえ」
これは阿部さんだ。
「ふん、タフマンでも飲んで寝ちまえ」
こっちはご機嫌斜めな片山教授。
「勝手なこと言うな、勝ちを新人監督にプレゼントしてやっただけやないか」
「ここでいっぱ~つ、キ・ヨ・シ~」
「おのれは、いつからモバゲーのファンになったんだ」
「ゲームなんぞするか」
「何をいうか、カウンセリングそっちのけでGREEやっとるやないか」
「ぼかあね、青年心理を研究しとるんだ。中島みたいにピグライフで、パソコンの中にまでガーデンニングしとるわけじゃないんだ」
「どこが悪い」
ぼくらは顔を見合わせた。
「高校生の会話か、ありゃ」
開幕3連戦、タコ壺の主の阪神は、横浜に1勝1敗1分け。
中島教授の読売は、3タテを免れ、逆に片山教授のヤクルトは1敗を杉内に食らってしまった。
阿部さんの中日も、浅尾がうたれて1分けとなってしまい、荒ぶる有袋類も着地失敗だ。
みんなそれぞれに機嫌が悪いはずなんだが、杉内の勝利がだいぶ中島教授の機嫌をよくしていた。
「けっ、生え抜きで負けて裏切り者で勝利するったあ、こきたない球団そのものだね」
こうなると、嫌味は在阪球団にかなわない。
「こきたないとはなんだあ」
「あ、間違えた、“小”汚いじゃなくて薄汚いの間違いやわあ。いやあ、まちごうてしもうた」
やれやれ。
「あれ?結婚してくれが聞こえないぞ」
「ほんとだ」
ぼくらは、舌戦をしている方を覗いたところ、ポツネンとたたずむ藤川先生をみつけた。
「会話に入っていけないってか?」
「野球よりサッカーF1だもんな」
「女が抜けてるよ」
ぼくらは、爆笑してしまったんだけど、こんな調子で藤川先生は大丈夫なんだろうか、と逆に心配になった。
ま、相手が野茂じゃなかっただけでも、いいんだけどね。




いつのまにか高校生

2012-04-01 10:23:46 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

気が付けば、高校生になっちゃいました。。。
やっと15歳になったばかりだというのに。
まいったな。
思えば中学3年になってからロクな目に合ってない。
そうだ、あの1年前の地震がぼくをはじめいろんな人の運命が変わっちゃった。
まず、ぼくはりょうこちゃんに失恋し、バスケに大敗し、お家騒動に巻き込まれている。
あげく、野茂と藤川先生の結婚のとっばっちりを受け…。
ああ、あれはへんな決着がつきそうで…。
藤川先生のタコ壺日参は毎日続いていて、
「結婚しろ」
「すかたーん」
の応酬が飽きもせず繰り返されている。
この結婚話を持ち出した老害じじいは、
「この話はナシ」
とあきれてしまい、野茂はがっかりしていた。
女心は不思議なもので、あんなに嫌がっていたのに、いざ結婚がなくなると、
「何でよっどうしてよっ
と怒りまくっていた。
で、藤川先生のプロポーズが止むかと思っていたら、なんと、
「結婚してくれ」
は、延々と行われているんだ。
いったい、どうなっているんだよ~。
そんなわけで、春休み、勉強三昧になるかと思ったら、
「まさか、バスケをやらんといわんだろうな」
という、のぶちゃん先生のおどしに毎日部活に通っているんだよ。
とほほ、せっかくの春休みなのに…。
「結婚してくれ」
「すかたーん」
まだやってる。。。