宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『ともしびマーケット』朝倉かすみ(1960生)、2009年、講談社文庫

2014-01-26 19:19:59 | Weblog
1 いい日:敷波智子(29歳)は新妻で妊娠&月足(ツキタリ)さん
A 60歳前後のネスカフェを抱えたおばあさん的おばさんを、敷波智子はスーパーで見る。
A-2 智子には96歳の祖母がいる。祖母は曾孫を愛する。
B 敷波智子は29歳、専業主婦。5ヵ月前、信吾と結婚。新婚。
B-2 智子は短大卒業後、銀行へ勤める。市川智子。3年後、クレジット会社へ移る。あまりに忙しいのでビル管理会社。
B-3 信吾は34歳、エンジニア、国立大卒。
C 「必ずネスカフェを買う人がスーパーにいる!」と夫に言う。夫はニュース番組が好き。
D 11/8(月)、ともしびスーパーマーケット鳥居前店に行く。
D-2 あのネスカフェの女がいた。月足(ツキタリ)さん。知り合いとなる。「スーパーで2時間は遊んでいくでしょう」と月足(ツキタリ)さん。
D-3 彼女は「いい日」は、ネスカフェを1本買うという。
E 「あなた妊娠してる?」と月足(ツキタリ)さん。「おめでとう」と智子に言う。
E-2 智子の「いい日」!
E-3 三平汁を作り、夫のワイシャツにアイロンをかける。「いい日!」と智子。
《評者の感想》敷浪智子は幸せな新妻。最も普通の幸せ。

  2 冬至:門田新子(モンデンシンコ)(44歳)は失恋後「いかず後家」&清野(セイノ)さん
F 門田新子(モンデンシンコ)。44歳。ともしびマーケット精肉部門勤務。パート歴5年。
F-2 マーケットの午後4時。客への「声かけ」。精肉部門のチーフは声が出ず、だめ。
F-3 これに対し、清野(セイノ)さんは、「声かけ」がうまい。53歳。道南出身。
H 門田新子(モンデンシンコ)は8:30-17:00勤務。一人暮らし。親が残した一戸建てに住む。
H-2 この日12/20、新子は家に帰って冬のお風呂を味わい、夕食は冷やの日本酒を飲む。
I とうに嫁いだ妹の幸子。高校生と中学生の母。
I-2 幸子が「いかず後家」の新子に、「後妻の口」のお見合いを勧める電話。60歳で役所を定年退職した男。スイス銀行に預金あり。
I-3 「不足ない余生を送る老夫婦になれるかもしれない」と、新子は口元がゆるむ。
J 妹の夫から再び電話あり。「妹の早とちりです!」と言い訳。「お義姉さんはひとりでちゃんとやっていかれる」と言う。
K 門田新子(モンデンシンコ)はスーパーで働く前、紙問屋に勤め経理を担当。父はテーラーの自分の店をたたんだ後、高級紳士服店に勤める。
K-2 新子は失恋し捨てられ、父と母が70歳前に死に、熱意も失い紙問屋をやめる。
K-3 新子、バイオリンを習い始める。
L 2週間前、マーケットの精肉部門の忘年会。新子は、清野(セイノ)さんの隣りに座る。
L-2 清野(セイノ)さんは借金で肉屋を手放し、妻子に逃げられ、10年前、スーパーの精肉部門に勤めた。
L-3 新子は、「明日、清野(セイノ)さんに会える!」と、今、布団の中で思う。
《評者の感想》失恋の痛手は大きい。門田新子は44歳になるが未婚。

  3 平河:砥部俊平(44歳)は息子がサッカー選手になると夢想&妻・綾子は下級生
A 砥部俊平、44歳、会社帰りに、ともしびマーケットに寄り、買い物。
A-2 妻の綾子と息子の荘太(小5)は、サッカー少年団の他の親子とともに温泉へ。
B 砥部は、札幌地元採用。去年から課長。
B-2 本社(東京千代田区)に勤務しないと、課長で「あがり」。
B-3 今のマンションは分譲で30年ローン。ステップ返済で、5年ごとに返済額が上がる。
C 荘太も綾子も、中学からサッカーのクラブチームに入りたい。二人にとっての「物語」!
C-2 「あの子には才能があるのよ!」と妻。「あたしたちって今、物語のなかにいるような気がしない?」と言う。
D 砥部にも「物語」がある。彼は「探偵物語」の松田優作のファン。平河町3丁目が優作演じる私立探偵の事務所の住所。優作は死んだが、砥部はいつか「平河」に行きたい。
E 砥部の会社の本社は東京。同期の岡崎が部長で本社にいる。地元採用の出世頭。
F スーパーを出ると。砥部は、洋書を読んでいた同級生の稲垣と会う。44歳。大学の准教授だという。稲垣は、花屋の留学生の娘を待っていた。彼女は、大学生。
F-2 年の離れた恋人同士の「物語」の始まり。
G 砥部にも昔、「物語」があった。妻の綾子は、上級生のバスケットボール部の砥部に昔、恋していた。
H 今、砥部はサッカー国際Aマッチに出場する息子荘太を想像。新たな「物語」。
I 砥部の胸の中に、「物語」=「平河」がある。
《評者の感想》人生を可能にするのは信仰・希望・愛である。「物語」とは希望のこと!

  4 ピッタ・パット:加藤シズク(中2)の告白&おば・月足(ツキタリ)かず子
A 加藤シズク(中2)の恋。2-2、佐藤ミガク(男子)への片思い。彼女が、玄関で彼を待つ。ミガクに話しかけた他組の女子がシズクには気になる。
A-2 シズクの親友の二階堂千晶(チアッキ)が「佐藤ってかなり地味だよ」と言う。
B 明日2/11建国記念日~2/14バレンタインデーまで、学校は休み。
C シズクの心臓の鼓動、小人の足音が pit-a-pat!
D 加藤シズクは14歳。札幌に住む。彼女は自分を「ドロップ」と呼んでほしい。
E シズクは、母の姉の月足(ツキタリ)かず子おばさんの家に2/11~2/14の4日間泊まる。
E-2 シズクの母は下着訪問販売会社に勤める。報奨旅行で母は沖縄へ。父は釧路に単身赴任。月末の土日のみ帰ってくる。
F シズクは平凡・普通で終わりたくない。「ただ者でない人」になりたい。「奇跡」=「めぐり合わせの妙」を経験したい。
G 月足(ツキタリ)かず子おばさんの亡くなったご主人は医者。おばさんには子どもがいない。
G-2 彼女は、ネスカフェをボランティアで老人ホームなどに送る。
G-3 ご主人は、彼女に優しかった。
H 加藤シズクのバレンタインの計画:金髪、サングラス、空色のTシャツ、ミニスカートで、「ドロップ」と言って佐藤ミガクにチョコレートを渡す。かくて二人は、交際開始。
H シズクは買い物をすませ、チョコレートも用意し、佐藤ミガクに電話するが失敗!
H-2 おばさんの家から帰る。シズクの計画は中止。
I 札幌の大通公園でシズクはバッタリ、佐藤ミガクと会う。
I-2 「どこかで温かいものでも」とミガクが誘う。「どうせひまだし」とシズクが応じる。
I-3 しかしシズクは「ちがう!」と言う。「好き!」と告白しようとする。
《評者の感想》中2の心は初々しい。恋も同じ。傷つきやすいのが心配。

  5 232号線:真島汐音(マシマシオネ)はミュージシャンの小沢準が恋人&父・ともしびマーケットの清野
A 真島汐音(マシマシオネ)、若い女、20歳。自動販売機の釣り銭の小銭を探して回る。
A-2 小沢準が「気持ちいい?」と彼女にたずねたことを回想。
A-3 ともしびマーケットの公衆電話から出てきた加藤シズクを、見かける。
B 真島汐音は、ともしびマーケットの精肉部門の清野(セイノ)の娘。別れて10年。
B-2 汐音は、小沢準の誕生日プレゼントのため、黒い名刺入れをj買おうとするが、2900円しかお金がない。
C 去年3月、高校卒業後、汐音は、母がいる実家(稚内)から札幌に出てきた。高校3年間のバイトで貯めた150万円がある。
C-2 汐音はネイリストになりたい。夜行バスが232号線を南下する。
C-3 母には恋人がいる。勤め先の旅館の息子。
D 札幌に出た汐音は、とりあえず父の清野(セイノ)に面倒を見てもらう予定だった。
D-2 しかし父のもとには汐音はいかなかった。
D-3 父は実兄の連帯保証人になり借金を背負った。実兄は自殺。父の肉屋(札幌)は破産。母と汐音は、稚内の母の実家に移る。10年前。
E 汐音はアパートを借り札幌の軽食喫茶で働くが(5:30-14:00)、収入は月に10万円。
F 汐音の恋人はミュージシャンの小沢準。準は、金持ちの不動産屋の息子。汐音にプレゼントもくれる。準の両親とも食事する。
G 準にプレゼントする黒の名刺入れを買うお金が、汐音にはない。貯金を下ろすわけにも行かない。汐音は、売春して金を稼ぐ。汐音は、泣いた
《評者の感想》若い女の転落は早い。若さは危うい。

  6 流星:後町広蔵(ウシロマチコウゾウ)70歳の古稀の祝い&その異母弟・清野
H 後町広蔵(ウシロマチコウゾウ)、70歳。初子(69歳)のお伴で、ともしびマーケットに来る。
I 彼はブリキ職人だった。S9年、江差で生まれる。3歳の時、母が死ぬ。養子の父親
は家を去る。伯父・伯母に育てられる。
I-2 広蔵は15歳で、小樽に行く。ブリキ職人の親方・徳田の徒弟になる。
I-3 弟弟子には両親が居て、親方に付け届け。広蔵は付け届けできない自分が羞しい。
I-4 5年経ち、年期があける。
J 住み込み8000円で、広蔵、長谷川金物店板金部に勤める。
K 広蔵、その2年後、独立。元鶏小屋を店舗兼住宅にする。ブリキ屋以外の仕事もする。
K-2 半年後、広蔵、六軒長屋に引っ越す。六畳二間。安藤ばあさんの紹介で娘と所帯を持つ。妻の初子。翌年、女の赤ちゃんが生まれる。
K-3 男の赤ちゃんも生まれる。
L 妻の初子が、広蔵の言葉遣い、生活習慣を「羞しくない」よう直す。
L-2 初子は働き者だった。よく口も回り、溌剌とし、お祭りのよう。
M 広蔵は江差に帰りたいと思う。郷愁。
N 所帯を持つ前、初子と夜道を歩く。「流れ星に願うと、願いが叶う」と初子が言った。
O 去年、子供たちが古稀の祝い。「こったら長生きすると思わなかった」と広蔵。
P 後町広蔵(ウシロマチコウゾウ)は40歳で、ブリキ屋をたたむ。プラスチックのためブリキ屋の仕事がなくなる。札幌の建築資材問屋会社のサラリーマンとなる。背広、ネクタイ。
Q 養子で家を出て再婚した父。その奥さんの生んだ子どものひとり(異母弟)が、ともしびマーケットで働く清野(セイノ)。
Q-2 肉屋を手放し妻子に逃げられた清野が、広蔵に相談に来た。ともしびマーケットの社長と仕事上、知遇を得ていた広蔵が、清野に、職を世話した。
Q-3 広蔵が清野に会い「元気か?」と尋ねる。「元気だ!」と清野が答える。
《評者の感想》実直に人生に向かった男の話。妻の初子とも良い関係。満ち足りた人生。

  7 私(ワタクシ):「ひきこもり」明日(アケタ)まひろ&近所に住む月足(ツキタリ)さん
A 明日(アケタ)まひろ、23歳。3/30朝。
A-2 高校時代の同級生が子宮癌で亡くなり、前日、通夜。子どもが3歳。
A-3 「千夏が死んだ!」と本田郁子から電話連絡。熊谷千夏の通夜で、まひろが泣く。
B まひろの母は、月足(ツキタリ)さんと立ち話。
B-2 私=まひろは「ひきこもり」。出不精で定職を持たない若者。
C 大学生だった一昨年、まひろは男と同棲。男は、大3年、2歳年上。男は「文学」志望。「無頼派」を目指す。男は毎晩、まひろと性交。
C-2 男はいつも「君はなぜケロリとしているんだ?」と言う。
C-3 同棲に両者が疲れ、半年も続かず。
D 「一人娘が男に騙され捨てられた」と両親が思う。父は水道局の公務員。母は同い年。
D-2 まひろは大学に行くのをやめる。「ひきこもり」!
E 郵便局で、老婆と局員がもめている。
E-2 まひろは通帳を作りに来た。カードを作るため。みんなが持つのに自分だけ持たない。
E-3 今、まひろは公園にいる。「あたしがあたしだっていう証拠」の身分証明書がないので、郵便局で通帳を作れなかった。
F まひろは、ともしびマーケットに寄る。たくさんの他人から度外視されていると思う。
F-2 月足(ツキタリ)さんが、妊娠6ヵ月の敷波智子を、まひろに紹介。
F-3 郵便局の老婆、野口たき子がきて、まひろに気づき自己紹介。
F-4 他人は相変わらず、こちらを無視。しかし「あたしたちは・・・・」と、まひろが思う。まひろは「もどってきた」と感覚した。
《評者の感想》男と別れ人間不信で「ひきこもり」になった女、23歳の復活の物語。

  8 その夜が来て:蜂巣蓉子、32歳
A 蜂巣蓉子、32歳。息子の航(ワタル)3歳。夫・孝雄42歳。4/30、ゴールデンウィーク2日目。昼間、動物園に行った。今、夜8:30。息子と夫は寝ている。
B この春、東京から札幌に転勤。社宅住まい。夫は損保会社に勤める。札幌出身。
B-2 航(ワタル)は友達のたろうくんが居なくなって寂しい。
B-3 蓉子は専業主婦に満足し幸せを感じている。
C 蓉子がともしびスーパーマーケットに行く。明日、夫の両親が来るので買い物。
C-2 若い男3人組、20歳前後。彼らも買い物。偶然一緒に買うことになる。
C-4 花屋で美女「やん」が3人組みに声をかける。
C-5 3人組が、マーケットの前にいた「先生」に、「今夜です」と言う。
C-6 「先生」と花屋の店員は恋人の間柄。
D 「その夜が来た」の感覚と、蓉子が思い出す。去年夏、蜂巣一家がバリに行く。
D-2 「主婦」でない別の見知らぬ女になりたいと、蓉子が思う。
D-3 蓉子が50歳位の経営者風の男から口説かれるが、「洗濯機」を買ってやると言われ、浮気心がさめる。
E 三人組が林の中でジンギスカンを始める。彼らが「花見です」と言う。蓉子も加わる。
《評者の感想》「その夜」の種類は色々。それはハレの感覚の日!

  9 土下座:菊池大悟(ダイゴ)(27歳)&森崎加奈子(30歳)
A 菊池大悟(ダイゴ)は「その筋」でないが、騒ぎを起こしそうな気配。50年配の男(清野)と話す。大悟はともしびマーケットに買い物に来た。
A-2 「彼女はナース」と大悟が言う。「彼女に買い物を頼まれた」とのこと。
A-3 「清野さん!」と中年女(門田新子(44))がやってくる。女は店内で買い物。
A-4 顔の平たい年嵩の女(月足さん)。連れの若い女は妊娠8ヵ月(敷波智子)。
A-5 やせた男(稲垣)がやってくる。大学の準教授。
A-6 菊池大悟が自分を、みんなに自己紹介する。
B 菊池大悟(27歳)、無職。森崎加奈子(30歳)と同棲。
B-2 加奈子から1日、1000円の小遣いをもらう。
B-3 大悟が加奈子のカードを勝手に使うが、次の時、すでに暗証番号を変えられてしまう。
C 老人(後町広蔵)(70)が来て、「お前は、ろくったもんでないな」と大悟に言う。
C-2 「自由人だ!」「ヒモじゃない!」「充電中!」と大悟。
C-3 「ろくでなしに尽くしたくなる気持ち、分かるような気がする」と蜂巣蓉子(32)。
C-4 美人の女(砥部綾子、44歳)が男児を連れている(壮太、小5)。「うちの子は、一生懸命遊ぶ!」「あなたと違う!」と、女が大悟に言う。
C-5 明日(アケタ)まひろ、23歳。「ひきこもり」がなおり、ともしびマーケットで働く。
D 加奈子が、大悟を起こす。大悟が、加奈子のヘソクリを探し出し、遣ってしまった。
D-2 「土下座して謝ってよ!」と加奈子が泣いて大悟に言う。
D-3 「昔、臭いおばあちゃんが嫌いで、つまんで新聞を投げたらおばあちゃんが怒って、2日後、私が謝らないうちに死んだ。」「だから、謝ってよ!」と加奈子が大悟に言う。
D-4 今、ともしびマーケットで、みんなが大悟に言う。
D-5 中学くらいの女の子(シズク)が、「謝ったほうがいいよ。好きな人には!」と言う。
E 「おお砥部!」と稲垣が声をかける。
E-2 中年女(門田新子(モンデンシンコ)、44歳)が「砥部くんと同じ高校だったんです!」と言う。「砥部く清んのこと好きだったんです!」と告白。
F ともしびマーケットの精肉部門の清野(セイノ)が、娘の真島汐音(マシマシオネ)と再会。
G 「いい日!」と顔の平たい女(月足さん)が言う。「ネスカフェ日和!」と連れの妊婦。
H 妊婦(敷波智子)が「うっ!」とうなり、具合が悪そう。誰かが「救急車!」と言う。
H-2 菊池大悟が、ナースの可奈子を呼びに走る。
H-3 可奈子が来てくれたら謝るかもしれないと、大悟が思う。
《評者の感想》ヒモの男に貢ぐ女の心の傷。大悟が改心するといいが、難しいだろう。

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