宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

「グローバリズムという妖怪」E・トッド、H・チャン、藤井聡、中野剛志他『文藝春秋』2014年2月号

2014-01-30 21:36:31 | Weblog
A 「雇用を守り、産業を保護するのは間違いだ。規制撤廃こそ唯一の成長政策、歴史の必然だ」と唱え、世界を席巻したグローバル資本主義。だがそれは世界に、経済危機、格差拡大、社会崩壊をもたらした。どう乗り越えるか?

(1)新自由主義の災厄:アメリカ、EU、ドイツ、日本
B アメリカ、2008年、リーマンショック。EU、ギリシア、スペインなど国家破綻寸前。
C EUの悲劇。グローバル化の帰結。①各国は、通貨の切り下げなど金融緩和も財政出動もできない。②各国は、経済の自立を失い、国家主権さえ失っているに近い。
《評者の感想》ここではグローバル化は、ユーロ導入、各国をしばるEU諸基準と等価。
D EUの唯一の勝者は、ドイツ。ドイツは、ユーロ圏が開かれた市場であることをフル活用。①ユーロ安でドイツの輸出産業繁栄。②EUの各国を低賃金で“下請け”として使う。
D-2 ドイツ以外の国々では、経済、特に製造業が破壊され、通貨政策の自由もない。しかも緊縮財政を強いられる。
D-3 仏のオランド大統領は、まるでドイツの副首相。仏の財務相は、ベルリンにお伺い。
D-4 ドイツでも格差拡大。合計特殊出生率が1.4と、日本に次いで低い。
E 日本は、円安・株高実現が、できて良い。
E-2 しかし日本が、法人税減税で外資を呼び込む必要はない。日本は経常収支が黒字で、資本は潤沢。途上国と違う。
E-3 自民党の「抵抗勢力」が、かつては新自由主義的な政策の行き過ぎをチェック。しかし、今は期待できない。

(2)IMF改革後の韓国の惨状:雇用の不安定化、非正規雇用化
F 韓国では、60年代から80年代は日本の経済モデルがお手本。80年代に軍事独裁が終わると「自由市場」が国家的コンセンサスとなる。
F-2 90年代に日本の経済が傾き、アメリカが復調。韓国では、「日本モデルは終わりだ」、「アメリカのように自由市場になるべきだ」の声が強まる。
G アジア通貨危機の波及で、いっそうの規制の撤廃。IMF以降、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなった。新自由主義が一国の経済を「根底から破壊」した。

(3)グローバリズムの神話を剥ぐ:新自由主義による成長率低下
H 新自由主義で経済成長率が落ちる。先進国全体の成長率:1960-80年平均3.2%、新自由主義の理念の下グローバル化した1980-2010年平均1.8%。韓国:IMF改革前6-7%、改革後2-4%。
I 新自由主義による成長率低下の原因:①経済を規制するルールがなくなり不安定化。Ex. リーマンショック。②企業には「短期的に成果を出せ」という圧力。長いスパンの視点を持てない。設備投資、研修、リサーチの軽視など。目先のパイの奪い合いで、パイを大きくしない。
J 「国による産業保護」がアメリカ、日本の成長を生んだ。50年代、60年代に市場が守られて日本の自動車産業が発展。南ア、ブラジル、コロンビアなど途上国で、保護的産業政策がとれない。
K グローバル化は歴史の必然でない。覇権国家が世界の安全を保障しないとなりたたない。K-2 世界経済がグローバル化:13世紀の元、15-16世紀大航海時代のスペイン。その後、「脱グローバル化」する。
K-3 「第1次グローバル化」:1870年-1914年、イギリス中心。戦争・恐慌で終わる。
K-4 ブレトンウッズ体制は「脱グローバリズム」の時代:50年代から70年代。
K-5 80年代以降の「第2次グローバル化」:アメリカという覇権国家が弱まるとグローバル化が終わる。
L アメリカのオバマ大統領は、アメリカの新たな可能性?寛容、格差是正、経済に規制を持ち込む。自由貿易は断固として拒否するべきだが、オバマ大統領は別?

(4)なぜエリートは間違い続けるのか:エリートのコミュニティ、エリートの劣化
M 一方で、自由経済・競争社会の新自由主義を「信じる」エリート。他方で、自己の企業の利益を追求するため国家&新自由主義を唱え「隠れ蓑」にするエリート。
N 官僚や学者の「臆病さ」。米国でグローバル化、新古典派経済学を批判すると、エリートに相手にされない。エリートのコミュニティからの疎外を怖がる。
O エリートの無為無策の正当化としての「自由放任」。
P ハンナ・アーレント『全体主義の起源』が、グローバリズムを唱えるエリートの劣化にも当てはまる。①全体主義下では思想・理論の合理性が一切問われない。②様々な「社会的な俗情」に基づいてご都合主義的に思想・論理が選定される。③複雑で多様な世界を単純化し、わかりやすくまとめ上げる思想・理論・物語を「ウソ」でも良いから望み、それを信じる。
P-2 新自由主義、市場原理主義という恐ろしく単純な「ウソの論理」!

(5)中国、そして日本の未来:中国は危険&日本は健全
Q ①中国はリーマンショックへの対応で財政拡張、不動産バブル。②金融セクターの不良債権への不安。「影の銀行」問題が輪をかける。③深刻な経済格差。社会的暴発の危険。④国民が豊かになる前に高齢化(国連推計で、2035年、高齢化率19.5%)。⑤住宅や設備など固定資産投資が、GDPの40-50%。無駄な生産設備を増やすだけだったスターリン時代のソ連経済に、似る。⑥中国は、領土問題で国際秩序の再編を狙う。「プレ1914年」時代的な中国の行動の危険!
R 日本経済は、日本国内で議論されているより、外から見ればかなり健全。

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「野党再編は怨念ばかりの泥試合」赤坂太郎『文藝春秋』2014年2月号

2014-01-30 21:34:52 | Weblog
A 「秘密政局」で傷ついた野党。(1)みんなの党の渡辺代表が秘密保護法で修正合意。「自民党渡辺派をめざす」と発言したとのうわさ。その結果、みんなの党が分裂し、江田憲司代表の結いの党結成。(2)日本維新の会が法案修正協議を巡り、「旧太陽」系(石原など)と「大阪」系に意見が割れる。
B 安倍は特定秘密保護法にあまりこだわっていなかった?しかし安倍の指示が党内で「伝言ゲーム」的に強硬化、さらに忠誠心・過剰同調・点数稼ぎで、安倍の「絶対的指示」と受け取られる。また国会の強硬な「現場」の「はしごをはずせない」ので、大幅修正せず強硬路線を突き進んだ。
C 安倍政権の「裏・3本の矢」:特定秘密保護法、共謀罪を創設する法案、通信傍受法改正案。
D 安倍政権は余裕。「麻生政権の時は20%とか言っていた。今は5割近い支持がある」と菅官房長官。

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「新世界地政学30:終わりの始まり」船橋洋一『文藝春秋』2014年2月号

2014-01-30 21:32:58 | Weblog
A 2011/12/28、7人の金正日の側近が、金正日の遺体の棺を見守る金正恩の脇を固めた。その7人のうち、今回、張成沢が処刑され、5人が排除された。
B 「金王朝の宮廷政治」で、金正恩の最大の敵は、異母兄の金正男との説あり。張成沢の側近が金正男に会ったのが金正恩に知れて、張成沢粛正の導火線となった?
C 最後の頼りである親族(血)の体制を壊し、金正恩は裸になった。終わりの始まり?

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「政権を支える内閣官房、知られざる苦悩」藤吉雅春『文藝春秋』2014年2月号

2014-01-30 21:30:42 | Weblog
A NHK放送文化研究所の調査。「国民の意見や希望は、国の政治にどの程度反映していると思いますか?」という質問に対し「まったく反映していない」が1998年を境に30%台に急増。以後、高い数字を維持。それまでは10%台。
《評者の感想》小選挙区(比例代表並立)制の導入が原因か?
B 内閣官房は「アヒルの水かき」。(福田赳夫外相)「常に水面下で懸命に動き回っている。」
C 内閣官房は、内閣総理大臣が長、官房長官、3人の副長官、内政、外交、安全保障・危機管理などの部署、各省庁からエース級の官僚が集められる。
C-2 官房副長官の2人は議員、1人は「事務」。「事務の官房副長官は、血の小便がでる!」
D 1998年、事前規制型の社会から弱肉強食の社会へ。訴訟社会へ移行するのではないかと、自民党は司法を身近にする司法制度改革へ。
E 民主党菅政権の時、中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件。海保職員が映像流出させる。「公務員が許可なく(ネットなどに)情報流出することがまかり通れば、国家は崩壊する」との見方あり。
F 内閣官房の9割が各省庁からの出向者。出身省庁の評価を気にする。(「忠誠心」の問題!)
F-2 天下国家を語る外務省と、実働部隊の防衛省は、対立する。
G 「霞ヶ関」は「飛行機の自動操縦装置」のようなもの。鳩山内閣の普天間基地県外移転は、それをオフにした。
H 鳩山内閣の事務次官会議廃止は、各省庁をまたがる案件の調整を弱体化。

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「安倍改革をぶち壊す霞ヶ関と族議員」江田憲司(「結いの党」代表)『文藝春秋』2014年2月号

2014-01-30 21:29:13 | Weblog
A 「脱・官僚」「脱・中央集権」「脱・既得権益」、つまり官権から民権へ、民間と地域が主役の国造りが「結いの党」の目標。
B 渡辺喜美「みんなの党」代表のほうから安倍総理にすり寄った。
C 「結いの党」は、「小さな政府で大きなサービス」を目指す。
D アベノミクスは、今年秋頃、頓挫する。金融緩和と財政出動は一過性のカンフル剤にすぎない。成長戦略が重要。
D-2 成長戦略は、規制改革の断行。農業への株式会社参入、発送電分離等の電力自由化、医療・介護・子育てへの民間活力導入。規制に守られた農協、電力会社、医師会、福祉団体の抵抗を打ち砕く。
E 零細農家まで面倒を見るバラマキをやめる。1俵1万5千円のコメを8千円に下げ北京やシンガポールに売る。農業を輸出型の産業にする。
F 地域主権の重要性。横浜市では保育園不足だが、島根県の村では保育所が足りているので児童手当がほしい。
G 国土交通省の地方整備局は、地方の「広域連合」に移管するべき。地方整備局は公共事業のバラマキマシーン。“国土強靭化族”、二階俊博元経済産業相は10年間で200兆円の公共投資と、利権を手離さない。
H 安倍政権は長期政権狙い。霞が関も族議員も敵に回さない。菅義偉官房長官は名参謀。
I 1-3月期は駆け込み需要、4-6月期は増税後反動期で織り込み済みl、問題は7-9月期に成長戦略が期待できないと、株価が下がり、安倍政権の支持率が下がる。
J 政界再編の必要性。「結いの党」と、日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長、民主党の細野豪士前幹事長と連携。同じ維新でも旧太陽の党系は自民党と接近。

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「金正恩、中国への危険な挑戦」宮家邦彦『文藝春秋』2014年2月号

2014-01-30 21:26:49 | Weblog
(1)金正恩が最も警戒するのは中国
A 北朝鮮のナンバー2である張成沢・元国防委員会副委員長の処刑(2013/12/12)。
B 北朝鮮の体制は、国家というよりファミリービジネス。
C 軍事力を掌握し、国内締め付け、国外恫喝外交(「先軍政治」)は、1940年代型ビジネスモデル。
D 金正恩が最も警戒するのは中国。開放路線に移行すれば、破綻寸前の北朝鮮経済は、膨張する中国経済に飲み込まれてしまうと危惧。

(2)中国のナショナリズムの根底は西洋への不信感
E 中国経済の中心地は上海、北京、広東など沿海部で、国内の富が集中する。その海上ルートを抑えるのが中国の海洋戦略の根底。防空識別圏(2013/11/23)の設定もその延長上。
F 人民解放軍の指揮権は党中央軍事委員会主席がもつ。党中央軍事委員会にシビリアンは習近平しかいない。防空識別圏の設定を、習近平は知らされていなかった。
G 戦前の日本の「統帥権の独立」に似る。軍部が政府のコントロール下にない。
H 中国のナショナリズムの根底に潜むのは西洋への不信感。アヘン戦争以降の被害感情。I 東シナ海、南シナ海のシーレーンが中国の生命線だが、そこをアメリカに牛耳られているとの反感が、中国にある。

(3)中東と東シナ海の両方に同時に、アメリカは対応できない
J 2001年9.11同時多発テロ以降、アメリカは中東の安定に力を注ぎ、東アジアで中国の軍事的台頭を許した。その反省からアジアの安全保障を重視する「アジア回帰」(オバマ政権)へ。
K しかし中東と東シナ海の両方に同時に、アメリカは対応できない。
L 韓国が歴史的に持つ中国への恐怖心。そこで中国に逆らわない方がいいという屈折した親中感情を韓国は示す。
M 日本が真に警戒すべきは、韓国でなく、中国。

(4)国営企業の権益を取り上げ、民営企業を育てる中国経済の改革を利権構造が妨げる
N 中国は70年代の「改革開放」モデルのまま。90年代の「民主化」という統治モデルに移行できなかった。(天安門事件1989年)
O 共産党一党支配・官僚制支配のもと、資本主義を行うと、あらゆるビジネスが利権化する。構造的な政治腐敗。
P 「低賃金・輸出主導」の経済構造を改革し、内需喚起、技術革新を促すシステムを作らないと、中国では格差は拡大するばかり。
Q 中国の経済改革のためには、国営企業の権益を取り上げ、民営企業が育つ環境整備が不可欠。しかし利権構造が改革を妨げる。

(5)膨張する中国に対応するため、集団的自衛権の行使容認が必要
R 日本は、膨張する中国に対応するため、アメリカ、ASEAN、豪との連携が必要。
S かくて集団的自衛権の行使容認、日本版NSCの創設、特定秘密保護法の成立など、安倍政権の方向性は間違っていない。

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