宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『“環境問題のウソ”のウソ』山本弘(1956生)、2008年、楽工社

2014-01-14 17:06:28 | Weblog
はじめに 『環ウソ』を読まれた人たちへ
本書は、武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』2007年、洋泉社(『環ウソ』と略称)に対する反論である。

第1章 『環ウソ』のここがウソ!その1:ペットボトルリサイクル
A 『環ウソ』で環境問題懐疑論者の武田教授は、“回収された24万トンのペットボトルのうち、3万トンしか再利用されていない”と言う。なおペットボトルの販売量(供給量)は51万トン。(H16)
A-2  実は、回収されているのは32万トンである。
A-3 そのうち国内で15万トンが再利用。つまり「マテリアルリサイクル」。素材の化学的性質を保持してリサイクル。Ex. カーペット、トレイ、人工芝。

B 回収された使用済みペットボトル8万トンは、海外(主に中国と香港)に輸出される。したがって使用済みペットボトルの価格高騰。
B-2 だから回収された使用済みペットボトルは、今は、「自治体が金を渡して、処理業者にペットボトルを引き取ってもらう」という武田教授の主張はウソ。処理業者が無償で受け取る。

C しかも輸出された使用済みペットボトル8万トンは、再利用される。例えば中国では、防寒具やぬいぐるみの詰め物となる。
C-2 かくて回収された32万トンのペットボトルのうち、再利用されるのは23万トン(国内15万トン、輸出8万トン)である。再利用は3万トンという武田教授の発言は、誤り。

D 「ペットボトルのリサイクルが、原油からのペットボトルの製造以上に、エネルギーを使う」、「リサイクルすると環境に余計な負荷がかかる」という武田教授の主張は真っ赤なウソ。

E 武田教授は、コストがかかることと、エネルギー(石油)を消費することとを、混同=同一視する。(p.55)
E-2 LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)が、環境(影響)評価の国際基準。(p.60)武田教授が否定するのは、真っ赤なウソ。
E-3 同じところに車で行くのに、“高価なタクシーより、安いマイカーの方が環境にやさしい”というのは変!

F ペットボトルのゴミを減らしたいなら、ペットボトルの41%を占める茶系飲料をやめ自分でお茶を入れて飲むのが、環境に優しい。(p.77)

第2章 『環ウソ』のここがウソ!その2:地球温暖化とマスコミ報道
A 1984年1/1の『朝日』の記事“海面上昇で山間へ遷都計画”はただのジョーク。“2034年1/1”を想定。
A-2 1981年NYタイムズが報道:21世紀に2.5℃の温度上昇で、南極の氷が溶け、多くの都市が水没と警告。
A-3 ただし現在は、21世紀に海面が1mも上がらないことが判明。
A-4 北極の海の氷が溶けても、海面上昇しないのは武田教授の言う通り。(ただし正確には3%増える。地球全体では3mm上昇。)

B 武田教授は、ネットの「朝日新聞悪玉論」に影響されているのかもしれない。
C A-3補足:IPCCの第4次報告書によると2100年までに起きる海面上昇は、全くCO2
排出規制が行われなくても26-59㎝である。主因は海水の膨張で、氷河が溶けることの影響は25%。

D 温暖化による海面上昇について述べるのは、もっぱらSFである。安倍公房(1959年)など。
D-2 CO2による地球温暖化が語られるのは、1960年代から。 

第3章 『環ウソ』のここがウソ!その3:小ネタいろいろ
A 武田教授は省エネしても意味がないと考える。電気代を2万円節約して、それを預金しても、投資に使われるから同じで、省エネの意味はない。
A-2 山本の反論:省エネは、大勢の人間が実行して、初めて効果が出る。電力需要が大幅に減れば、電力供給が減る。そうすれば石油消費量が減る。

B 燃やすとダイオキシンを出すハロゲン化合物は、難燃材だが、火災の犠牲者数と相関はない。

第4章 武田教授と直接対決
A ペットボトルの回収量は、武田教授が言う24万トンでなく、事業系の回収され輸出される8万トンを含め32万トンである。
B だから海外に金を渡し、ゴミ処理を代行させる(輸出分8万トン)とする武田教授のウソ。(p.151)

C ペットボトルのリサイクル業者が倒産しているのは、ペットボトルが輸出され、業者にわたる分が減っているためである。
C-2 ペットボトルをリサイクル業者は、受け取って多くを焼却するとの武田教授の主張はウソ。リサイクル業者は金を払ってペットボトルを買っており(2006年以降)、それを焼却したりしない

第5章 ペットボトル再生工場を見学
A ペットリバース社(川崎市)を見学する。ペットボトルをPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂に再生する。
A-2 使われたペットボトルの再生で、ベンゼンなど有毒物質がPET樹脂に浸透する心配は、普通ない。

B 回収された使用済みペットボトルは、金を出して買ったものだから、武田教授が言うように「捨てる=燃やす」などしない。

C 2006、H18には、自治体が回収したペットボトル25万トン、このうち①14万トンは容器包装リサイクル協会を通してリサイクル業者へ。また②11万トンは自治体が独自にリサイクル業者へまわす。(うち5万トンが海外へ輸出、他が国内でリサイクル。)
C-2 使用済みペットボトルの輸出は合計27万トン。(大部分は事業系回収ルートによるもの。自治体回収分は5万トン。)
C-3 以上より使用済みペットボトルは国内で20万トン、海外で27万トンが、再利用=リサイクルされる。(2006、H18)

D 国内のリサイクル業者は40万トンの処理能力があるが、半分しか使われていない。回収された使用済みペットボトルの価格も高騰。海外への回収ペットボトルの流出を防がないと、国内のリサイクル業者はつぶれる。

第6章 武田教授にメールで質問
A 2004年(H16)のペットボトルの再利用量「3万トン」との武田教授の主張は根拠がない。(C-2参照)
B ペットボトルの回収にかかる労力は、焼却のせいぜい10倍であって、武田教授の100倍は過大すぎる。

第7章 『環ウソ2』のここがウソ!
A 1本のペットボトルについて、最初の製造にかかるエネルギーに対して、リサイクルのペットボトルにかかるエネルギーは、武田教授の4冊の本で、3.7倍、3.75倍、1,75倍、4.95倍とばらばらである。(p.240)
B 有害物質がリサイクルで混入したとしても、毒物除去率が50%ならば、無限にリサイクルしても、最初の毒物
量の1倍を超えることはない。

第8章 地球環境問題・どこまで本当なのか?
A 「反相対論」は根強い。疑似科学!
A-2 「9.11陰謀説」は、『陰謀論の罠』奥菜秀次(光文社)が反論。
A-3 「アポロ陰謀説」も根強い。しかし素人が言っているだけ。

B テレビ番組を信用してはいけない。
B-2 「素人の印象を信じるな!専門家の言うことに耳を傾けろ!」つまり大多数の科学者が合意する定説は、普通、間違いでない。

C 「温暖化懐疑論」は科学者の主張に疑問を呈する。
C-2 ただし地球温暖化は、専門家が分かっていない部分が多い。

D 温暖化懐疑論の4つのレベル
(1) 「地球は温暖化に向かっているか?」→正しい!
(2) 「温暖化の原因はCO2であるか?」→かなり正しい!
(3) 「温暖化の被害は深刻か?」→よく分からない!
(4) 「温暖化をくい止める努力をすべきか?」→本人次第である!
D-2 参考文献:①「IPCC第4次評価報告」、②「地球温暖化問題懐疑論へのコメント」(東北大明日香教授ら)

懐疑論(レベル1):「地球は温暖化に向かっているか?」→正しい!
E 温暖化は都市のヒートアイランド現象にすぎない(池田清彦『環境問題のウソ』)。→これは誤りの暴論!
E-2 「気温が下がっている所もある」のは確かだが、「平均気温」が上がっているのであって、個別には下がっている所があるのは当たり前。(p.273)

F マイケル・クライトン『恐怖の存在』(ハヤカワ文庫)は、PLM(政治・法曹・メディア)複合体の陰謀について語る。新たな恐怖の必要(政治家)、訴訟と金儲けのため(法曹)、読者や視聴者獲得のため(メディア)の陰謀としての温暖化懐疑論。
F-2 クライトンは、「環境保護論者は、献金集めで大儲けする悪者」と指摘!

懐疑論(レベル2):「温暖化の原因はCO2であるか?」→かなり正しい!
G 槌田敦『CO2温暖化説は間違っている』(2006)は、気温の上昇によって、海水に溶け込んでいるCO2が放出されたのであって、CO2によって温暖化したのでないと主張。
G-2 反論:炭素14の測定によると、増加しているCO2は、化石燃料に由来する。(p.286)
G-3 ハワイ・マウナロア観測所のキーリング(化学者)がCO2温暖化説を唱えた。

H 根本順吉氏は、「地球が氷河期に向かっている」という誤った説を日本に広めた。
H-2 根本氏は、「月の魔力」を信じるなど疑似科学に近い人。

I 70年代に「地球は寒冷化に向かう」と言ったのは、気象学者ではない。

J 「温暖化説の仕掛け人は原発業界」と槌田教授。
J-2 しかし、原発業界は便乗したが、仕掛け人ではない。

K  CO2温暖化説を否定しようとしたニセ情報!
K-2 「オレゴン嘆願書」(1998):京都議定書の批准反対の科学者1万7000人の署名。しかし署名者の水増し。偽論文が添付されていて、それで署名を勧誘。主宰者はフレデリック・サイズ。
K-3 「ライプチヒ宣言」(1995&97):温暖化懐疑論者のフレッド・シンガーが主宰者。署名した研究者・気象予報士を、半数程度水増し。

L 石油・石炭業界、自動車業界が温暖化対策に反対。
L-2 エクソン・モービルが、温暖化懐疑論者・議員に資金提供。
L-3 ただし今は、環境対策を売りにした方が儲かると気づく。

M 温室効果がないと地球はマイナス18℃となり、人は住めない。今は地球の平均気温は15℃で、温室効果で33℃暖かい。ただしCO2濃度は0.03%。
M-2 「大気の窓」の飽和説(窓は煤で真っ黒!)。これ以上CO2が増えても温暖化しないとの説がある。温暖化を起こす赤外線は、すでに100%さえぎられている。(p.296)
M-3  CO2が増えて、さらに温暖化が進むか、これ以上は進まないかは、今のところ不明。

N 温暖化懐疑論者は、温暖化の原因として“太陽の活動”を持ち出す。太陽の活動が盛んだと日射量が増え、気温が上昇する。
N-2 太陽活動の極小期には、地球は小氷期。「マウンダー極小期」1640-1715。「シュペーラー極小期」1410-1540。(p.297)
N-3 IPCCも太陽活動を考慮。太陽活動だけでは、現在の温暖化は説明がつかないとする。

O 「スベンスマルク効果」:太陽活動が活発化すると、太陽風(プラズマ)が地球に降り注ぐ宇宙線をさえぎり減らす。宇宙線が減ると、雲が減る。(Cf. ウィルソンの霧箱)かくて日射量が増えて温暖化。
O-2 雲が減っている証拠がないなど、未だ真偽不明。「スベンスマルク効果」をIPCCは取り上げていない。

懐疑論(レベル3):「温暖化の被害は深刻か?」→よく分からない!
A 温暖化の影響はどのくらいか?
A-2 IPCC第4次報告書による海面上昇の予測。(p.299)
Ex. 1 A1F1(高成長社会のシナリオ/化石エネルギー源重視):気温上昇2.4~6.4℃、海面上昇26~59cm
Ex. 2 A1T(高成長社会のシナリオ/非化石エネルギー源重視):気温上昇1.4~3.8℃、海面上昇20~45cm

B 最も強力な温暖化ガスは、CO2でなく水蒸気である。地球の温室効果33℃のうち、その効果の7割は水蒸気による。
B-2  CO2の温室効果で温暖化が進行すると水蒸気が多くなり、温室効果が強くなる。ただし水蒸気が雲になれば日射量が減るので、気温上昇し続けるわけでない。

C 人間の活動によるエアゾル(空気中の微粒子)も温暖化に影響を与える。煤(黒いエアゾル)は温暖化を進行させるが、白いエアゾルは太陽光を反射し、温暖化を妨げる。
D 北極海の氷が溶けると、太陽光の反射が減り、吸収され温暖化を招く。(「アイス・アルベド・フィードバック」)
E シベリアの凍土が溶けると、地中からメタンが大量に発生。メタンはCO2の20倍以上の温暖化効果。温暖化が加速。

F 海面上昇はIPCCの予測では、今世紀中に最大で59cm。気温上昇は最大6.4℃。縄文時代、6000年前、5m「海面上昇」したが、そのようなことはない。
F-2 今世紀中、予測平均で30cm位、海面上昇。すると約100㎢が浸水。

G 気温が2℃上昇するとどうなるか?(p.305)
G-2 温暖化すると熱帯低気圧が強まるので、「大嵐になる」というのは本当。
G-3 「北極振動」のため、北極圏の気温が上がり低気圧になると、中緯度の気圧が上がる(「高気圧」)!日本では冬は暖冬、夏は冷夏となる。

H 北極の氷が失われると、北極の気温が上昇し(「アイス・アルベド・フィードバック」)、北半球の気候のバランスが崩れ、気候が激変するはず!(p.307)
H-2 気温が上がると、またCO2が増えると、光合成が促進され、植物の生産性が上がると、武田教授が言う。しかし①リンゴなど低温に適した作物もあり、一概には言えない。各作物には適切な気候がある。②北極から氷が消え、新たな気候が安定するのに1世紀かかることもある。気候が不安定になり作物に打撃の可能性。
H-3 気候の不安定化による不作で大打撃を受けるのは発展途上国。飢饉で何百万人が死ぬかもしれない。

I  CO2濃度が高まると、CO2が海水に溶け込み「海洋の酸性化」が起こる。一部のプランクトンの殻が溶けて絶滅。これを餌とするクジラ、魚に打撃。

懐疑論(レベル4):「温暖化をくい止める努力をすべきか?」→よく分からない!
A 温暖化の被害の予測(レベル3)が不明なので、この問い(レベル4)への答えは、よく分からない。
B 京都議定書を遵守しても温暖化はあまり防げないのは確か。なぜなら温室効果ガス排出量の6%しか削減しないから。

C 「温暖化による被害額よりもCO2削減にかかるコストの方が高くつくのではないか」という温暖化懐疑論あり。
C-2 これについては不確定要素が多すぎ、算定不能、比較不能と言うべき。
C-3 気候変動による水不足や飢饉で死ぬ人のことを考えると、コストの問題だけでは論じられない。

D 人間の活動によって大気中のCO2が増え続けているのは間違いない。
D-2 化石燃料で維持される文明が、そもそもおかしい。
D-3 石油は早く枯渇した方がよい。 武田教授は2030年位に石油可採年数がつきると言う。
D-4 石油が高騰すれば、太陽発電や風力発電などクリーンエネルギーが、採算が取れるようになり普及する。
D-5 ところが石油は2030年には、まだたっぷりある。石油鉱業連盟は、H17(2005)末、石油が枯渇するまであと「68年」(2073年まで)と発表。なお天然ガスの枯渇年数はあと「98年」(2103年まで)。

E 大気中のCO2濃度:2005年379ppm。50年後70ppm増えて、449ppmへ。これは産業革命前(280ppm)の1.6倍。
E-2  CO2濃度が増えるペースは速くなっている。

F 地球温暖化を防ぐには、原発以外にも、色々ある。
Ex. 1 家庭・オフィス・商店の電力消費を25%減らせば、現在の原発を3倍にする位の削減効果がある。
Ex. 2 石炭火力発電を、天然ガス・風力・太陽光発電にする。
Ex. 3 自動車の燃費を良くする。

G トウモロコシ由来のバイオエタノールは、化石燃料に多く依存し、あまりCO2削減にならない。Ex. 1)パイプラインで輸送できないので自動車を使う。Ex. 2)トウモロコシ生産に使う化学肥料は化石燃料由来。Ex. 3)コンバインの燃料も必要。
G-2 セルロース・エタノールの方が環境にやさしい。(まだ開発中!)

H  CO2削減のため、未来の技術が期待できるかもしれない。(Cf. 『日経サイエンス』が面白い。)

エピローグ 心の中の「外部費用」:環境問題は宗教か
A 環境経済学での「外部費用」:表示された価格以外に、将来的に発生するコスト。
A-2 リサイクルに金がかかっても、その額が将来発生する外部費用を下回るなら、長期的にコスト的に引き合う。
A-3 ただし外部費用の発生は多くが将来的で、さしあたり目に見えない。ある意味、人によって異なる「心の中の外部費用」!
A-4 今、浪費して、ツケ(外部費用)は子孫に払わせればよいという悪魔的考えもある。

B 「何か起きるに違いない」と不安に思う環境論者が宗教なら、「何も起きない」と根拠なく信じる環境懐疑論者も宗教である。
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