宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『GO』金城一紀(カネシロカズキ)(1968生)、2000年、角川文庫

2011-10-10 21:20:17 | Weblog
 1 オヤジ:朝鮮籍から韓国籍へと「転んだ」
 僕は中2(14歳)だった。朝鮮籍。オヤジは1928年生まれ。在日朝鮮人。ソ連が崩壊した(1991年)後の話。
 オヤジは「転んだ」。ハワイに行くために朝鮮籍から韓国籍になる。
 昔はオヤジは「総連」のバリバリの活動家だった。しかし総連の目がいつも北朝鮮に向いていて在日朝鮮人に向いていないことに、オヤジはやがて気づく。
 「民団」の幹部に大金を払い、親父は韓国の国籍をとる。
 オヤジには1950年代終わりの「帰国運動」で北朝鮮に帰った2歳年下の弟がいる。3トン・トラックを弟に送る。
 僕が中3(15歳)の時、オヤジとオフクロがハワイに行く。
 
 1-2 僕:「転んで」韓国籍をとり民族学校をやめ日本の高校に入学
 僕は小1で、朝鮮学校に入る。アメリカは敵と教えられ、また「わけの分からない環境」だったので僕は「ヒネクレ者の悪ガキ」になる。
 オヤジはライト級のもとボクサー。オヤジは昔、《日本人》だったが日本の敗戦後、《日本人》でなくなる。オヤジは貧乏人に優しいと称するマルクス主義を信じ朝鮮籍をえらぶ。
 韓国籍になったオヤジは中2(14歳)の僕に「広い世界を見ろよ」「後は自分で決めろ」と言った。
 僕は「転んで」韓国籍をとった。そして日本の高校に行くと決める。民族学校をやめて「広い世界」を目指す。それは厳しい選択でもあった。
 僕は結構、裕福な家庭で育った。

 2 日本の高校では襲われ挑戦され続ける
 日本の高校に入学後、襲われ挑戦され続けたが、高3(18歳)の僕は、「23戦無敗」だった。マルコムXは「自衛のための暴力は暴力でなく知性だ」と言う。
 日本の高校に進学すると言うと、民族学校で教師から「民族反逆者」と言われ、ひどいイジメにあう。
 日本の次元の低い高校では、「空手道場」のような民族学校の「朝鮮人」を倒せば、日本の不良は仲間にいい顔ができるので、僕に挑戦してくる。
 高1のときの初陣の相手が、父親が組の幹部の加藤だった。僕は勝ち、喧嘩のあと加藤と友達になる。加藤の父親が僕を気に入る。

 2-2 パチンコの景品交換所を奪われる:オヤジ
 父親が持つパチンコの景品交換所4軒。このうち2軒が警察に奪われる。景品交換所を経営するオヤジがヤクザと付き合ってると、警察がパチンコ店を脅し取引をさせなくする。その後、警察OBが景品交換所を開く。
 ハワイ事件とこの景品交換所事件のあと、男を敬う朝鮮・韓国の儒教は敗北し、オフクロはオヤジに反抗するようになり、強くなる。オフクロは僕が高1(16歳)のときまだ30代だった。オフクロはオヤジと喧嘩すると焼肉屋の友人のところに家出した。

 2-3 桜井という女の子
 高3(18歳)のとき、加藤の誕生パーティーで僕は、桜井という女の子と出会う。二人はキスをする。

 3 民族学校は「教団」のようなもの
 僕は小中一貫教育の民族学校に入った。「偉大な首領様」金日成をたたえる。彼は宗教の教祖様のようなもの。民族学校は「教団」のようなもの。
 ミニパトが朝鮮学校の生徒に対し「あんたらみたいな社会のクズ」は道の端を歩けと指示。僕たちは色水の爆弾で反撃した。

 3-2 小3:金日成を信じない、共産主義を認めない
 小3の僕は、金日成が子どものとき日本の官憲をパチンコで攻撃したという話を聞き、がっかりして信じなくなった。いっそ金日成が水の上を歩いたと言われたほうが、信じた。
 朝鮮学校の1日の終わりの「総括」と「自己批判」は、密告の会。僕はこれがある限り共産主義を認めない。
 僕は小3のとき以来、勉強することをやめた。「朝鮮学校開校以来のバカ」と僕は呼ばれる。
 
 3-3 小4:僕は民族学校を休む、小6:僕は反抗期に入る
 小4から軍隊行進の練習が始まる。金日成のために戦うため。統制された学校生活が嫌いで僕は、小4からあまり民族学校に行かなくなる。学校を休んでビデオばかり家で見ていた。
 オヤジにボクシングを教えてほしいと頼む。
 小6、僕は反抗期に入る。オヤジが初めて景品交換所を奪われた直後。

 3-4 「差別」に対し団結する:民族学校(中1~中3)
 民族学校は合宿生活のよう。また「差別」に対し団結する。「朝鮮人狩り」と言って日本の学校の体育会系・民族系の連中がイジメに来る。
 どうせ、ろくな大人になれないから学校で遊んでおこうと思う。カーニバルとしての学校。
 中3のタワケ先輩と中1の僕はいつも苛立っていた。街に出てはガンをつけたといっては喧嘩をした。
 僕が中2のときタワケ先輩(高1)は朝鮮籍から韓国籍に変え、民族学校もやめ、いなくなった。タワケ先輩はJリーグで活躍してもよいほどだったが朝鮮籍(外国人)の障害にぶつかった。
 朝鮮籍だと、将来はパチンコ屋・焼肉屋・金融屋で働くしかない。国籍を問わない医者・弁護士になるというのはおとぎ話。

 3-5 韓国籍の父と日本人の母を持つ正一:民族学校に進学
 中2(14歳)の僕が日本の高校を受けると決め、韓国籍になると、教師からイジメを受ける。「自己批判」しろと正座させられ、ビンタされ鼓膜が破れる。また太ももを爪先蹴りされる。
 韓国籍の父と日本人の母を持つ正一は、民族学校に進学。「売国奴」と呼ばれた僕に対し、正一が「僕たちは国なんてものを持ったことがありません」と発言しビンタされる。
 日本の高校に僕が入学しても、民族学校の正一との関係は続いた。本を貸しあった。Ex. スティーブン・J・グールド『人間の測りまちがい:差別の科学史』

 3-6 弱い者は「教団」(民族学校)がないとやっていけない
 高1の僕:国籍のせいで社長になれないから、サラリーマンにならない。
 弱い者のためには「教団」(民族学校)がないとやっていけない。民族学校に入っていじめられなくなった。だから勉強して民族学校の教師になると正一(高1)。
 金日成が死んで(1994年)、「教団」も変わり始めた。やがて「互助会」になると正一。
 後輩が広い世界に行けるよう教えてやりたいと正一。

 3-7 済州島
 僕が高1の秋、父が約50年ぶりに済州島へ墓参り。
 
 3-8 国籍はマンションの部屋のようなもの
 ミトコンドリアDNAによると本州の日本人50%のルーツは、韓国&中国。5%のルーツが日本人。
 国籍はマンションの部屋のようなもので、嫌になったら出て行けばいい。
 ジミー・ヘンドリクス:チェロキー・インディアンと黒人のハーフ。
 お前は最近、「理屈っぽくなってる」とオヤジ。
 「奈落を長く覗き込むと、奈落もまたこちらを覗き込むものだ。」(ニーチェ)

 4 本、CD、映画:僕と桜井は「カッコいいもの」を探した
 僕と桜井(高3)は「カッコいいもの」を探した:本、CD、映画。発掘のため二人で選ぶ。打率は3割程度。
 桜井も変で、カッコ良かった。桜井はたくさん本を読んでいた。僕の読む本は、人類学・考古学・生物学・歴史学・哲学。
 桜井のお父さんは東大出。学生運動(60年安保闘争)の元闘士。高級住宅街に住む。エリート商社マン。
 桜井の家で日本人の家族に囲まれご飯を食べるのが初めてで緊張。

 4-2 「肝試し」
 昔、僕は、電車が来たときホームから線路に飛び降り、電車に追いかけられて線路上を走る「肝試し」に挑戦し成功。

 4-3 「チョン公は尻尾を巻いて国に帰れ」
 日本人の加藤(高3)が、僕に「共同経営者にならないか?」と尋ねた。「この社会でのして行くには正攻法じゃだめだ」言う。組幹部の彼の父親が資金を出す。
 加藤のパーティーで「チョン公は尻尾を巻いて国に帰れ」と、日本の高校の小林(高3)が喧嘩を売る。僕は小林を倒す。

 5 「あんなチョーセンに振られたらパシリにしてやる」
 正一が死んだ。真面目な日本人高校生が毎朝会うチョーセン高校の女の子に惚れた。「彼」の仲間が「告白しろ」と煽る。気合を入れるためとバタフライナイフを「彼」のポケットに入れる。「あんなチョーセンに振られたらパシリにしてやる」と「彼」は言われる。仲間が周りからはやし立てる。
 怖がるチマ・チョゴリの女の子を通りかかった正一が助けようとする。怖がった「彼」がバタフライナイフで正一を殺す。「彼」は飛び降りて自殺。

 5-2 「煽った奴らを狩に行く」:元秀(ウォンス)
 「正一を殺った奴を、煽った奴らを狩に行く」と元秀(ウォンス)。僕は断る。
 民族学校のバスケット全国大会決勝で負け泣いたとき、コーチが「お前たちは敵に囲まれているんだ。人前で泣くな!」と怒った。

 5-3 「韓国と中国の人は血が汚い」:桜井(高3)
 僕と桜井(高3)がホテルに泊まる。桜井が拒否する。「お父さんが韓国と中国の人は血が汚いんだって言ってた」と桜井。
 「昔、モンゴロイドは全員、お酒が飲めた。中国北部でお酒が飲めない突然変異が生まれる。彼らが弥生人として日本に渡来し、お酒が飲めない。」と僕。桜井の父はお酒が飲めない。
 「何か恐い!」と桜井に言われ、僕は帰る。
 正一の死と桜井の出来事で僕は泣いた。

 6 韓国・北朝鮮の区別をなくした「在日」の組織
 「警察にパクラれ、学校はクビ。自分のことを真面目だと思っていたオヤジ(組幹部)がカンカン」と日本人の加藤(高3)。また「オマエとタメはれるようになるまで、お前と会わないと決めた」と言う。
 在日韓国人の宮本(高3)が、「韓国・北朝鮮の区別をなくした『在日』の組織を作りたい。参加してほしい」と僕に言う。

 6-2 オヤジの北朝鮮の弟が死ぬ
 オヤジはクレジットカードが持てない。審査で落とされる。
 オヤジの景品交換所がまたなくなる(3つ目)。
 オヤジの北朝鮮の弟が死ぬ。その妻からの電話。「自分だけいい暮らしをして弟に何も送らなかった」と非難。
 僕(高3)はオジに会えずオジは死んだ。「何故、たった数時間の北朝鮮に行けないのか。北朝鮮のエバリくさってる連中を許さない。」と僕。

 6-3 外に目を向けて生きていくべきだ:オヤジ
 「あんたたち1世・2世が貧乏くせえから、俺たちの世代がいまいち垢抜けられないんだ」と僕。オヤジは弱音を吐いてはいけないのだ。
 オヤジと対決し僕が負ける。前歯が欠ける。
 「もうオレたちの時代じゃない」とオヤジ。そして「外に目を向けて生きていくべきだ」と言う。実際、オヤジは僕の足かせを外すために韓国籍に変えた。
 僕は朝鮮人でも日本人でもない。根無し草。

 7 俺はこっち側でガンバル:元秀(ウォンス)
 元秀(ウォンス)は仲間が傷つけられたりなめられたりすると、自分のことを顧ず仕返しに向かう。「北とか総連の連中は俺たちを利用することしか考えてなくて、ちっとも当てにならない」と元秀(ウォンス)。そして言う。「でも俺はこっち側でガンバル。俺はハンパ野郎でなくなるから」と。
 「無茶して死んだりするなよ」と俺。「俺様がそう簡単に死ぬかよ」と元秀(ウォンス)。また「俺はお前の生き方が気にいらねえんだ」と言う。

 7-2 「杉原が『何人』でもいいよ」:桜井
 「在日」などと言うなと僕(杉原)。「俺は俺だ」、「いや俺であることも忘れたい」と僕。
 「昔、バスケの試合で相手の日本人選手から何か言われて、怒った杉原が選手全員&審判をすべて殴り倒した。強い杉原が好きになった。その時、『何人』だか知らなかった。杉原が『何人』でもいいよ」と桜井。
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