宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

カフカ「橋」:自分が橋であることを計算にいれて行動しなければならなかったのに、無謀な行動をとったので、橋(人間)は自滅した(死んだ)!

2020-05-22 09:34:53 | Weblog
※カフカ(1883-1924)「橋」(1916)『カフカ短編集』岩波文庫(池内紀編訳)

(1)
「私は橋だった。」こちらの端につま先、向うの端に両手、山奥の渓谷に架かる橋。「一度かけられたら最後、落下することなしには橋はどこまでも橋でしかない。」
《感想1》私は「橋」だ。すでに「かけられ」、橋となってしまった。「どこまでも橋でしかない」運命だ。橋であることをやめるには「落下」するしかない。
《感想1-2》これを言い換えれば、“私は《人間》だ”ということと変わらない。すでに《生み落とされ》、人間となってしまった。《どこまでも人間でしかない》運命だ。人間であることをやめるには《死亡》するしかない。
(2)
私は旅人が来るのを「待っていた。」「待つ以外に何ができる。」私は「手すりもない橋」だ。そして私は自分に言った。「旅人がたよりなげに渡りだしたら気をつけてやれ。もしつまずいたら間髪入れず、山の神よろしく向う岸まで放ってやれ。」
《感想2》橋(人間)はひたすら「旅人」を待っていた。「待つ以外に何ができる。」そしてもし「旅人」が来たら、「気をつけて」、「山の神」よろしく渓谷の向うまで、「旅人」を渡してやろうと、橋(人間)は思い続けていた。
《感想2-2》「旅人」とは《人間一般》だ。橋(人間)は、人間(他の人間、人間一般)を共感可能で信頼できると信じていた。この橋(人間)はヒューマニティ(人間の共通性)を信じた。
(3)
ある夏の夕方、ついに「旅人」がやって来た。私(橋)を渡り始めた。「杖の先っぽの鉄の尖(トガ)りで私をつつ」き、それから「私のざんばら髪に杖をつきたて」、しばらく止まっていた。「おそらくキョロキョロあたりを見廻していたのだろう。」
《感想3》「旅人」つまり《人間一般》が出現した。この場合、注意しよう。出現したのは《人間一般》だ。どういう種類の人間かわからない。
(4)
すると突然、「ヒョイと両足でからだの真中に跳びのってきた。私(※橋)はおもわず悲鳴をあげた。」
《感想4》ところが「旅人」つまり《人間一般》が私を驚かせる行動をとった。共感可能で信頼できると思ってもっていた《人間一般》の驚くべき行動。突然、ドンと全体重で「両足」をそろえて私の「からだの真中に」、跳び降りたのだ。「私(※橋)はおもわず悲鳴をあげた。」
(5)
橋は考えた。「誰だろう?子供か、幻影(マボロシ)か、追剥ぎか、自殺者か、誘惑者か、破壊者か?」
《感想5》橋(人間)はヒューマニティ(人間の共通性)に疑いを持った。《人間一般》などいないのだ。様々の種類の人間がいるのだ。橋(人間)は様々の種類の人間を思い浮かべた。
《感想5-2》①子供なら無邪気or不完全だからまだ許せる。②幻影なら自分に危害はない。(ただし重量のある幻影とは、不思議だ。)③追剥ぎなら危険だ。(だが追剥は橋から何をとれるのか?命を取られる=壊されるかもしれない。)④自殺者なら、さしあたり自分に影響がない。(しかし可哀想と思う。)⑤誘惑者は警戒せねばならない。(だが橋をどう誘惑するのか?隣に美女の橋を架けるのか?)⑥破壊者なら私(橋)は壊される。(殺される)。
(6)
「私(※橋)は知りたかった。そこでいそいで寝返りを打った――なんと橋が寝返りを打つ!とたんに落下した。」
《感想6》ヒューマニティ(人間の共通性)に疑いを持った橋(人間)は、いかなる種類の人間が出現したのか、どうしても「知りたかった」。
《感想6-2》だから橋(人間)は「寝返りを打った」。だが橋が寝返りを打ってはいけない。橋は落下する。(人間は死亡する。)
(7)
「私は一瞬のうちにバラバラになり、いつも渓流の中からのどかに角を突き出している岩の尖りに刺しつらぬかれた。」
《感想7》あまりに驚愕して橋(人間)は、判断を誤り自滅した。自分が橋であること、つまり橋が寝返りをうてば橋は谷底に落下することを、計算にいれ行動しなければならなかったのに、無謀な行動をとったので、橋(人間)は自滅した(死んだ)。
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