これは別に相反する要素というわけではなくて
演奏家にはどちらも必要なものだけれど、
それぞれのレベルとバランスの問題で
どちらかに傾いて見えることもある。
つまり、達者に弾くけど情感がないとか
上手ではないけど心動かされるとか
極端に言うとそういう類のこと。
昔、ヤマハのグレード試験でも
演奏では技術点と表現点みたいな二つの評価軸があって
小学生とか中学生の頃の私は
どちらかというと技術点の方が高いタイプだった。
いつぞや誰かに書かれてたけど
それこそ”楷書体”的な演奏だったと思う。
ところが最近は逆転傾向にあって、
情緒があるとか、風景が見えるとか言ってもらえることが増えた。
自分で思うに、転換点は学生時代の声楽のレッスンだった。
”歌う”ことの楽しさとかフレーズの意識、
そして、歌はすべての音楽の基礎であることを
先生自身の歌から身体の中に取り込むことが出来たと思う。
ピアノも三味線も、何も考えなくても音が鳴ってしまう楽器だからこそ
自分のなかに歌を持つことがとても大事。
今の自分が持っているものはそのまま伸ばしつつ、
足りてない部分はバランスよく引き上げていこう。
技術だって当たり前に必要なことだからね。